見出し画像

「国籍はく奪~国籍法11条をめぐる問題」(日本記者クラブ)を見ての感想(2)

の続きです。見たのは日本記者クラブがYoutube上で公開している次の動画

山浦先生は楽観的?

山浦弁護士)
45分 お孫さんが日本国籍喪失
49分 お孫さん、イギリス国籍をとる権利有・・登録が日本国籍喪失に
   「本人の意思」によるという形に一筆とられた。
57分 最高裁の人、信頼できる人たちだが、65歳くらい
   あと数年すれば。世代交代・・そう遠くない時期に解決すると思う。

質疑)
1時間3分 与党へ働きかけ
     「夫婦別姓の問題」などについても、若い国会議員は
     与党も含めておかしいと言う気持ちを持っている。
1時間5分 最高裁は世論の動向を気にしている。
     判例の変更が生じる場合も、過去の判決は正しい、今も正しい、
     但し「環境が変わった」という理由付け。
     「環境が変わった」といえる方向に世論をもっていきたい。

 元最高裁判事の山浦弁護士は、世代が変わって認識が変われば国籍問題も、(夫婦別姓問題も)いい方向に変わると、・・とかなり楽観的でいらっしゃったようです。
 ただ私はここには懐疑的。そもそも、戦後の国籍法大改正の際に、無理やり「先送り」された旧制度の内容が今に残って矛盾を生んでいる。時が経てば経つほど、むしろ手が付けられなくなってしまうタイプの問題に見えます。(以前これを「溶岩流アンチパターン」と表現しました。)

最後にとんでもない話が出ていたような

1時間19分 
司会:毎日新聞澤田氏)そういえば、資料を読んだとき、日本国籍を一回11条1項で、はく奪された後に、帰化手続きを取ればいいと言われて、帰化手続きをもう一回取って、日本国籍を復活させて、結果的に二重国籍になって、でもそのことについては日本政府は何も言ってこない。放置されている、というようなものがあったのですけれど、どうしてそういうことが起きるんでしょうか?

仲弁護士)結局複数国籍の弊害があると、国も全然問題視していないのだと思います。だから一旦11条1項で日本国籍を失った人が、再度日本国籍を取得しても、元の国籍は失われないで済んだり、と言うことが起きていると言うことですね。ただ、一度日本国籍を失った方が、再度日本国籍を取得しようとすると、やはり日本で一定期間生活をする必要があったりとか、さらにあの、帰化ってやっぱり裁量があるんですよね。なのでいつ実際に再取得できるかわからないということで、日本で暮らしながらもそういう手続きを取ることをあきらめてしまっている方も少なくないと、私の認識では把握しています。

 動画の最後の2分間に、あまりにさらりとすごい話が出ていたので、つい自分は色めき立ってしまいました。
 このやりとりから伺えるのは、「国籍回復」に相当する簡易帰化の実務では、外国国籍の離脱を求めていない、と受け取れる内容だからです。
 前にこちらで書きましたが、

昭和25年の国籍法改正時に

従来条文上で、外国国籍を放棄せず、日本国籍の回復が可能であった「国籍回復制度」を廃止して「簡易帰化制度」にまとめています。この際、写真の通り「二重国籍の発生を防止するためである」と理由付けをしています。

で書いたように、「簡易帰化」では条文上、「五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。」という帰化要件は免除されていない。
 そう理解していたわけですが、実務では澤田氏が指摘した通り、
>「日本国籍を復活させて、結果的に二重国籍になって、でもそのことについては日本政府は何も言ってこない。」
これに対して仲弁護士も
>「一旦11条1項で日本国籍を失った人が、再度日本国籍を取得しても、元の国籍は失われないで済んだり、と言うことが起きている
と答えていらっしゃる。

 これって、国籍法の条文通りではないような実務上の扱いが行われているということですよね。
 旧法の国籍法26条は、条文の上で建前上は廃止され、「五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。」という要件は免除されなくなったと読めるが、実際には実務の運用の中で旧26条に相当する扱いは生きていた、ということでしょうか。
 むしろ、この扱いにこそ、もっと注目して検証すべきではないかと思いました。最後の二分間で片づけるよう内容ではないでしょうよと。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?