『鈴木さん』少子高齢化と実態の見えない政府を、未婚中年男女を通して描く!近未来日本が舞台のディストピア映画
2020年の東京国際映画祭で上映されたときの説明は下記のとおり。
少子化解決のために、未婚者徴兵制が敷かれた街で45歳になる未婚のヨシコは徴兵から逃れる為に婚活を始めるが…。社会に翻弄され追いつめられる中年男女を描くディストピアSF。
国家元首の何十年前のものとも本物ともわからない「肖像画」がスーパーなどあらゆる場所に掲げられ、それにお辞儀をすることを強要される、近未来の日本社会。しかし、その元首はこの数十年、姿を現すことはなく、その「お言葉」のみが伝えられる。
人々は腕に識別番号を刻印され、警察などの監視下にあるらしい。さらに、45歳を過ぎて独身の者は徴兵され、命を失うこともある。主人公ヨシコはそのリミットの年齢になる直前に婚活を開始するが、自治体の婚活パーティーには若者しか呼ばれない。
窮地に陥ったヨシコはある日、素上の知れない男性、自称「鈴木」さんに出会う。こじんまりとした、元ラブホテルで運営する高齢者施設を彼に手伝ってもらううちに、彼との結婚を画策しようとするが――。
映画冒頭の「肖像画」からして不気味なことこの上ない。人心を操り薄っぺらい上っ面の言葉を垂れ流し殺人もいとわない政治家、集団洗脳されている状態の村人たち。落伍者の烙印を押されたヨシコや、異物として疎外された鈴木さん。どちらが正常でどちらが異常なのか?
お笑い芸人のいとうあさこさんとベテラン俳優の佃 典彦さんが、堂々としつつ役柄に合った初々しさのようなものも出して圧巻の演技。ラストの田んぼか畑の中のシーンには背筋がぞっと(?)した。
脚本が書かれ撮影されたのは2020年より前のはずなのに、ますます今の日本社会がこの映画の中の世界に近づいているようで怖い・・・。
Q&Aでの監督は天然(?)のように見せ掛けてただ者ではない?!この作品の発想と感覚はどこから来るのか?摩訶不思議だが、少しでも今の世の中を「おかしい」と思う人は、「見るべき」映画なのかも。
作品情報
TOKYOプレミア2020
『鈴木さん』Mr. Suzuki ― A Man In God's Country ―
監督:佐々木 想
ワールド・プレミア
キャスト :いとうあさこ、佃 典彦、大方斐紗子
90分、カラー、日本語、英語字幕、2020年日本、長編1作目の監督作品
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