黒沼千春「点 × 線 │Dots × Lines~short version」セッションオンライン劇場(ライブ配信&期間限定アーカイブ)
東京・神楽坂にあるコンテンポラリーダンスの拠点、セッションハウスが、ダンス公演を無料(投げ銭歓迎)でライブ配信。配信後、動画を2週間公開。
ダンサーで書道家の黒沼千春氏による「点 × 線 │Dots × Lines~short version」、20分程度のダンスも、その後40分程度のトーク(YouTubeのチャットで質問受け付け)も、すごくよかった。
リアルタイムの視聴者は40人以下だったが、アーカイブ動画でぜひ多くの人に見てほしい。東南アジアやヨーロッパでも公演やワークショップを行ってきたそうで、台湾やアメリカから視聴しているという人もいた。
ダンスも書道も8歳から続けていて、日本大学で文芸創作を学び、25歳でイギリスのトリニティー・ラバンにダンス留学。
書道でもパフォーマンスという形態があり、特に海外では書道をダンスに取り入れたらいいのにとよく言われていた。しかし、誰もが想像できるような作品は踊りたくなかったので、違う形で書道とダンスの融合をどう実現できるかを模索した結果が、現在進行形の「点×線」プロジェクトなのだそう。
冒頭でガラス板のようなものに毛筆で字を書き、そのガラス板を通して、黒沼氏がソロで踊る。おそらくガラス板は大きいものではないが、映像だからこそ、その板に書かれた字とダンサーの全身を重ねて見せることができる。のだろうと思っていたら、やはりトークでの種明かしでその通りだったとわかった。
ラストで、複数のガラス板に3つくらいに分けて書かれていた「流」の字の各部を、それぞれのガラス板を手でスライドさせて一気に中央に集め、「流」の字が現れるのも、かっこいい。
上は白、下は黒の衣装で、合気道をする人みたい(?)。体、腕や足、背骨などが筆になったかのように、ストロークを描く。身体が、筆になり、字になる。
子どものときから10年以上習った書道(毛筆と硬筆)の記憶がよみがえり、目に涙がにじんだ。月に3回ほど、うまく書けないなあ、難しいなあ、という雑念はありながらも、苦手な正座をして、背筋を伸ばし、肘を張りつつ手首は柔らかく保ち、深呼吸をして、半紙に筆、または紙にペンを置く、あの感覚の記憶。字を書くこと以外の邪念が遠のいて、宇宙に浮かんでいるような時間。
すごく久しぶりに書道を再開したい!と思いつつ(単純・笑)、今の自分があの感覚を取り戻せのかという不安が頭をもたげる。
同時期にバレエを習っていたので(バレエの方が年数が少ないが・笑)、背筋や腕の構えが書道とバレエとで少し似ているなあと思っていたことや、どちらも自由に書く・踊るためには基礎が大切なところも同じだなあと思っていたことを、いきなり思い出した。
すっと伸びる黒沼氏の身体。真っすぐなまなざし。美しい踊りだった。
トークでは、今こそ世界中のダンサーやダンスに関心のある人たちがオンラインでつながり、アイデアなどをシェアできる絶好の機会だとか、台湾と日本の書道は墨の匂いが違うとか(墨の匂いも好きだったなあ。同じく習っていた油絵の匂いも)、留学中に、ただでさえ訳のわからないコンテンポラリーダンスについて、留学に向けて勉強するまで特に得意ではなかった英語で説明され、衝撃を受けたとか、どの話もとても面白かった。
あと、SNSなどで簡単に連絡が取れる時代であっても、例えば海外に行こうとして、海外の人に情報を下さいと突然要求するのではなく、互いに関係づくりをすることが大切だ、ともおっしゃっていた。
作品情報
セッションオンライン劇場 第三弾
黒沼千春「点 × 線 │Dots × Lines~short version」
5月30日(土)15:00より配信開始
【黒沼 千春プロフィール】
8歳でモダンバレエとクリエイティブバレエを始め、21歳でジャズダンスを始める。自身の創作作品制作やミュージシャン、絵本作家とのコラボレーションを始めるが、コンテンポラリーダンスに興味を持ち渡英、Trinity Laban Conservatoire of Music and Danceにてディプロマを取得。
2016年に台北フリンジフェスティバルに参加し、その後、カンボジア、シンガポール、韓国、タイ、ラオスなど、活動の領域を 東アジア・東南アジアへ広げ、海外フェスティバルへの参加・公演や、各国のギャラリーなどでパフォーマンスを行う。
国内では、ミュージシャンや声優アイドルへの振付、CM出演、ミュージックビデオ (MV) の出演や振付、初心者向けのレク チャー、コンタクトインプロビゼーションのワークショップなども行っている。
▼黒沼氏が振付・出演した、tetote「憂鬱の怪物」MV
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