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「国籍離脱届」のトリック

法務省のサイトにある「国籍離脱届」

のフォーマットに記載されているのは
>法務大臣殿
>日本の国籍を離脱したいので届け出をします。

という文面です。これは、実にいやらしい(欺罔的な)仕掛けだと思いました。

この届けを出しちゃった人が後に悔やんでも
※自分で日本の国籍を離脱したいと、届け出たんじゃないか。
と「当事者側の責任」にされてしまうわけですね。

しかし、「国籍離脱届」を出した人は、本当に心から「日本の国籍を離脱したい」と願っていたのでしょうか?

「国籍離脱制度」が導入されたのは昭和25年の国籍法10条1項にさかのぼります。昭和59年の国籍法では13条1項に条文移動しました。
 戦後の日本国憲法施行(昭和22年5月3日)までは、「重国籍者」が希望したとしても、一部の例外ケースを除き、自由に日本国籍を離脱することはできなかった。
 日本国憲法第22条第2項で、「国籍離脱の自由」が保証され、昭和25年の国籍法10条で、

第十条 外国の国籍を有する日本国民は、日本の国籍を離脱することができる。

と、国籍法条文にも反映された。
 この段階では、「国籍離脱届」を出す人は、実際に「日本の国籍を離脱したい」と願っていた人だけかもしれません。
 例えば、日本国籍を残したままでいることが、外国側で何らかの不利益(役職や資格制度の欠格事由など)になる場合など、日本国籍の離脱を自ら希望するケースはあったことでしょうが、そういう特殊なケースだけの問題だった。

 しかし、昭和59年改正国籍法で導入された「国籍選択制度」は、「外国の国籍を有する日本国民」一般にまで、国籍法14条1項で、一定期間内に「いずれかの国籍を選択しなければならない。」と迫っている。
 その前提があるから、やむなく「国籍離脱届」を出した、という人の場合、決して「日本の国籍を離脱したかった」わけではないはずです。
 昭和59年改正国籍法で、全く意味合いが変わったといえます。「日本の国籍を離脱したかった」のではなく、外国側の籍を維持する必要があるというだけ。そういうひとに
>日本の国籍を離脱したいので届け出をします。
と記された届けを出させる、というのは、まあなんて残酷なのだろうと思います。

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