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泣けない場所
わが家の娘たちは幼少期、ご多分に漏れずよく風邪を貰ってきました
特に次女は「咳風邪」を発症して、喘息にはなりませんでしたが
苦しい思いを幾度もしていました
そんな折、小児科の先生に「スイミング」を勧められ
姉妹揃って、スイミングスクールへ通う事になりました
その時、長女は6歳、次女は3歳
性格の違う2人は、同じスクールでの反応も、面白いほどに真逆でした
長女は泳ぐ事自体を、初日から楽しんでいるように見えました
見学をしていると、息継ぎの度に確かに笑っていました・・・笑
次女は、初日からギャン泣きで、先生に抱っこされていました
多分、水も怖い、先生も嫌い、初めての環境も馴染めない・・・
悲しみオールスターだったのかも知れません
それでもいつか慣れてくれる事を期待しながら、スクールに通いました
子供たちをスクールに送り届けて、レッスンが終了する迄の間
同じスクールで待っていたのですが、ふと目に入ったポスターがありました
「ジュニアスイミング・インストラクター募集」です
それまで私の泳力は、学校の授業で25メートル泳ぐ位で
どちらかといえば、苦手意識さえも持っていました
実は子供を授かった時から
7年は子供たちのそばに居ようと決めていました
どんなに経済的に苦しくても、その時間は自分にとって
「きっと、かけがえのない時間になるだろう」と思ったからです
ただこれは、あくまで自分の為で
私を産んだ母が、その時の事情で私を家に置いて
働きに出なければならない・・・そんな子供としての思い出があり
いつも母が出勤する時に、何度も振り返り
見送る私に手を降っていた姿が、私の何処かに残っていました
そしてそんな子育てに専念できた時期に、終わりを告げて
いよいよ働きに出るタイミングに、偶然そのポスターと遭遇しました
「新しい世界」に飛び込むには、いつも出来る限りの下調べをして
失敗しないよう考える、小心者なのですが
何故かその時は、得意でもないスイミングに惹かれたのを覚えています
インストラクターの研修は、とても有意義で楽しいものでした
7年ぶりの「家の外にいる気持ち」は
個人の名前で呼ばれる新鮮さ、自分の役割を務めて報酬を貰う潔さ
大人から「私の考え」を聞かれることの嬉しさ・・・など
それらは想像以上の、手応えを私に与えてくれました
研修を終えて、いよいよテストを受けて、実習も終了し
初めて受け持ったのは、3歳児のコースと、マタニティのコースでした
まるで次女のように、怖くて泣き続ける子らを、抱っこしながら
初めての授業が終わりました
大げさに言うなら「初めての事に向かって行く不安」だけは
必要以上に持ち合わせている大人なので
子供たちに、少しだけ寄り添えた気がします
実習や、授業を続けて行くうちに
どんどん水に対する親近感が増し
いつの間にか長女と同じように、泳ぐことが楽しく感じられて来ました
その時の日記に
「水の中では泣けない。不思議と泣く事は出来ない。だから笑うしかない」と、書いたのを記憶しています
自分で選んだ道とは言え
やはりそれまでの子育ても、楽しいばかりではなく
沢山の不安や、葛藤がありました
母親も、子供と一緒に成長しますから、私はいつも新米母でした
でも私の母が逃げなかったように
落ち度の多い新米母ですが、現実から逃げる事はしなかったと思います
やがて水に浮かんでいると、不思議な気持ちが芽生えて来ました
いくらでも泳げて、いくらでも浮かんでいられるような
感じた事のないポジティブな感覚です
速く泳ぐ能力は持っていませんが、水と仲良くなれたら
「楽に楽しく泳ぐ事」は、出来てきたのでした
たぶん今の私に、最も必要なのも、こんな感覚なのでは・・・
と思い出したのです
速く強く正しく生きることよりも
力まずに、楽しく生きること
生きる為には仕事もして、成すべきこともするけれど
根本は「しなやかに生きること」
最初の一歩に戻って「今、生きていることを実感すること」
どんどんシンプルになって行くと
ふわふわ、ゆらゆら、水に浮いている感覚と似ています
何処にも力は、入っていないようで
体も心もバランスが取れている
水中で、感覚が澄み切っている様な感じです
思えば、長い年月が経っていますが
あの頃の不思議な感覚が「今」に絡んで思い出せたこと
とても嬉しい「ゆらぎ」でした
ギャラリーからお借りしたのは
素敵な「hoho」さんの作品でした🍎ありがとうございました