中学生のときに出会った本|たからもの1
学校の図書室でのできごとだった
中学校に入学したてのとき、図書室の利用について案内を受け
なにか1冊借りなければならなかった
ぎゅっと詰まった本棚から背表紙の頭に指をひっかけ
表紙の絵を見て、気に入らなくて戻す。
ずらりと並ぶ題名を流すように読み、引き抜いては戻すをくり返していて
たった1冊をなかなか決められなかった
その時、ひっかけた指が止まったのがこの本だった
『天使のみつけかた』
著者:おーなり由子
表紙の絵のやさしい色づかいに
硬くなっていたわたしの表情が
ふわっと
ゆるんだのを覚えている
小学生の頃に読んでいた本は
親からのおすすめや物語のシリーズだったから
「作者」について考えたことがなかった
しかし、この本に出会ってからは
「作者」が本を選ぶときの基準に加わった
「おーなり由子さんの書いた作品だから読んでみよう」と
学校の図書館で見つけたこの1冊から
私は書店で「おーなり由子」の名前を見つけては
買って読んでいた
絵の感じが好きだった
やさしい色づかいでほっとさせてくれた
見たり聞いたり感じたときの表現の仕方、独特で可愛かった
泣いたときにやさしく背中を撫でてくれたり
「大丈夫」と勇気を込めて背中を押してもらったり
淡い恋の終わり方を教えてもらったり
周りと自分を比べて落ち込んだり
なんとか平均値にいようと必死になってたり
親に反抗的な態度をとって
心がチクチクしていた10代の頃のわたし
そんな時期に、おーなり由子さんの描く作品は
わたしの心をやさしくしてくれた
そして再会
それから時がずいぶんと経ち、私は母親になった
自分にかまうよりも子どもを最優先する日々
母親であることにいっしょうけんめいだった
そんなある日、子ども向け番組をつけていたら
うたのおねえさんとおにいさんがかわいらしい歌を歌い始めた
『りんごんとうのうた』
作詞:おーなり由子 作曲:栗原正巳
イラストアニメーションを観た瞬間
「これは、まさか!?」ドキドキッっとした
そして、歌詞を聴いて確信した
子どもをひざに乗せて真剣に観た
やさしい気持ち、ちょっとワクワクする気持ちにさせてくれる
おーなり由子さんの作品でまちがいなかった
10代の頃のことなんて思い出すこともなくなっていた
私への再会サプライズに思えた
はじめてのことだらけの育児を楽しいと感じつつも
これでいいのかと迷ったり戸惑ったり、落ち込んで一人泣いたり
良い母親でいなくてはといっしょうけんめいで疲れていた私に
天使のみつけかたを思い出させてくれた