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インタビュー#10 「学校に来ない選択をする子」との関わりで、教育に対する考え方が変わった

今回インタビューさせてもらったのは、2021年春から新卒で公立小学校の教員となり、現在は2年生の学級担任をされている愛弓さん(仮名)です。

フリースクールでの経験から変化した「子どもとの関わり」や、新卒だからこそ見えてくる「学校教育に対する思い」を伺いました。

小学校時代に出会った先生の影響で教師を志す

ーー 教員になろうと思ったきっかけを教えてください。

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小学校で出会った担任の先生の存在が大きかったです。私はもともと引っ込み思案な性格で、上手く人と関われずにいました。そんなときに、話を聞いてくれたりアドバイスをくれたことで、徐々にクラスに馴染んでいけたんです。

自分が変わるきっかけになったので、その先生のように、悩みを持っている子に手を差し伸べられるような人になりたいと思うようになりました。それが、教員になろうと思ったきっかけです。

「学校に来ない子」との関わりで変化した、自身の価値観

ーー 愛弓さんは、学生時代にフリースクールでボランティアをされていたそうですね。

はい。今後教員になることを考えたときに、子ども達と関わる経験はしておきたいなと思ったんです。大学2年生までは部活に入っていたのですが、子ども達と関わるような機会はありませんでした。そんなときに、大学の授業でフリースクールについて学んで、そこから興味を持ちました。

気になって自分でも調べてみたら、授業で紹介されていたフリースクールから大学にボランティアの依頼が来ていたんです。「ここなら子どもと関われる」と思って、ボランティアをさせてもらうことになりました。

ーー 子どもと関わりが持てるのは、他にも塾や家庭教師などの選択肢もあると思いますが、その中でフリースクールを選んだ理由はなんだったのでしょうか。

「学校は行くべき場所」という強い意見を持っていたわけではありませんが、「行くのが当たり前」という感じで思っていました。正直に言うと、小学校や中学校時代に学校に来ていなかった子に対して、あまり良いイメージは持っていなかったんです。

これから教員になることを考えたときに、きっと学校に来ないような子ども達とも関わりと持つだろうと思いました。フリースクールに来る子達と関わることで、「学校に来ない選択をする子」について少しでも知ることができるかもしれないと思ってフリースクールを選びました。

ーー フリースクールでボランティアをしてみて、子ども達に対する印象は変わりましたか?

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最初は、フリースクールに来る子ども達に対して、ネガティブな意味で「不登校」というレッテルを貼っていたんです。どう接したら良いのかもわかりませんでしたし、模索しながらだったので、子ども達に対して少し上から目線で注意するようなこともあったと思います。ただ、こちらが管理しなくても子ども達は自分で色んなことを判断していけると知って、あまり注意はしないようになりました。

教育に対する考えは、大きく変わりましたね。「学ぶ場所は、学校だけじゃない。そして、子ども達は学ぶ場所を選択していい」と思うようになりました。

忙しくても、子どもの目線を大切にしたい

ーー 実際に教員になってみて、フリースクールと学校で、違いを感じることはありますか。

そうですね。全然違います。フリースクールではボランティアとして関わっていたこともあり、友達に近いような接し方をしていました。子ども達も私のことはあだ名で呼んでいました。でも学校の中では、児童と教員ではっきりとした縦の関係がある気がします。

ーー 子ども達との関わりで、これから大切にしていきたいことはありますか。

私の理想の教員像は、教員採用試験のときから変わっていません。「小学校のときに出会った先生のように、子どもに常に寄り添える教員になりたい」と思っています。

どんなに忙しくても、子ども達の目線で話したり、考えたりすることを忘れないようにしたいと思っています。教員としての役割はもちろんあると思いますが、なんでも上から物を言うと、子ども達だって納得しない部分は出てくると思います。物理的にも心理的にも、子ども達に寄り添うことは大切にしたいです。

ーー 現在は、小学校2年生の学級担任をされているんですね。担任を持ってみて、感じることはありますか。

年齢的なものもあると思うのですが、子ども達から「〇〇さんが△△してました〜!」という報告を受けることがとても多いですね(笑)いつもどこまで聞いたら良いのか悩みますが、できる限り耳を傾けるようにしています。「話を聞いてほしい」と言う気持ちもあると思うんですよね。

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また、子ども達と接する以外の仕事が多いのはわかってはいましたが、想像以上でした。校務分掌や事務作業、授業準備など、とにかくやることが多いと感じます。まだ自分の中で優先順位を決められないのもつらいなと思います。

朝は7時半くらいに学校に着くように行って、遅くとも19時半には帰るようにしています。残業時間は月45時間以内という規定がありますが、なかなか思うようにはいかず、土日のどちらかは学校に行って3,4時間仕事をしています。

でも、私が土日に学校に行くと、他の先生達はあまり来ていないので、みんなどうやって仕事をこなしているんだろう?と気になります。

学校以外の世界を知って、子ども達に伝えたい

ーー 学校教育に対して、課題に感じることや気になることはありますか。

学級経営についての知識が全然ないなと痛感しています。学級経営が上手くいかないと授業も成り立たないし、子ども達との関係も上手くいきません。教員としての能力って、一番はそこなのかなと思います。

副担任の先生はいますが、各クラスに配置することは難しくて、結局一人の教員が一つのクラスを担当することになります。教員の仕事量として大変なこともありますが、子ども達にとっても複数の大人が学級経営に関わることで、色んな人に見てもらえる安心感につながるのではないかなと思います。

また、学校は知識を身につけることも大切だと思いますが、それよりも集団生活を学ぶ場所になってほしいと思うことがあります。家ではネット環境が整っていることもあって、子ども達は知識として色んなことを知っています。授業でも「もう知ってる〜!」と言われることもよくあります。

フリースクールでの経験も影響していると思うのですが、知識を身につけるのは必ずしも学校でなくても良いと思っていて。それよりも、学校では他者との関わりやコミュニケーションを学べると良いのかなと思います。

ーー 新卒として4月から働いてこられて、これから現場で学んでいくことはきっと多いと思います。愛弓さんが教員生活を充実させるために、これからやってみたいことはありますか。

学校内の研修で、「先生自身が色んな経験をしなさい」と言われたことがあります。教科書の内容をなぞるように教えることは誰にでもできるので、私自身が経験したことを子ども達に伝えることで、より学習を豊かにしていきたいです。

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そのためにやりたいと思っているのことの一つは読書です。今勤めている学校では朝読書の時間がなくなってしまい、学校にいる間で子ども達が本を読む時間がほとんど取れていない状態です。なので、私が読んだ本を紹介することで、本に興味を持ってもらう機会をつくりたいです。

私自身は、中学校くらいまでは好きでよく読んでいたのですが、高校生になってからは携帯電話を持つようになったこともあり、読書から離れてしまったんです。授業作りや学級経営などのハウツー本もいいのですが、それ以外にも広いジャンルの本を読んでいきたいです。

あとは、海外研修に行きたいなと思っています。実は私は英語の教員免許も持っているのですが、中学2年生のときに海外研修として少し留学したくらいだったので、もっと色んな国の文化に触れたいなと思います。

特に興味があるのは、デンマークにあるフォルホイスコーレです。全寮制で、学生同士で対話しながら自分の人生を見つめ直すような学校です。大学時代にお世話になったフリースクールの代表からフォルケホイスコーレの話を聞いて、興味を持つようになりました。日本以外にも、色んな国の学校や教育機関のことを学んでいきたいと思っています。

ーー 愛弓さん、ありがとうございました!

インタビュー後記もご覧ください。

(トップ画像は、パンジーの花です。花言葉は、「もの思い」「私を思って」。)


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