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昔より少ない?境界性人格障害

30年ほど前は境界性人格障害の患者さんは時々いた。私たち治療者は境界性人格障害の患者さんをボーダーと言って病棟で担当医になったら、「面談してください。不安なんです」と呼び出されたりして、ものすごく忙しく、辛い思いをすることを覚悟していた。

この障害は「今すぐ来てくれなきゃ、死ぬから」と激動の表現とともにどうしても他人を振り回したくなる病気である。芸能人にもそれらしい振る舞いをする人もいて、あの人もかあ、と思った事もある。

見捨てられ不安


境界性パーソナリティ障害の方は一人で上手く過ごす事が出来ない。生きていく為には産まれたての赤ちゃんの様に自分にかかりっきりの他者が必要だ。
特徴的な症状の1つは「見捨てられ不安」と言って、
自分の思い通りにないなら死ぬの脅し、また、その人に捨てられない様に演技的に必死につくす。

現在、この尽くしは、今、推しやホスト狂いにすり替わって存在する。でも相手は一枚上手で、LINEやSNSを使って上手くかわしていく。最終的には女の子の自殺未遂となるケースが多い。
この自殺騒ぎは本当に自殺する気はなく、相手の気持ちを揺らす為にやる。演技的に起こした自殺がうっかり本当の死に繋がってしまう悲しいケースも多い。

振り回す相手は両親である事もある、周囲全てがターゲットにされて疲れ果てた周囲は最後は皆いなくなっていく。最近では家族親族友達が誰もいなくなり、地域のケアマネなどの職員が世話していたりする。この障害をよく知らない人は患者さんを可哀想だな、見捨てられないな、と必死にケアしてやがて疲れ果てていく。

善人かそうでない悪人


もう一つの特徴的思考は自分に常に「寄り添う善人かそうでない悪人」という風にしか人を評価できないことだ。この障害の患者さんには、いわゆるグレーな人間は存在しない

さらに患者さんの中身は悲しいくらい空虚だ。「何でわたしだけ!」と泣き叫ぶ。一人の孤独には耐えられない。善の人に同情され優しくしてもらうと極端に明るくなる。
もし、あなたが何も知らずに受け止めて仕舞えば操作され振り回される地獄が周囲には待っている。一瞬でも背を背ければグレーではなく悪人になる。
例えば大事な出張の最中に何度も何度もかかってくる電話、直ぐに帰って来てと、相手にされなければ本当に窓から飛び降りたり、自分に火をつけたりする。

原因には成育環境に問題があるケースが多い。過剰な親の過干渉かもしくは放置というネグレクトな背景がある。私が担当した患者さんは圧倒的に過干渉が多かった。

今、この病気に遺伝の可能性も見出されつつある。生活上のストレス環境に対して病的反応を生じる遺伝的な傾向が認められる場合があるという。

境界性パーソナリティ障害の主な治療は精神療法と気分安定薬、抗不安薬である。多くの精神的介入が,この障害の患者の自殺行動の低減,抑うつの緩和,および機能の改善に有効になってきている。

現代、人は多くが孤独でネットで繋がった社会にいる。この障害の空虚さはそんな社会のピースにはまってしまったような気がする。

参考:https://www.msdmanuals.com/ja-jp/プロフェッショナル/08-精神障害/パーソナリティ障害/境界性パーソナリティ障害-bpd


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