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日弁連勧告書を読み解く(3)・・・申し立て内容

はじめに

2021年9月29日に日弁連勧告書が公開になってから、

概要

構成・判断・理由

と読み解いてきました。日弁連の法律判断として、

※日台複数籍者は国籍法の国籍選択(14条)の義務を負わないと解すべき

というのが、真ん中にあり、それに基づく勧告として、内閣総理大臣、および法務大臣に対して

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※日台複数籍者に対して,国籍法14条が規定する国籍選択を求めてはならない
※日台複数籍者に対して,日本国籍の選択宣言を行わなかったとしても,国籍法上の義務違反に当たらないことを周知徹底するべき

と、毅然と書ききっています。

 今回は、そもそも何でこういう勧告が出るに至ったか。そのおおもとである「申立て」の内容を見ます。

日弁連の人権救済制度

まず、ここに出てくる「申立て」と言うのが、どういう制度に基づいた話なのか見ておきます。詳しくはリンク先、日弁連のサイトをご覧ください。

日弁連(日本弁護士連合会)は「人権擁護委員会」という組織を設置して、
人権侵害の被害者や関係者の方々から人権救済申立てを受け付け
・申立事実および侵害事実を調査し、
・人権侵害又はそのおそれがあると認めるときは、人権侵害の除去、改善を目指し、人権侵犯者又はその監督機関等に対して、措置等を行う。

その措置の一つが、今回の「勧告(意見を伝え、適切な対応を求める)」です。

ですからは、「申立て」それ自体は、法律の素人さんが、「これは人権侵害じゃないですか?」といろいろ言っている内容がもとになっている。受け取った日弁連側が、要点を整理して形を整えているということでしょう。

申立ての趣旨

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※最初に、2016年10月18日の「法務大臣記者会見」の大臣の発言内容を撤回または訂正せよ、と申し立てているわけ。

 あの時の法務大臣の説明、おかしいから訂正すべきじゃないの?という指摘です。

法務大臣が当時、何を言ったかというと

「一般論として,台湾出身の重国籍者については,法律の定める期限までに日本国籍の選択の宣言をし,これは国籍法14条1項,従前の外国国籍の離脱に努めなければならない,これは国籍法16条1項ということになります。期限後にこれらの義務を履行したとしても,それまでの間は,これらの国籍法上の義務に違反していたことになります。」

これ聞いたら、普通は

「あー日本と台湾の複数籍者は、選択義務の対象であり、日本を選ぶか台湾を選ぶか、そういう手続きをしないと義務違反ってことだな!」

と思っちゃいますよね。それ以外の解釈など、できそうにありません。ところが、この説明がおかしい、と申立人は言っているようです。

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「日本側の制度の上で、選択せよと言っても、台湾籍の選択ができないじゃないか!」というわけですね。その事実を知って申立人さんは、激怒したんでしょうね(^_^;)

 もちろん、制度上そのようになっているならそれ自体は仕方ない話ですが、それならばそうと、当事者に対して事情を詳しく説明すればいい話です。当事者には「選択ができないので、義務対象ではありません」と言わなければいけないはず。ところが

 大臣が「義務がある」と説明する際、手続き上台湾が選べないという話はおくびにも出していなかったこと。(2)

 法務省や各地方法務局でも日台複数籍者に「重国籍者であれば選択義務がある」というような指導があったということ。(3)

行政が、こんなミスリードをすることが、信義上許されるのか? 正されるべきでしょうね。

 そしてマスコミ。当事者の立場を調べもしないで「義務違反」と報道したのはどうなのよ?撤回しろ。って話ですね。(4)

申し立ての理由

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申立人と蓮舫さんは全く関係ないようです。

弁護士ドットコムが

あれから5年…蓮舫氏「二重国籍」問題めぐり、日弁連が勧告 「国籍選択もとめるな」

などと思わせぶりなタイトルつけたためにネット上では、

⇒日弁連、蓮舫2重国籍問題に「政府は国籍選択もとめるな!」
⇒日弁連「蓮舫に国籍選択を求めるな」
⇒蓮舫代表代行に日本国籍の選択を求めるな、と日弁連が政府に勧告書を提出したと判明
⇒日弁連が法律違反を推奨する勧告書を政府に提出する

などと、雑過ぎるタイトルのスレッドが立ち上がっていましたけど、基本的には蓮舫さん関係ないことがわかります。

 申立人が理由として、挙げた内容は、

・実際に国籍選択手続の履行として受理される方法は,国籍法14条2項後段の「日本の国籍を選択し,かつ,外国の国籍を放棄する旨の宣言」だけ。
・国籍選択制度上,日台複数籍者には,台湾籍を選択する方法が認められていない。

なのにそれを教えずに大臣は

「台湾出身の重国籍者」に国籍選択義務がある

ようなことを言ったもんで、

日本テレビは「蓮舫氏“二重国籍”は違法状態」と断定的に報じた。

そのせいで「日台複数籍者」は不安になるし、周りにも誤解されるということ。また法務局では

国籍選択義務の有無について相談に来た日台複数籍者に対し,相談者自身が国籍法14条1項の「外国の国籍を有する日本国民」に該当するか否かについて明言しないまま,「重国籍者であれば,選択義務がある。」などと手続指導をすることがある。このような指導は,本来不要であったはずの日本国籍選択宣言を欺罔的に誘導するものである。
以上は,日台複数籍者当事者にとっていずれも深刻な人権侵害である。

これね、「欺罔的」という難しい言葉が出てきますが、要は

「詐欺じゃね?」

というくらいの意味ですね。

役所で「あなたのケースは重国籍者ということになりますよ」とは言わないのに「重国籍者は、選択義務がありますよ」・・とだけ言う。

だれだって誘導されちゃう、

法律論以前の話として、これは詐欺的にすぎるでしょう。

これはいけませんね。

理由はどうあれ、一般当事者を騙すようなことをしてはいけません。

次回は、「調査の結果」日弁連側が事実認定した内容を細かく見ていく予定です。

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