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日弁連勧告書を読み解く(2)・・構成・判断・理由

これまでの内容は

では、前回に引き続き、調査報告書を見てみましょう。

調査報告書の構成

第1 結論
第2 申し立ての趣旨および理由
 1 申立ての趣旨
 2 申立ての理由
第3 調査の経過
第4 調査の結果
 1 法務大臣の記者会見内容と日本テレビの報道
 2 法務省民事局民事第一課からの照会回答の内容
 3 国籍選択制度の下で採り得る選択の方法
第5 国籍選択制度についての当連合会のこれまでの立場
第6 当委員会の判断
 1 日台複数籍者は国籍法14条に基づく選択義務を負わないと解すべきであること
  (1) 日本政府の立場としては,日台複数籍者は「外国の国籍を有する日本国民」には該当しないはずであること
  (2) 日台複数籍者に国籍選択制度の適用があるとした場合,「日本国籍の選択宣言」という方法しか採り得ないこと
 2 日本政府の矛盾した言動による弊害
 3 個人として尊重される権利(恣意的に国籍を喪失させられない権利及びアイデンティティの権利)の侵害の検討
 4 国籍選択制度の廃止の検討が速やかになされるべきであること
 5 まとめ

こんな構成になっていますね。

判断

一番大事な箇所は、7ページの「第6 当委員会の判断」の1でしょう。

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日台間の複数籍者は国籍法の国籍選択(14条)の義務を負わない

法律の解釈上そう解釈しなきゃおかしいと言っている。ここが肝心。理由が、大きく二つ挙げられています。

理由1 重国籍の要件に該当しない

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日台間では、そもそも日本政府の示している「重国籍」の要件に当てはまらないはず。と言っているわけですね。じゃどうして当てはまらないのか?

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まず、国籍選択義務の対象になる人ってのは、法律の条文上『外国の国籍を有する日本国民』だ、と確認。そりゃそうだ。

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ある人が『外国の国籍を有する日本国民』だ、とどうやって判断するのか?、法務省が回答したのは

※「外国政府の発行する証明書の有無によって判断する

ということです。まあ、そりゃそうでしょうね。じゃあ、台湾の場合どうなるのかな?・・実は、この辺から話が怪しくなっていきます。

では、引用されている第4・2の法務省の照会回答の内容もみてみましょう。

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※日本人と台湾人の間に生まれた子供の国籍を複数国籍として扱いますか?

こんな簡単な質問に、法務省はまっすぐに答えていません。台湾のことについて聞いているんですよ!それに対して

・「当該外国政府」が把握していることで(日本は)判断できないから当該外国政府の発行する証明書によって判断する。
・ここでいう外国とは,国際法上,ある地域が国として承認されていること又はその地域がある国に属していることを承認されていることを要し,
 かつ,日本が独立国として承認する国家であることを要する。
・我が国は,台湾を中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとする中華人民共和国政府の立場を尊重する立場にある
・外国国籍を有することについて,当該外国政府の権限のある者が発行した証明書の提出を求めているところ,台湾当局発行の証明書はこれに当たらない。

ここ、よーく読んで、法務省の言わんとするところを解読してください。
 蓮舫氏の国籍騒動以来5年、恐らく日本社会の99%以上の人は次のように理解していたのではないでしょうか

>台湾と国交がないとはいえ、日本は事実上、「台湾」を国に準じて扱っている。台湾籍を持っている日本国民は重国籍者として扱われるし、国籍選択では日本もしくは台湾のいずれかを選択する必要がある。国交のある国と何ら変わらないのだから国籍選択義務は当然課される。・・はずだ。

・・と。そう思い込まされてきたわけです。

それは誤解でした。日本人と台湾人の間に生まれた子供の国籍を「重国籍者」と扱うなんて法務省は一言も言ってやしない。

◎「当該外国政府の発行する証明書によって判断する」

と言っているんですよ。じゃあ、その「当該外国政府」ってどこなのか?

台湾当局発行の証明書はこれに当たらない。

我が国は,台湾を中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとする中華人民共和国政府の立場を尊重する立場にある

この法務省の返答、要は、日台ハーフの子供が重国籍者に当たるかどうかを

中華人民共和国政府が発行する証明書によって判断する

と、とんでもないことを示唆しているのですね。

つまり、かつて法務大臣が口にした、「台湾出身の重国籍者に義務がある」という話は、

「台湾当局に籍の登録があること」が重国籍と扱うための要件なのではなく

中華人民共和国政府が発行する証明書があること」が要件なのです。

台湾関係者で、ふつうそんなもんあるわけねーだろ。ヽ(`Д´#)ノ

そこで日弁連の先生はこれを看破して

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 日本政府の立場としては,日台複数籍者であり,中華人民共和国政府発行の国籍証明書を所持しない者は,「外国の国籍を有する日本国民」として認識,把握することが認められないはずであるから,国籍法14条1項の国籍選択義務は課されないはずである。

と、法務省側の「台湾出身の重国籍者なら義務があるんだ」と言ってごまかしてしまうような詭弁を封じる文言を入れてきている。手に汗握る法律論のつばぜり合いです。

理由2 選択肢が一つしかない

理由1で

「日本政府の立場としては,日台複数籍者は「外国の国籍を有する日本国民」には該当しないはず

ということを立証したわけですが、理由2では、それでももし、無理やり「該当する」として扱ったら、どういう矛盾が生じるか?

を書いています。

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台湾籍が選べない、ということを書いています。

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そりゃそうですよね。選択肢が無いなら、わざわざ何のために手続きさせているの?ということになるでしょうね。

残る疑問

最後に残る気持ち悪さは、なぜ「日本国籍の選択宣言」だけ、できてしまうのか?という点でしょう。

それについては、法務省民事局の回答の中に

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要は重国籍かどうか判断するための「当該外国政府の発行する証明書」が無い状態で受理できてしまうということ。

だから義務発生の要件を厳密に検証すれば対象外になるはずの人でも、「国籍選択宣言」なら受け付けられてしまうというわけ。制度のトンデモナイ実態が見えてきましたね。

 この「日本国籍の選択宣言」、日台ハーフの場合、日本の役所は、「現に有する外国の国籍欄」に「中国」と書くように指導するそうです。

 書かされる日台ハーフの子は、日本側のお約束だから仕方ないと思って当該箇所に「中国」と書くわけですが、役所側からすると

「台湾かどうかとかしらんけど、『中国』って書いてあったから『中国』って扱った」ということになります。

証明書を持って厳密に証明する場面であれば、台湾側の証明書を認めないところです。外国国籍の証明書がいらないから、受け付けられてしまう。これは知らぬ間に、日本の立場である
「台湾を中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとする中華人民共和国政府の立場を尊重する」に同意する踏み絵を踏まされていることになるのではないでしょうか。

当事者にとっての選択手続きの意味を考えれば考えるほど、「選ぶとしたら日本を選ぶ」つもりの人であったとしても、このような「欺罔的な」手続きを迫られるべきではない、と強く思います。

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