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ロウ・イエ監督『シャドウプレイ』:中国の最近の事件を基に人間の愛憎をえぐる映画

第20回東京フィルメックスのオープニング作品(特別招待作品)。2018年・中国、125分。英語タイトル「The Shadow Play」。中国語タイトル「‎风中有朵雨做的云」。

地区の再開発事業の責任者を務める当局の主任が、工事に反対する人々が暴動を起こす混乱の中で、建物の屋上から転落死した。事件性が疑われ、若い刑事が担当となるが、主任の関係者を調査する過程で、何者かにはめられ、警察を追われる。香港に逃れ、警官だった父親の友人である私立探偵に協力を頼んで、主任の妻、主任が手を結んでいた不動産業者とその愛人でもあるビジネスパートナーの過去を調べる。香港の学校へ学びに来ていた主任の娘と再会するがーー。

手持ちカメラでブレもあり、暗闇のシーンも多いが、それが緊迫感を出し、ミステリーの感覚を高めている。

中国、香港、台湾を舞台に、現在と過去が交互に現れる。そのつなぎ方の編集も見事だ。

人を殺めるのは絶対に許されることではない。しかしこの映画は、その結果に至った人間の背景や感情や関係を浮かび上がらせ、「私たち一人一人」の物語にしている。

金は人を変えるのか?愛は永遠には続かないのか?憎しみはどこから生まれるのか?親子の愛は何よりも強いのか?正義は常に最優先されるのか?といった普遍的な問いを、この作品は投げ掛けてくる。

ロウ・イエ(娄烨)監督の映画は、映画らしい映画だと思う。映画ならではの表現という気がする。残酷な出来事を描くが、人間への愛にあふれているとも思う。

エンドクレジットで感傷的な歌謡曲が流れ、登場人物たちの幸せだったころの映像などが流れるところで、泣いてしまった。

同監督は、2006年の『天安門、恋人たち』によって中国当局から今後5年間の映画製作を禁じられたため、他国の出資で制作していたが、本作は中国当局の許可を得ている。冒頭では、中国政府お墨付きの映画の印、緑色の竜(?)の画面がめでたそうな音楽とともに表示されていた。

しかし、中国国内で上映できる代わりに、検閲でいろいろと注文が付いたらしく、制作の困難さを、ロウ・イエの妻で、共同脚本家でもあるマー・インリーがドキュメンタリー映画『夢の裏側~ドキュメンタリー・オン・シャドウプレイ』にしている。この作品もフィルメックスで上映された(私は見られなかったので、配給のアップリンクが一般公開してくれることを期待している)。

上映後にはロウ・イエ監督を迎えてQ&Aセッション。検閲で映画のタイトルも変更させられたと語っていた。再開発地区の撮影現場となった地区は、5分くらいで通り抜けられる場所だそうだが、30年前の中国の姿をとどめており、周辺の現代的な風景との対比に引かれ、撮影を決めたと述べていたのが印象に残った。

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『シャドウプレイ』は、2020年2月から、東京・UPLINK渋谷、UPLINK吉祥寺ほか全国で順次公開予定。

▼予告編

▼劇中歌

▼ヤン刑事:井柏然 Boran Jing ジン・ボーラン

▼主任の妻リン・スイ:宋佳 Jia Song ソン・ジア

▼主任の娘:马思纯 Sichun Ma マー・スーチュン

▼不動産王ジャン:秦昊 Hao Qin チン・ハオ

▼ジャンの愛人・ビジネスパートナー:陈妍希 Michelle Chen ミシェル・チェン

▼主任タン:张颂文 Songwen Zhang チャン・ソンウェン


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