見出し画像

『戸川純全歌詞解説集──疾風怒濤ときどき晴れ』生きるつらさに向き合い、暗さ、ユーモア、強さを歌う

本人からの聞き取りによる本。自作の歌詞について語っている。

「孤独」ではないが「一人感」があるという。

「純ちゃんの気持ちは私だけがわかる」(略)そう言われたり、そういうお手紙をいただくたび、「私の何を知ってるんだ」って思う。(略)どこまでいっても、互いに分かり合えない。私は仲間意識というのは苦手。仲間という言葉も嫌い。極端に言えば、個々それぞれが集まって集団になるけど、あくまでもまず個々がある。「一人感」というのはそういうことです。(p. 104)

家族からの虐待や、性的被害、学校で受けたいじめについても書いてある(pp. 127-130、173など)。死についても何度か言及している(pp. 106、126、148、160、190など)。

生きることの難しさ――そういうことは年がら年中思ってます。ずっと、その連続。(略)うっかりすると、私は死の方へ突進してしまいそうなところもある。(略)私は、今は違うけど、死を、どっか美化していたことがある。楽になるというか、救いというか。結局そこでは救われないんだけど。でもそのことで、自分の生への執着がメキメキ強くなったという感じはあります。(p. 106)

「いじめ」というタイトルの歌も作って歌っている。歌詞は穏やかだからこそ悲痛だが、曲調は優しい。

▼私が読んだのは最初の版だが、新装増補版が出版されている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?