お魚くわえたドラ猫を見たのは私だけ
その空間に違和感を感じたのは、たぶん私だけだろう。
ある日、電車に乗ったら、そこには何とも言えない不思議な雰囲気が漂っていた。
車内は異様なほどの静けさで、電車のアナウンスだけが響き渡る。
車両の端から端まで見渡すと、すべての人がうつむき加減で自分のスマホ画面を見つめていた。
面白い動画でも見ているのだろう。
私の向かい側に座っている若い女の子が、声を出さずにクスクスどころか思いっきり笑っている。
この日のデートの為に、とびっきりオシャレをして来たと思われる女の子がいた。
隣はきっと彼氏さんだろう。
しかし彼氏さんはゲームに夢中だ。
彼女はなんだかちょっぴりつまらなそう。
体でリズムをとりながら音楽を聴いている人。
画面をものすごいスピードでスクロールしながら、ネットショッピングをしている人。
LINEで会話をしている人。
誰もが自分のスマホの画面に夢中だった。
きっと誰ひとりとして、同じタイミングで同じ画面を見ている人はいないだろう。
公共交通機関という電車の中、そこにはそれぞれの時間がありそれぞれの空間があった。
話声が全く聞こえてこないこの静けさはなんだろう。
きっとこれが今の時代の、日本という国の当たり前の風景なのかも知れない。
その時、お婆さんの携帯電話がものすごい音量で鳴った。
音を止めようにもどうしたら良いのやら、慌てふためくお婆さん。
車内に昔ながらの着メロが響きわたったのだった。
サザエさんが55周年記念だそうだ。
まさに昭和の時代を代表するお茶の間のアニメ、サザエさん。
子供の頃はよく見たのだけれど、最近は見ることがない。
今はどんな話なのだろう。
買い物をしようと街まで出かけ、スマホを忘れて愉快なサザエさんだろうか?
今や時代が変わりそれぞれが、それぞれのスマホで自分の好きな物を好きな時間に好きな場所で見る時代。
日曜の6時半に家族そろってお茶の間でテレビを見るなんてことは、なくなっているのかも知れない。
それにしても永遠に歳を取らない陽気なサザエさんは羨ましい。
サザエさんに美容法を教えてもらいたいものだ。
電車の中で周りを見渡しながら、ボ~ッともの思いにふけっていた私。
ふとその時、お魚くわえたドラ猫が電車の中を駆け抜けて行ったような、そんな気がしたのだった。
お茶にしましょう
スマホ見ながら
自分の好きなnoteを好きなだけ読んで
猫さんクッキー食べて
ルルルルルル〜♪ 今日もいい天気〜♪♪