
「救急医療に薬剤師なんて不要」—共通言語の重要性
以前、「緊張と学びの救急外来デビュー」という記事を書きました。
今回も、救急医療に携わりたいと考える薬剤師の参考になればと思い、過去の経験を振り返ります。
救急医療の現場に参加し始めた頃、最初に感じたのは、「薬剤師として貢献したい」という意欲とは裏腹に、具体的に何をすべきかわからなかったことです。救急外来では、医師の指示に従い薬剤を調整する日々が続きました。その中で、医師に情報を提供する機会がありました。
薬剤師:
「腎機能が悪化しているようなので、この抗菌薬は減量した方が良いかもしれません。」
医師:
「この患者さんの状態を考慮してこの投与量にしているから、大丈夫だよ。」
薬剤師:「わかりました…」
薬についてしっかり勉強していたため、自分の提案が受け入れられると思っていましたが、現実は期待と異なりました。このような状況が続き、「救急医療に薬剤師は本当に必要なのか」と思うことが何度もありました。
そんな中、ある搬送患者の初期診療がありました。重症感の少ない患者だったため、救急外来は比較的穏やかな雰囲気でしたが、心電図を見ると医師や看護師が急に慌ただしくなりました。この患者さんは心筋梗塞でしたが、私は何が起こっているのか全く理解できませんでした。
この経験を通じて、私はただ医師の指示に従うだけで、患者の状態を十分に理解していなかったことに気づきました。それ以降、病態生理学、心電図、画像など、他のスタッフが理解している分野を学び始めました。共通の知識、いわば「共通言語」を持つことで、医師や看護師と患者の状態について深く話し合えるようになりました。薬物治療の提案もより具体的になり、医師から受け入れられることが増えました。最初は提案が受け入れられないことに落胆していましたが、今ではチームで共通の目標に向かって協力することの重要性を理解しています。
現在では、患者の状態を正確に理解し、適切な薬物治療を提案できる薬剤師が、救急医療には欠かせない存在だと確信しています。