30.ほめとこ

 日々のエセー『まいにちとことこ』
第30回は、「ほめとこ」褒められ慣れについて。

 褒められ慣れてない。

 だから、褒められると、(んなこたぁないって頭ではわかっているけど)褒めちぎられてるような感じがして、どぎまぎしてしまう。
 すぐに顔が赤くなる。
 かわいくはない。

 たぶん、これまでに何回か褒められたことはあったと思う。24年も生きて日々を暮らしてきたのなら、何回と言わずに結構あったんだと思う。
 けれど、記憶に残るお褒めの言葉はそんなにない。

 印象に残っているのは、ぼくが書いた童話をある先輩に読んでもらったとき、「○○くんの作品は水彩画みたいなやさしさだね」って言われたこと。とても嬉しかった。本当に嬉しかった。

 褒められるのには慣れないほうがいいのかもしれない。図に乗るし、つけあがるから。
 ぼくの場合は、褒められると、あるいは褒められてそうな言葉を投げ掛けられると、その言葉をそのまま受け取って、嬉しくなって、るんるんになって、すぐに調子に乗っちゃうから、やっぱり褒められ慣れないほうがいい。
 ぼくの頭はそう考えているみたい。
 かわいくはない、わよね。

 褒められるって、よくわからない。

 ある日の夜、「それはな、君にええとこがあるっちゅうことやねん」と見知らぬイマジナリーおじさんが夢の中に現れて、うそみたいなコテコテの関西弁でぼくに言った。
 目醒めたぼくはまだ少し弱い力で「ほんまかいな」とツッコんだ。

[2024.9.10]