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500字小説『Calpis soda』

雨が降っている。
外に出る用事もない。
「しかしまぁ暑いな」
最近、気が付くと居る。
「日本人は真面目だ。こんな日でも働くんだからな」
「お前、日本人じゃないのか」
「俺は生まれた時から死神さ」
けけっ。
相変わらず、嫌な笑い方をする。
「喉が渇いた。何か飲ませてくれ」
「偉そうだな。もう少し可愛くお願いしろよ」
冷蔵庫からカルピスと炭酸水を持ってきて、適当にグラスに注いで渡した。
「これは何だ」
「カルピスソーダ」
「初めて飲むぞ」
ごく。ごくごくごく。
「美味い…こんな美味いものがあるのか。まるで神が創ったみたいだ」
「神の存在を認めてるのか」
「当たり前だ。俺だって一応、神の仲間だ」
けけけっ。
「飲んだら帰れよ」
「もう一杯くれ」
「自分でやれ」
窓に打ち付ける雨が激しくなってきた。
「いつ俺を地獄へ連れて行くんだ」
「さぁな。それこそ神のみぞ知るってやつだ」
ごくごく。ぷはぁ。
「ああ、美味い、腹一杯だ」
嬉しそうに笑うのを横目に、ベッドに寝ころんで目を閉じた。
しばらくして、あいつの気配が消えたのが分かった。
起き上がってキッチンへ行くと、グラスが綺麗に洗ってあった。
「氷も入れてやれば良かったか…」

ああ。

一生、独りで居ると決めてたのに。



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