
「適用」という言葉尻をとらえて・・
「適用」
2016年に蓮舫氏の国籍問題が報道された際、「適用」という言葉が問題になったのを覚えている方もいらっしゃるでしょうか?
蓮舫氏は当初「(日本の国籍法上の)二重国籍には当たらない」と主張し、その根拠として「(仮に中国籍があったと扱われるとしても)中国の国籍法を適用すれば自分は中国籍を喪失していることになる」と述べました。
これに対し、法務省は「適用」という言葉をターゲットにして、
「台湾出身者に中国の国籍法を『適用』していない」として彼女の主張を否定しました。
たとえば日本経済新聞の記事では次のように報じられています。
法務省は14日、日本の国籍事務では「台湾の出身者に中国の法律を適用していない」とする見解を発表した。民進党の蓮舫代表代行の「二重国籍」問題を受けたもの。外国籍を取得した時点で中国籍を失う中国の法律を適用する立場にないとした。蓮舫氏の国籍問題では、蓮舫氏に中国の法律が適用され、日本国籍取得時点で台湾籍を失ったとの見方が出ていた。
ちくま新書「二重国籍と日本」の第一章「メディアの迷走」(野嶋剛 著)
のp39、40には法務省のさらに詳しい説明が記されています。
「九月七日前後ぐらいからいろいろな記事で台湾の人に我々が独自に中華人民共和国法によって国籍喪失をさせているかのような報道があったので、九月一四日、法務省の記者クラブに記者レクを行って、「我々は日本の国籍法を所管しており、外国の国籍を我々が判断はできない」と説明し、「台湾出身の方に中華人民共和国国籍法を適用していません」という発表文もクラブに投げ込んだ」
(中略)
「我々は日本の国籍法を所管しているだけで、どこかの国の人に外国の法律を適用して国籍があるとかないとかを決める権限はありません。外国の国籍の有無を我々が判断できるような報道が続いていたので、そうではないと説明させてもらいました」
第一章「メディアの迷走」p39,40
この経緯により、「(外国の法律を)適用する・・」という説明をした蓮舫氏がデタラメを言ったかのように叩かれたわけです。
異世界文献
ここで、例の「異世界文献」
ならぬ1981年の
※法務省民事局第五課国籍実務研究会 編『最新国籍・帰化の実務相談』,日本加除出版,1981.3. 国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/pid/11994800 (参照 2024-12-10)
を見てみましょう。
この文献の存在を、ある方に紹介したところ、
>「研究会は「民事局第五課」ではない、公式見解とは言えまい」
・・とかなり懐疑的な反応が返ってきました。
そこを疑問に思われるならば、この書籍の「はしがき」を見てみましょう。(赤線・赤枠は当方で追記。)


おわかりいただけただろうか?
《本書は、常日頃国籍事務にたずさわっている民事局五課の職員が、実際に相談を受けた事案を各国の国籍法・身分法規を「適用して」わかりやすく解説したものです。》
・・・と、当時の法務省民事国第五課長の名前で書かれている。
まさか当時の法務省民事局に限って、
「どこかの国の人に外国の法律を適用して国籍があるとかないとかを決める権限があって、外国の国籍の有無を判断できた」
・・・とでもいうのだろうか。
というのは冗談として、蓮舫氏や一部マスコミが「適用」という言葉を使ったとしても、それをことさら大きく取り上げて叩くような話ではないことが分かるはずです。