300字小説『青煙』
「多くの人の犠牲の上に成り立つ自由なんて、大した事ないわ」
久しぶりに母が帰って来た。
「偉そうなこと言わないで。遊び歩いてたくせに」
「ふん。だからあんたは子どもなのよ」
正しければ通ると思ってんのね。
そう呟いて、鼻で笑う。
「好き勝手してる人に言われたくない」
「そうね。これからも自由にさせてもらうわ」
煙草を揉み消して、スッと立ち上がる。
「あんたも。早くその足枷を外しなさい。じゃあね」
颯爽と去って行く後ろ姿。
あの人から自分が生まれたなんて。
信じたくない事実だ。
携帯が鳴る。
「どこにいるの」
「ごめん、すぐ行く」
大丈夫。
私にだって、愛してくれる人がいる。
「…あなたみたいには絶対ならない」
いつか捨ててやる。
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