あなたは幸せだったよね
ちょうど5年前の5月に虹の橋を渡った猫さん16歳6ヶ月。
今でも私はあなたのことを忘れない。
初めて我が家に子猫がやってきた時、私はその子猫に誓った。
あなたが息を引き取るその時まで、私は一生あなたの面倒を見るよと。
そしてその子猫をミューと名付けた。
何も変わらない1日が始まり、何も変わらない1日が終わる。
それを猫は幸せという。
猫の1日は人間の約4日分。
楽しい時も寂しい時も人間の4倍のスピードで過ぎ去って行く。
ある日の朝、ミューが突然歩けなくなった。
すぐさま動物病院へ連れて行き、半日にわたる検査と治療。
その時間のなんて長かったことか。
先生からは心臓に問題があり、もう歩けないだろうと。
その言葉の意味するのは、もう長くはないということだったのだろう。
これ以上の治療はしないで、私は家で静かに看取りたいと先生に伝え一緒に帰って来たあの日を、今でも私は忘れない。
大好きないつもの場所で、いつもの匂いの、いつものお布団の上が一番。
もう嫌なこと、怖いこと、痛いことはしないよ。
昔、一人泣いていた私にそっと寄り添い、どうしたの?と側にずっといてくれたミュー。
今度は私がずっと側にいてあげるから。
その夜、冷たくなって動かなくなった手足をマッサージしていたら、私の手をキュッと握り返してくれたあの瞬間を、今でも私は忘れない。
老猫が穏やかに眠る姿を見つめ、お腹が上下する呼吸を感じ確かに生きているのを感じていた。
ゴロゴロゴロゴロこんな苦しい時にも、猫はゴロゴロするのだろうか?
あとどれくらいの時間一緒にいられるのか、わからなかったけれど、時間は4倍のスピードで過ぎ去って行くことだけは確かな事実だった。
飼い主のペットへの愛情の形はそれぞれ。
最先端の医療を望み、手術や輸血、点滴、高価な薬を飲ませ、できる限りのことをやってあげたいというのも愛情だと思う。
1ヶ月の治療費が10万以上かかるという知り合いも何人かいる。
今やペット保険は当たり前なのかも知れない。
でも1番の治療は、飼い主さんの愛情だと思う。
元気にな~れ、元気にな~れ、私の気のパワーと毎日のマッサージ。
動物にもツボがあるという。
やがてヨタヨタながらも歩けるようになったミュー。
そして静かに流れる老猫との穏やかな時間が約2年間続いたのだった。
それでもやがてご飯が食べられなくなり、体重は半分に減り寝たきりの状態となっていく。
全身の力がぬけダラリとしたその感触に、いよいよその時が来たのだと感じた。
この時、動物病院で栄養補給の点滴という選択もあるのだろう。
でも私はミューが今一番居心地のいい場所で、最後の穏やかな時間を一緒に過ごすことを願っていた。
生きる力だけで頑張って生きているその姿に声をかける。
わかっている。もう頑張らなくてもいいよ。
早朝、私は枕元にいるミューの微かに鳴く声で目が覚めた。
それは「今までありがとう、さようなら」の声だったと思う。
やがて尻尾の毛が逆立ち大きくなり、徐々に落ち着いたあの時の光景を今でも私は忘れることができない。
私が最後を認めたくなかったからかも知れないが、いつが最後だったのかわからないくらい、それは穏やかだった。
そっと涙目を閉じると、そこは森のような今まで見たことのない光輝いた緑色の世界が広がっていた。
きっとミューはそこへ行ったのだと、私は確信し安心したあの時の不思議な光景はいったいなんだったのだろう?
あの時の緑色を今でも私は忘れない。
あなたは私に人生の生き方を教えてくれたね。
そんなことは気にしない気にしない、もっとのんびりしたらと。
そして気高い最後のあり方を教えてくれたね。
あなたとの約束を私はちゃんと守れたよ。
最後のその時まで一緒だったよ。
長くて短かった私達の時間。
あなたは幸せだったよね。
お茶にしましょう
虹の橋を渡って行った愛するペットちゃん達を思いながら
静かなお茶の時間
今日のおやつはペットちゃん達へ
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