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「自然の恵みに感謝できる場所で生きていきたい」
10月期生として島体験に参画した元吉紗海さん(21)。彼女は何を思い3か月間過ごしてきたのか、その内容を綴っていきます。
同じ海を目指して
私がこの島に来た理由は私の名前がきっかけでもありました。
私の名前である「紗海」は、サモア語で「海」という意味で、JICAで働いていた両親がつけてくれた大好きな名前です。
そこでnoteで知った「海士町」という存在。名前に海が入っている町にシンパシーを感じました。そこで直感的に10月に来島を決めました。
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留学も経験していて、海外旅行が好きだから、行動力は持ち合わせていると自負していた私。離島とはいえ、日本での3か月の島留学はヘッチャラだと思いました(笑)
実際、島での3か月の生活は充実していて、とても自分に合ったものでした。
人を保つ恵である「農業」を経験するために
私は空き家×農業プロジェクト(以下農プロ)として活動しています。
海外に行くたびに日本食を食べたくなって、日本を恋しく思っていました。日本食の伝統を守り続けたいし、日本のことをもっと知りたい、伝えていきたいという思いが強くなりました。
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私には、自然の中で暖炉のある木造の家に住むという夢があって、そこはもう動物と自然とが共存してる場所。そこで私は自給自足している。そんな未来。
そこでは畑もしたい!みかんもレモンも育てたい!今後のためにも、人を保つ恵である「農業」を自分で経験してみたくて、農プロとしての活動を決めました。
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求めている人がいるからこそ
私が農プロに入ってやりがいを感じたことは、私たちが育てた野菜を求めている人がいることです。私が島体験に応募した時は、農プロは野菜を卸す場所がない、消費者がいない、ということが課題でした。
10月の活動は、雑草抜きが主な仕事で市場に貢献できているか不安でした。しかし、11月には苦労のかいあって、にんじんもピーマンもすくすく育ち、大量に収穫することができました。そしてその野菜たちを求めてくれている場所がたくさんあって。
JA、給食、常識、色々なところで農プロが生産者となる野菜が売られているのを見ると喜ばしい気持ちになります。
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私たちが活動できているのは、島の方々が畑を貸してくださっているおかげです。改めて、島の人にたくさん助けられているなと感じました。
戻ることのない日々
これから就職して普通に働くことが日常になって、ふと思い出すのは海士町の日常の一部であった、畑に向かっていた足取り。
あぜ道を走る軽トラ。
自転車を漕いでいく畑への道。
田園風景に映える牛。
ほうれん草の芽吹き。
この日々を忘れ去ることができない、全てが幸せな景色でした。
そんな日常を一コマに私は思いを馳せるでしょう。
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この島で心から楽しんでいる自分がいた
家族に頼っていた私が、この島に来てからは自分の生活を全うできるようになりました。
マレーシアに留学していた時は、家族が恋しくなって十分に満足できる気持ちの余裕がありませんでした。
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しかし、この海士町では場に満たされることができて、家族を含め、人にとらわれることなく自由に暮らすことができました。この生活を心から楽しんでる自分がいて、気づいたらこの暮らしにハマっていました。
海士の風景を纏う
私はこの3か月の島体験を、「纏う」(まとう)という言葉でまとめたいと思います。
海士の風景を纏ったまま本土に帰りたい。
自然、人の温かみ、暮らし方、景色、日常、経験、全てを受け入れて包み込める自分でいたいし、ここで起こっていたすべてを忘れたくない。
この3か月は、その纏いを構築するための一部に過ぎない。
全部全部、私の一部に。
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来年からは海外からも日本からも来客の多いホテルで、地元である九州地域の魅力を最大限に伝えるために働きたいと思っています。
常に私は自然の恵みに感謝できる場所で生きていたい。
そう感じました。
さみへ
さみのような人にはもう一生出会えないだろうと思う、そのくらい私の中でさみが唯一無二の存在であって憧れです。さみがいれば私は何にだってなれそうなくらい、さみの紡ぐ言葉に何度も救われ、心を打たれた2か月間。幸せだったなあ。言葉を紡いで伝えることが得意なあなたはこれから先も、言葉で人を救うのだと思います。これからも言葉に頼って生きていこう。伝えたい人に伝えたいことを丁寧に、素直に、なるべくそのまま、伝えたいと思った時に。
言葉にしなきゃ伝わらない、そんな時代に生まれた私たちだから。
心から、出会ってくれてありがとう。
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この2か月は幻ではなく、紛れもなく存在していて、あまりにもかけがえのない日々だった。海士で出会えて、仲良くなれて、大好きになれた人たち。
「人は出会うべき人には必ず逢える。一瞬遅からず一瞬早からず。」
(森信三)
偶然なんかじゃなく、出会うべくして出会ったんだね。2か月間の全てが、私の宝物。
(令和6年度10月期島体験生:市川和世)