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これって『異世界文献』か?「外国への帰化と日本国籍」|蓮舫氏国籍報道の前提を覆す文献が出てきた
「国立国会図書館デジタルコレクション」で興味深い書籍を見つけました。
「蓮舫氏の国籍騒動」を経た今日(こんにち)の視点から眺めてみると、まるで「『異なる世界線』から迷い込んできた書籍なのではあるまいか?」 と錯覚してしまいそうな内容でした。
『最新国籍・帰化の実務相談』
法務省民事局第五課国籍実務研究会 編『最新国籍・帰化の実務相談』,日本加除出版,1981.3. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/11994800 (参照 2024-12-10)
もちろん異世界文献なわけがない(笑) わずか40年前そこそこの書籍。
それも、法務省民事局の国籍実務の研究会によって編纂されたものです。
(これが「異世界文献」でないなら)蓮舫氏の国籍問題をでっちあげて「問題化」するために、とんでもない形で行政が曲げられた、ということになるのではないでしょうか?
外国への帰化と日本国籍
本書8章見てみましょう。
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(赤線や赤枠はいずれも当方で追記したものです)これまで当方が書いてきた「日台複数籍」の問題に直結する、「問 72」と「問 73」を引用して読み進め、考察してみたいと思います。
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・日本国籍の得喪に関わるという重大な結果をもたらす話だというのに、「国籍法上『外国』の概念は必ずしも明確ではない」のだそうです。
これって、とんでもない話だな・・と思うところですが、それでこの後に、「立法趣旨」、「『外国』の概念」について解説してあるわけですね。
ここで少し脱線しますが、国籍喪失条項に関する「立法趣旨」だとして説明されている
自己の志望により外国国籍を取得した場合の反射的効果としての国籍離脱の自由を実現しようとした
という部分、当方は少々複雑な思いです。以前の記事中で、
>旧国籍法の「国籍喪失規定」は、「国籍離脱を認めない」という原則を回避し、日系移民の外国への帰化手続きを可能にするための方便。
と書いていました。これって、オリジナリティ溢れる画期的な解釈なんじゃないか?と内心自負していたのです(笑)
ところが、この文献の記述も同じ趣旨ですね。
(「国籍離脱を認めない」時代にあって)「反射的効果」としての「国籍離脱の自由を実現しようと・・」
ということと、私の書いた
「方便」として「外国への帰化手続きを可能にする」
というのは、まあ同じことですね。
「方便」という言い方はいかにも素人っぽい。「直接の効果」ならぬ「反射的効果」、なるほどカッコいいので今後はこっちの表現を使わせてもらいます。
本題に戻ります。読み進めて、国籍法上の「外国」の定義説明を確認してみましょう。
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『外国』というためには、まず国際法上の国家の要件をすべて満たしている国家であることが前提条件。
そのうえで日本との関係において「実務上は」「国家が政策上承認していない国家を『外国』とみなして取り扱うこと」を「否定する立場を取っている。」
未承認国家の発行する帰化証等では当該官憲が発行したものであるかどうか確認する方法すらなく、外国の国籍を取得したことを認定できない不都合がある。
国籍喪失事務を取り扱う国家機関が未承認国の帰化証明書あるいは国籍証明書を正式な公文書として認めることは、国家を承認したのと同じ結果になる。
「外国」とは日本と承認関係にある国際法上の国家であるということが必要であるという結果になる。
いわゆる分断国家への帰化については日本が「正統政府として承認している政府」により帰化が許可されたものでなければならず、未承認政府による帰化の許可は、権限のない機関の処分であって、かかる場合は日本国籍を喪失しないことは「当然」。
・・だそうです。
日本と承認関係のない国に帰化した者の日本国籍
より具体的になってきます。
![](https://assets.st-note.com/img/1733832321-jUQm7CeAFXrJN2wM513vfYko.png?width=1200)
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国籍法第八条(当時:現在は第十一条に条文移動)の外国籍志望取得によって国籍を喪失する規定で言うところの「外国」は日本が承認している国家を指すので、たとえ承認関係のない国に帰化したとしても、日本がその国を承認していない段階では、日本国籍を喪失することにならない。
未承認国家を「外国」の扱いに含ませてもよいではないか?という学説もあるけれども、そうしなければならないというものではない。
実務でどう扱っているか?(どう扱っていると説明していたか?)というと・・・
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日本が国家意思として、ある国を国家承認するという意思を有していない時点でその国家を国内法上の「外国」として扱うことは相当ではない。
未承認国の証明書で外国の国籍の取得を認定することができない。
※したがってある未承認国の国籍を志望取得しても、日本にとっては何ら関知しない事項であり、日本の国籍法上「外国」の国籍を取得したこととして扱うことができない。日本国籍は喪失したものと扱われない。
・・だそうです。
蓮舫氏国籍問題の再検証を!
過去、当事者・関係者の疑問に対してはこういう説明をしてきたし、文献もあるということを踏まえて、2016年の蓮舫氏国籍問題(日台複数籍問題)に関する報道を振り返ってみてください。
どういう解釈が本来正しいかどうかという議論よりも、少なくとも過去法務省の研究会が関連した書籍内で「このように」説明されていた事柄であるということ。
この文献内容を踏まえて考える限り、日本の国籍法上では、「台湾籍」を国籍法条文の文言で言うところの「外国の国籍」に当たると解釈しなければならない理由はない。法律への注意義務を最大限払っても、日本人が台湾籍を志望取得しようが、日台複数籍状態であろうが、国籍法上で何の問題もない、という結論しか得られないところでしょう。
説明もなくあのように蓮舫氏個人を陥れたこと。ひいては、一般の日台関係者に多大な不安を与えたこと。
「社会の木鐸」たるマスコミさえもが、それを正せないどころか、むしろ加担していたという、恐ろしい事実。
・・鳥肌が立ちます。
有識者が法制度への危機意識をもって再検証すべき事柄だと考えます。