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400字小説『夜空とデート』

深い穴を掘っている。
汗だくになって掘り続ける。
2mくらいの深さになった頃、上から声がした。
「お弁当、買うてきたよ」
見上げると、ずいぶん長い間逢ってない幼馴染みが微笑んでいた。
「食べる?」
「うん。お茶も一緒に投げて」
ビニール袋ごと落としてもらった。
大好きな唐揚げ弁当だ。
最後の食事に相応しい。
「30分経ったら埋めてほしいんやけど」
「分かった。なぁ、また逢える?」
「あんたも穴を掘るようになったらな。それまでは普通に生きぃや」
「そうやな…じゃ、また」
「ばいばい」
土の上に座って、冷たい唐揚げを頬張る。おいしい。
穴の世界にも、唐揚げがあるといいな。
やっとラクになれる。
税金も払わなくていい。
生きるだけでお金がかかるなんて、もう嫌。
弁当をたいらげて、お茶を飲み干す。
夜空を見上げて、ふぅっと息を吐いた。
もうすぐ、あの星たちの仲間になれる。

土が落ちてきた。
幼馴染みが微笑んでいる。
お先に失礼。
また逢おうな。

ばいばい。

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