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『モノ・マガジン』でピアニスト大和田千弘と対談(プログレッシヴ・エッセイ 第28回)

さる2024年8月3日、私の主宰するプログレバンド金属恵比須がライヴを催した。キーボーディスト不在のため、ゲストをお呼びした。
アヴァン・プログレッシヴ・ロック・バンド「烏頭」のピアニスト、大和田千弘である。

烏頭と金属恵比須はテレビで共演したことがある。俳優・髙嶋政宏氏が好きな音楽を語るコーナーで一緒に紹介されたのだ。
そんな縁もありながら、舞台上で共演したのは今回が初。

私が連載している雑誌の企画で、ライヴ直後に対談を行なった。

『モノ・マガジン No.945』(2024年9月13日発売)
「狂気の楽器塾」
“第71回 プログレ氷河期世代の共闘!
体をいたわらないピアノの極意!“

として収録されているが、ここでは惜しくも漏れてしまった会話を記録していきたい。(『モノ・マガジン』編集部より許可)

映像音楽について語り合う

高木 ピアノの魅力ってなんですか?

大和田 触ればすぐ音になり、強弱もつくし、メロディにできたり、ハーモニーをつけられたりするのがピアノの魅力ですね。もっとも、ピアノに限定するというよりは子供の頃から音楽が好きでした。古いモノクロ映画が好きでそれを耳コピして弾いていました(註・映画タイトルは『モノ・マガジン』に収録)。


2024年8月3日 金属恵比須ライヴ


高木
 渋い! 私も親にモノクロを見せられましたが、内容以前に白黒に拒否感が(笑)。逆に私はカラーの昔の映画を見まくりましたね。主に1960年代のアメリカの戦争映画。テレビ東京の「木曜洋画劇場」がとかくにマニアックな映画ばかり放映されていました。それをビデオに撮って何度も見ていましたね。特によく見たのがオープニング曲が流れるところ。

(バルジ大作戦、1965、音楽:ベンジャミン・フランケル)

(大脱走、1963、音楽:エルマー・バーンスタイン)

(オフサイド7、1979、音楽:ラロ・シフリン)
※この映像がまさに小学校の時に見た「木曜洋画劇場」

(荒鷲の要塞、1968、音楽:ロン・グッドウィン)

私も映画音楽、映像音楽が音楽の入口で、「虚無回廊オープニングテーマ」は、ディズニー映画「ブラックホール」のオープニングを意識したんです。これも「木曜洋画劇場」(笑)。

大和田 凄い!「ブラックホール」見たことないですが、この音楽は壮大ですね! 音も同じところをぐるぐる回ってブラックホールを予感させて怖いです(笑)。

高木 宇宙を感じさせますよね! でも私が実際に作った曲を家族やメンバーに聞かせたら、「ディズニーより『ドラマ横溝正史シリーズ』ですよね」と。日本人の血は争えない(笑)。
大和田 「横溝正史シリーズ」は一度はみんな見たことがあるはず、というほど有名ですし必ず通るイメージですね。金田一耕助シリーズは熱いです。

2024年8月3日 金属恵比須ライヴ

高木 「ブラックホール」の音楽担当はジョン・バリー。あの有名な「007」のテーマの作曲家。最初にハマった音楽が「007」でした。

でも映画ではなく、それを使用した「アメリカ横断ウルトラクイズ」(笑)。

大和田 ディズニーやハリウッド映画もテレビやビデオでよく見ていました。懐かしい。昔から好きな映画は、脚本も監督もやっていました。また、何度もコンビを組む音楽家と作品が多い気がします。チャップリン、ジャック・ドゥミ、黒澤明、伊丹十三、市川崑……。音楽もクラシック作曲家やジャズ・ミュージシャン……。その他、沢山の才能が集まり、みんなで作っていく。映画、舞台は本当に凄い世界ですよね。

高木 昔の映像世界、本当に憧れます。

2024年8月3日 金属恵比須ライヴ

大和田 NHK教育の「みんなのうた」とか、こども番組も生演奏などで結構サウンドが豪華だった印象です。

高木 もしかしたら私たちの世代は豪華な映像音楽で育った最後の世代なのかもしれませんね。好きな音楽を学びに愛知芸術大学作曲科に入学され、首席で卒業されます。どのような勉強を?

大和田 楽器演奏、ソルフェージュ、音楽理論、和声、対位法、管弦楽法、指揮法、楽式論、楽曲分析など、学びました。

2024年8月3日 金属恵比須ライヴ

高木 影響を受けた音楽家についてどう思いますか?(アーティスト名は『モノ・マガジン』に収録)

大和田 凄さ、美しさ、ユニークさなども勿論ですが、彼らの音楽に触れると私にとっては特別に「音楽をやりたい」と感じます。また「あなたの思うようにやっていいんだ」と言われているような感覚にもなります。

高木 というと?

大和田 自分の性質を解放する、集中する状態というのは、人によって異なります。例えば、「リズムにのって」と言われて、首だけを振ることでリズムを取るのが自然な人もいるし、お腹で感じる人、全身で動く人、ジャンプするのが自然な人もいる。

高木 人によって違いますね。

2024年8月3日 金属恵比須ライヴ

大和田 「○○をするには、このやり方、この動き、これ以外は違う、いけない」というような型にはめて表現することが、私にとっては時に不自然なことだったり、自分の言葉で話せていないような感覚になります。私の自然な状態は、人にとっては自然ではないこともあります。

高木 あの威圧感のある音色と動きを体感することでその言葉に重みを感じます。共演、ありがとうございました。

大和田 大変楽しいステージでしたね! 金属恵比須の曲はすべて色合いがあって楽しかったです!

写真:木村篤志


     ※


大和田千弘の幼少期から現在までの音楽変遷を収録した対談は、『モノ・マガジン No.945 10/2号』で読めます。
2024年9月13日発売。



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