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アンサングシンデレラ!医療現場を裏で支える存在

2020年9月、木曜ドラマ『アンサング・シンデレラ』が放送されていました。石原さとみさんや田中圭さんなど、豪華なキャストが出演していたこともあり、私も毎回楽しみに見ていました。救急外来はコロナ禍で大変な日々が続いていましたが、このドラマが毎週の楽しみでした。

第一話では、心肺停止の患者に対して医師たちが懸命に蘇生を試みます。その緊迫した状況の中、主人公である薬剤師の葵みどり(石原さとみさん)が、患者のポケットからβブロッカーの薬剤を発見します。そして、救命医に「患者さんはβブロッカーを服用している可能性があります」「グルカゴン注射を!」と提案したことにより、患者の心拍が再開しました。

救急外来で、患者さんが普段飲んでいるお薬の確認は、薬剤師の専門知識が最も活かされる場面の一つです。患者さんの持参薬の情報は、医師の診断や治療方針を決定する上で、非常に重要な手がかりとなります。

例えば、アナフィラキシーで搬送された患者さんの場合、救急外来ではまず心電図モニターを装着し、バイタルサインを測定します。その際、心電図に心房細動が確認された場合、レートコントロールのためにβブロッカーを服用している可能性を考慮します。すぐに同乗の家族やお薬手帳から情報を収集し、処置中の医療チームとリアルタイムで共有します。患者がβブロッカーを服用している場合、アドレナリンに加えて、冷蔵庫からグルカゴンを用意して投与を推奨します。

さらに、薬剤師は、薬が体内でどのように作用し、効果がどれくらい持続するかといった「薬理学」や「薬物動態学」に関する深い知識を持っています。たとえ患者がβブロッカーを服用していなくても、アドレナリン筋注の一回では症状が緩和しない場合があります。そのような場合、追加投与が必要となりますが、薬剤師は効果の発現と持続時間を把握しているため、追加投与のタイミングを医師に提案することもしばしばあります。また、薬剤師は最新の医療に関する情報も常に勉強しており、医師と協力して患者さんに最適な治療を提供できるよう努めています。
当時、同僚の救命医が「うちの薬剤師を取材したら、もっと面白い話が出そうだね」と言っていたのを思い出しますが、それは私にとって最高に嬉しい言葉でした。


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