16.たべとこ

 日々のエセー『まいにちとことこ』
第16回は、「たべとこ」食べることについて。

 食べるのが大好き。

 昔っからそうだった。
 保育園のご飯やお菓子も好きだったけど、食べるのがもっと好きになったのは、小学校に入学してから。
 学校の給食は市の給食センターで調理されて運ばれてくる。初めてその給食を食べたとき、本当に美味しくって、「おかわり」を知って、何度も何度もおかわりした。
 それで、7kgも肥った。小2にあがるまでの一年間の出来事。

 肥満児形成には、一緒に住んでいた父方の祖父じいさんも加担した。
 当時は小4から、部活に入らなきゃいけなかった。任意という名の事実上の強制。あったのは、陸上部、(男子)野球部、男子バスケ部、女子バレー部、吹奏楽部。それと、冬だけ期間限定のサッカー部。運動がとっても苦手だし、音楽が好きだったから、本当は吹奏楽部に入りたかった。でもその当時、吹奏楽部には女子しかいなくて、入りづらかった。だから、球技じゃなくて、いちばんセンスとか関係のなさそうな陸上部に入った。その迎えに来ていたのが、仕事終わりの祖父じいさんだった。
 その帰り道。学校近くの商店に寄って、頼んでもいないのに、お菓子をよく買ってくれた。夏ならアイス、冬なら肉まん。家に帰ると、夜ご飯をたらふく食べる。そうしていくうちに、身体からだはみるみる大きくなっていった。小学校を卒業するころには、背の順で後ろから3番目だった(けど、中学から背が伸びづらくなって、いつの間にか前から3番目になってた)。

 外で遊ぶタイプじゃなかったから、運動は授業の体育と部活以外にはまったくしなかった。なにかを食べながらテレビゲームしてうちで過ごすことが多かった。

 寂しいときは、食べて気を紛らわすこともあった。よくある話。落ち着くから食べる。だから、ストレスが溜まってるときは、肥りやすい。風邪ひいたときとかも案外肥る。ひとつのめやす。

 食べることは、よく言われている生き物の命を奪うこと以外に、それと同時に、実は自分の命を擦り減らすことでもあるんじゃないだろうか。
 食べ物が毒になるか薬になるかは、自分の身体との相性次第。
 生きるために、つまり死に行くために、人はなにかを食べる。そして食べなければ、人は死んでしまう。死なないために、人は何かを食べる。人がなにかを食べるのは、その食べた物からエネルギーを得て生き延びるためか、快楽物質を脳内で分泌するため。生きるために、死に行くために。
 最も自己矛盾した生理現象。
 食べ過ぎても、死んでしまう。だから、食事を節制コントロールする。
 こうやって観念的に考えると、食べることって恐ろしい。それでいて楽しくない。嬉しくもない。でもそれが生の本質。

 ねぇ、だったらきょうも、とりあえずなんかたべとこう。好きに理由は特別要らないよね。

[2024.8.27]