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自然あふれる小さな島、ボーンホルムにはクリエイティブで等身大な美しい暮らしがある

10月28日まで展示中のDESIGNART TOKYO 2023『ボーンホルム島のモノづくり』展で見つけたのは、デンマーク本土から東へ150km離れた人口4万人を抱えるボーンホルム島で作られた美しいクラフトの数々。スカンジナビアらしい街並みと海や山遊びで80年代から観光業を主とするこの町では、訪れたアーティストたちがいつの間にか定住させてしまうほどの魅力がある。

それは、陶器やガラスのクラフトにとても適した世界でも珍しい土壌をもっているからだと語ってくれたのは陶芸・ガラスアーティストのRich Garner。第二次世界大戦後の高い失業率や経済危機などの苦難を経て2017年ユネスコが認定するNPO組織World Craft Councilから工芸の分野で最高の評価“WORLD CRAFT REGION BORNHOLM”を世界で初めて授与された。

自然の恵みを崇拝し素材に新たな価値を与え人々に新しい体験をもたらす、ニュー・ノルディック・ムーブメントの一端となったレストランKadeauの存在も大きかったのかもしれない。現在、ボーンホルムでは経済・観光・建築・街づくりなどすべてにおいて持続可能な戦略に基づいて設計され、サステナブル界の前衛である北欧を代表する民主主義フェスティバルが毎年行われている。

本展示を取りまとめたのは数珠かおり。福岡出身でLOEWE FOUNDATION CRAFT PRIZEのファイナリストでありボーンホルム島で20年以上活動するジュエリーアーティストだ。COVIDで時が止まった2021年、作品の廃材を使用して七宝の技術を発展させて幾つもの手法を繰りながら生み出した豊かな表現で極小のスカルプチャーを作り出した。


作品名である「108 POINT OF VIEW」の108とは日本人には除夜の鐘でお馴染みの煩悩の数だという。「島で活動する多くの素晴らしいアーティストたちの中で、年齢や活動遍歴、創作表現などがバラバラの人たちを選びました。デンマークでは人間国宝級の人も新人アーティストも同じように肩を並べて純粋に制作に勤しみます。年齢によるヒエラルキーが色濃くいまだにジェンダーギャップが根強い日本の社会やクラフト業界に一石を投じるつもりで」。


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