300字小説『夏の終わりに、さようなら』
大好きな人とお祭りに来た。
浴衣を褒めてくれた。
ピアスをプレゼントしてくれた。
かき氷を半分こして食べた。
汗を流しながら、たこ焼きを食べた。
手を繋いで歩いた。
花火を見上げた。
一緒に写真を撮った。
大切な思い出が増えた。
そして。
私たちは手を離す。
「楽しかった」
「うん」
「ありがとう」
「こちらこそ」
「じゃ。またどこかで」
「うん。ばいばい」
笑顔で手を振る。
私たちが恋人同士なのは。
今日で最後。
来年の夏。
あなたの隣りに立つのは誰なんだろう。
帰り道で写真を全部、消去した。
「ごめんね遅くなって。待った?」
「ぜんぜん。浴衣いいね。ピアスも」
「ありがと。ね、かき氷食べたいな」
手を繋ぐ。
新しく隣りに立ってくれる人。
大好きよ。
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