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買ったばっかりのレビューは信じられる?投稿タイミングが説得力に与える影響(Linda Hagen, Ed O'Brien, 2024)

オンラインレビューは私たちの購買判断に重要な影響を与えます。しかし、「レビューがいつ投稿されたか」によって、その説得力が大きく変わることをご存じでしょうか?
2024年の研究では、「投稿タイミング」がレビューの受け取られ方に与える影響を10の実験を通じて検証しました。本記事では、実験結果とそのマーケティング実務への応用方法を詳しく解説します。


実験内容:時間的指標がレビューの説得力に与える影響

1. 時間的指標とは?

  • 近接レビュー: 購入後すぐに投稿されたレビュー(例: 購入後1日)。

  • 遠距離レビュー: 購入後長期間経って投稿されたレビュー(例: 購入後1年)。

研究では、この「時間的指標」がレビューの信頼性や説得力にどのような影響を与えるかを検証しました。


2. 実験結果のハイライト

実験1: オンラインレビューのデータ分析

  • 方法: Williams-Sonomaのレビュー17万件を分析。

  • 結果: 遠距離レビューの方が「役に立つ」と評価される確率が高かった。

    • 時間的指標は、レビュアーの「経験」に関する消費者の推測に影響を与える。

実験2a・2b: コントロール環境での検証

  • 方法: テレビとジムのレビューを用いて、「購入後1日」「購入後1年」「時間記載なし」の3条件で比較。

  • 結果:

    • 近接レビューは「助言価値」と「レビュアーの経験値」が最も低く評価された(p < 0.001)。

    • 時間記載なしの場合、近接よりは高く、遠距離よりは低い評価を得た。

実験3: ポジティブレビューとネガティブレビュー

  • 方法: iPhoneのレビュー(ポジティブ・ネガティブ)を比較し、投稿タイミングのみを操作。

  • 結果:

    • ポジティブレビューでもネガティブレビューでも、近接レビューの説得力は低下(p < 0.001)。

    • 消費者は近接レビューを「経験不足」と見なし、信頼性を低く評価する傾向が確認された。

実験4a・4b: 購買行動への影響

  • 方法: 車のレビュー(ポジティブ: Chevrolet、ネガティブ: BMW)を提示。

  • 結果:

    • ポジティブレビュー: 近接レビューは「購入意欲」「満足感の期待」を大きく低下させた(p < 0.01)。

    • ネガティブレビュー: 近接レビューでは批判が「早計」と見なされ、ブランドへの否定的影響が緩和された(p < 0.001)。

実験5–7: 条件による効果の違い

  • 専門家レビュー: レビュアーが専門家の場合、近接レビューでも説得力は大きく低下しなかった。

  • 製品タイプ: 実用的な製品(例: パソコン)は遠距離レビューの影響が大きく、感覚的な製品(例: 写真集)では影響が小さい。

  • 状況要因: 「直感的判断」を重視する状況では、近接レビューの影響が緩和された。


マーケティング実務への応用

この研究が示す知見は、企業やマーケティング担当者にとって極めて有用です。以下の方法で実務に活用できます。

1. レビュー収集のタイミング最適化

  • 実用的な製品: 消費者が十分に使用した後(例: 購入後3か月)にレビューを依頼することで、信頼性の高いレビューを獲得できます。

  • 感覚的な製品: 購入直後の感想でも信頼性を損なわないため、早期にレビューを集める施策が有効です。

2. 時間的指標の表示戦略

レビューサイトでは、投稿時期を戦略的に活用することで、レビューの信頼性を操作できます。

  • 信頼性を高めたい場合: 遠距離レビューを強調表示し、「十分に経験を積んだ評価」として目立たせる。

  • 批判を和らげたい場合: 近接レビューを目立たせ、「早計な判断」と解釈されるように誘導する。

3. ネガティブレビューを機会に変える

  • 購入直後にレビューを促すことで、初期不満を吸い上げる仕組みを構築。迅速に対応することで顧客満足度を向上させられます。

  • ネガティブレビューを近接レビューとして提示することで、批判のインパクトを抑え、ブランドの信頼性を守ることが可能です。

4. 製品タイプ別レビュー戦略

  • 長期的評価が重要な製品: 家電や車などでは、長期間使用したレビューを優先的に表示する。

  • 感覚的な満足度が重要な製品: ファッションやアート商品では、購入直後のポジティブな感想を強調。

5. 消費者教育とレビュー精度向上

  • レビュー投稿時に「どのくらいの期間使用したか」を入力させるガイドラインを設ける。

  • 消費者に「投稿タイミングがレビューの信頼性に影響する」ことを周知し、より良いレビュー文化を構築する。


まとめ

この研究は、オンラインレビューが「内容」だけでなく、「投稿タイミング」によってもその効果が大きく変わることを示しました。レビューの収集や表示方法を工夫することで、ブランドイメージを向上させ、消費者の購買行動をコントロールすることが可能のようです!マーケティング担当者の皆さんは、この「時間的指標」を意識したレビュー戦略をぜひ検討してみてください!

今回紹介した論文

Hagen, L., & O'Brien, E. (2024). When did they post it? How temporal markers influence the persuasiveness of online reviews. Psychology & Marketing. https://doi.org/10.1002/mar.22163

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