覚悟をしていたとしても。
私には双極性障害を持つ息子がいます。
いつからなのか、なぜなのか
はっきりとしたことはわかりません。
息子の話を聞き、記憶を遡り
彼がどのように傷つき、精神を崩壊させていったか
想像して対処するしかないのです。
彼は小さい頃から本当に優しくて
ずっと母親である私を好きでいてくれます。
成人した今でも、調子が良いときは本当に
昔の小さい息子となんら変わらずに
私を大切にしてくれます。
初めて「双極性障害」と診断されたとき、
双極性障害がどういうものなのか
全くわかりませんでした。
ただ、その頃の彼の問題行動に
あてはめてみれば、双極性障害の「躁状態」で
あることは明らかでした。
最初の頃の問題行動では、
もしかして多重人格なんじゃないか、
もしくは、何か悪い霊に取りつかれているんじゃないか、
と本当に悩みました。
「双極性障害」と診断されてからは
馴染みはないけれど、調べて勉強したり
彼の様子をよく観察したりして
その時その時の困った出来事を対処していければ
何とかなるのではないかと思っていました。
彼の子供時代から今まで、
彼の深い傷を知らされるたびに、私の心は
ズタズタになりました。
今現在のことや、近い未来のことなら
何とか対処できるけれど、
過去の、もうどうすることもできないことを
ぽつりぽつり聞かされると
何故その時に助けてやれなかったのか、と
後悔と罪悪感でいっぱいになってしまいました。
息子は、母親の私を心配してくれるし
優しくしてくれるし、喜ばせようともしてくれます。
けれど、躁状態に移行するとき、
三白眼になり、私をまるで過去に苦しめた人たち、
「敵」として認識して
攻撃してきます。
暴力は振るいません。
ただ、私が自分の子供たちを大切にしている
ことを知っているので、大切な子供たちの中の
一人である息子自身に傷をつけます。
言葉で攻撃してくることもあります。
その言葉はとても冷たく、
まるでナイフのように私を突き刺します。
そのたびに私は、過去の小さい息子を
助けてあげられなかった母親の私を
責めているのだと思います。
もう10年くらいでしょうか、治療をしています。
少しずつ、少しずつ良い方向に向かって
いたあの日、薬を大量に飲んで
死にかけるということがありました。
救急車で運ばれた病院で、
意識が戻らなかったら覚悟するように
言われたときは、本当に目の前が真っ暗になりました。
運良く回復してこれたのですが、
治療はまた一からやり直しになってしまいました。
仕方がない。今までが順調すぎただけ。
そう思って、また一緒に頑張っています。
私が死ぬ前に
何とか寛解に持っていき、
自立できるようにしなくては。
「双極性障害」と診断されたあの日から
覚悟を決めて闘っています。
何度も言葉のナイフや
鋭い敵を見るような視線にも耐えながら
一日一日を大切に過ごしています。
それでも時々、
覚悟を決めたとはいっても、
心が折れてしまうことがあります。
私の傷や痛みは、
誰かに癒されることもありません。
親としての至らなさが招いたことと思っています。