LAST WEEK REMIND~ヨーク軍曹x異人たち 新たなるゴッドランド~
LAST WEEK REMIND
~ヨーク軍曹x異人たち 新たなるゴッドランド~
4/21-27の振り返り
☆は4点満点
【映画】
・ヨーク軍曹(1941)
☆☆:敬虔なクリスチャンが出兵する。今作は第一次世界大戦時、いくつもの勲章を与えられたアルヴィン・ヨーク軍曹の伝記映画だ。だが公開時、アメリカが第二次世界大戦の門を目の前にしていただけに、プロバガンダの色が濃い作品となっている。本作の一番の肝は戦争と信仰の間で揺れるヨークの歩んだ道であることは間違いない。南部の田舎町の荒くれ者だったヨークは信心に目ざめる。また婚約した娘とは幸せな将来を夢みている中で、ヨークは徴兵され、苦悩する。敬虔なクリスチャンだが人を殺さなくてはならないという矛盾だ。長く長く思い悩んだ末にヨークは答えを出す(劇中でもその苦悩に長い時間を割いている)。自由の為に戦うと。ヨークは幼少から培った銃の腕前で功績をあげて、英雄として国に帰る。でもヨークは英雄としての扱いや、その先にある成功と富を却下し、婚約者が待つ田舎町へと帰る。ヨークが真面目な人間なのは分かるが、品行方正過ぎて表面的にしか伝わらないのが残念だ。何とも次のヨークになるのは君だ、と言わんばかりの作品。どこまでも真摯なゲイリー・クーパーと、印象的な眼差しで息子ヨークを見守るマーガレット・ワイチャーリイの演技だけが見どころ。
・断崖(1941)
☆☆☆:もし結婚した相手の異なる側面を目の当たりにしたとき、すべての行動に思惑が潜んでいるのではと勘ぐってしまう。ヒッチコックはお金持ちの娘リナとハンサムなプレイボーイのジョニーの結婚生活を緊張感いっぱいに演出する。ジョニーのいい加減な性格と積み重なる嘘、借金。しばらくするとリナが大事にしていた椅子が消え、怪しい土地開発計画への投資の話が持ち上がり、ジョニーの友人が死に、生命保険がかけられる…。どんどんと疑心に追い詰められて、リナは点と点を勝手につなげ、ジョニーの持ってくる牛乳は薄気味悪く光り輝き始める。結婚における相手への信頼の揺らぎがサスペンスに直結する様が見事だ。ジョーン・フォンテインは観ているこちらにも不安を伝染させる。ケーリー・グラントは持ち前の優雅さが胡散臭さを増幅させる。リナとジョニーの関係はわずかに断崖を飛び出しているが、まあリナが良いなら口出しできません。
・異人たち(2023)
☆☆☆☆:主人公のアダムは顔を両手で覆い涙を流す。そういえばスクリーンでこんな泣き方を見るのは初めてかもしれない。映画は普通、涙が流れる顔を映したいからだ。脚本家のアダムは孤独だ。彼以外の誰も住んでる気配のない高層マンションに住み、ボーっと朝日が昇る街を眺めている。そこでハリーなる謎めいた隣人と出会い、それがきっかけで止まっていたアダムの時間が動き出す。彼は子供の頃に住んでいた郊外の家に出かける。そこで両親と再会するのだが、ちょっと様子がおかしい。アダムの両親は彼が子供の頃に亡くなっているからだ。それでもアダムは両親とのぽっかりと空いた時間と距離を埋めていく。現実を超越した親子の交流から滲むのは後悔や不安、理解の不一致だ。会えなかった時間が長いだけに想いは募る。けれどまた出会えた喜びや安心感がそれを上回るほどに心を満たしていく。けれどこの交流は幻想であり、過去だ。そこでアダムはハリーとの進行形の愛を振り返る。それはとても寂しく孤独な愛だ。でももうアダムは大丈夫だ。青みがかった孤独の寂しさはいつしか優しい琥珀色に包まれる。
・ゴッドランド/GODLAND(2022)
☆☆☆☆:デンマークの若き神父が荒涼とした自然が広がるアイスランドへ派遣される。彼は大きなキャメラを抱えて道中の滝や草原、雪原、火山、氷山、そこで生きるアイスランドの人々の厳しい表情を撮影する。神父はありのままというよりも、秩序を求めているのは撮影する写真を見ると分かってくる。身長順に並べられた島の人々、馬に乗った少女、荒波を背景にした旅先案内人…。見た目は美しい神父のイメージに沿った写真がデンマークとアイスランドの、神父とアイスランドの人たちの「自然」とは相反する居心地の悪さを浮上させる。やがて神父は写真の範疇を超えて、彼のイメージを求めていく。そしてバランスはあっという間に崩壊する。絶対に勝ちようのない大自然の前で神父は崩れ去り、そして朽ち果て、自然に還る。
・ゴジラxコング 新たなる帝国(2024)
☆☆☆:近づけるのは禁物なゴジラとキングコングがまたしてもマッチアップする。ゴジラとコングとその他モンスターたちが暴れまわり、ストーリーはボロボロに踏み潰されて、人間たちはただ逃げ惑うか、状況説明に追われる。これこそがシネマだ、と言わんばかりの高圧力な世界観だ。喧嘩するほど仲がいいを地で行くゴジラとコング。エジプトから北極(南極?)、イタリア等、モンスターたちのスケールに見合った場所を怪獣たちは次々に破壊していく。拡張すればするほど興味がなくなってくる地中世界だけは、やっぱりいただけないものの、始まったら止めることの出来ない怒涛のアクションに身をゆだねるしかない。最後に一言。リオデジャネイロよ、安らかに眠れ。
【再鑑賞】
・オッペンハイマー(2023)
☆☆☆☆:【融合】オッペンハイマーの頭の中に潜り込みながら、彼に関する神話のようなイメージを一つずつ破壊、解体していき、人類に多大な影響を及ぼした一人の生身の人間像を構築する。彼の創り出した波紋から彼自身も逃げることは出来ない。ノーランはダイジェストのような目まぐるしいスピードではあるが、1シーン1シーンを見逃せない重みを込めて作品を組み立てていく。作中ではオッペンハイマーと対の存在にある原子力委員会の長ルイス・ストローズに対して、名もなき上院補佐官が放つセリフが痛烈だ。
【TV】
・吸血キラー/聖少女バフィー 第1シーズン第7話
・不適切にもほどがある! 第4話
・となりのサインフェルド 第5シーズン第4話
【おまけ】
・この週のベスト・ラヴィット!
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