「国籍はく奪~国籍法11条をめぐる問題」(日本記者クラブ)を見ての感想(2)
の続きです。見たのは日本記者クラブがYoutube上で公開している次の動画
山浦先生は楽観的?
元最高裁判事の山浦弁護士は、世代が変わって認識が変われば国籍問題も、(夫婦別姓問題も)いい方向に変わると、・・とかなり楽観的でいらっしゃったようです。
ただ私はここには懐疑的。そもそも、戦後の国籍法大改正の際に、無理やり「先送り」された旧制度の内容が今に残って矛盾を生んでいる。時が経てば経つほど、むしろ手が付けられなくなってしまうタイプの問題に見えます。(以前これを「溶岩流アンチパターン」と表現しました。)
最後にとんでもない話が出ていたような
動画の最後の2分間に、あまりにさらりとすごい話が出ていたので、つい自分は色めき立ってしまいました。
このやりとりから伺えるのは、「国籍回復」に相当する簡易帰化の実務では、外国国籍の離脱を求めていない、と受け取れる内容だからです。
前にこちらで書きましたが、
昭和25年の国籍法改正時に
従来条文上で、外国国籍を放棄せず、日本国籍の回復が可能であった「国籍回復制度」を廃止して「簡易帰化制度」にまとめています。この際、写真の通り「二重国籍の発生を防止するためである」と理由付けをしています。
で書いたように、「簡易帰化」では条文上、「五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。」という帰化要件は免除されていない。
そう理解していたわけですが、実務では澤田氏が指摘した通り、
>「日本国籍を復活させて、結果的に二重国籍になって、でもそのことについては日本政府は何も言ってこない。」
これに対して仲弁護士も
>「一旦11条1項で日本国籍を失った人が、再度日本国籍を取得しても、元の国籍は失われないで済んだり、と言うことが起きている」
と答えていらっしゃる。
これって、国籍法の条文通りではないような実務上の扱いが行われているということですよね。
旧法の国籍法26条は、条文の上で建前上は廃止され、「五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。」という要件は免除されなくなったと読めるが、実際には実務の運用の中で旧26条に相当する扱いは生きていた、ということでしょうか。
むしろ、この扱いにこそ、もっと注目して検証すべきではないかと思いました。最後の二分間で片づけるよう内容ではないでしょうよと。