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【#16】12年婚活して238人とお見合いした40過ぎの女がスピード婚した話|婚活より趣味を優先する男

~前回までのあらすじ~
渚は外資系勤務の男性と初回デートに進む。だが、彼のカジュアルすぎる服装に違和感を覚えた。それでも次の約束をしたが、連絡が途絶える。ようやく届いたメールは「サーフィンで忙しかった」という一言だった。

■どうしても気になる、彼の胸元


外資系の彼と2回目のデートが決まり、再びランチを共にすることになった。

待ち合わせ場所に現れた彼を見て、私は思わず「おや?」と思った。

大きなリュックサック、チェック柄のシャツに、胸毛がチラ見えのタンクトップ——

うん、前回とほぼ同じ服装である。

もちろん、毎回ファッションショーのように、違う服を着てほしいわけではない。

だが、結婚相談所の婚活であれば、男性の服装には一定のルールがある。「初回はスーツ(夏場でも襟付きのシャツを着用)、2回目は清潔感のあるきれいめカジュアル」がセオリーだ。「婚活は第一印象が大切」と言われるのは、こういう場面を想定しているのかもしれない。

「初回がカジュアル過ぎた分、2回目は少しきれいめな服装だったら、そのギャップにときめくかもしれない」と期待したのだが……。この時点で、少し冷静になった自分がいた。期待していた“外資系のスマートな男性”というイメージとは違うようだ。

アメリカ育ちだから、アメカジが定番なのかもしれない。
それはわかる。だが、それでも胸毛は隠してほしい。正直、どんな服よりも、そちらに目がいってしまうのだ。

そんなことを考えながら、ランチが始まった。

しかし、前回ほど話が弾まない。初対面のときは、お互いのバックグラウンドや海外生活の話など、聞きたいことも多く、それなりに盛り上がった。

だが、彼は外資系とは思えないほど自己主張をしないタイプで、積極的に話題を提供しないということもあり、二度目ともなると、新鮮な話題は尽きてしまった。

ふと、母親の介入で連絡が途絶えてしまった、大手通信会社の男性とのデートを思い出した。あのときは、自分から結婚観について切り込んでいったっけ。

だけど、今回はなぜか深い話をしたいとは思わなかった。

なぜだろう?
服装のせいか、胸毛のせいか、それとも単純に相性の問題なのか、
自分でも理由は分からない。ただ、確かなのはもう一度会いたい、という気持ちが湧いてこないということだった。

とはいえ、「可もなく不可もなく」のまま終わらせるのも後味が悪い気がする。決定打がないまま終わるより、もう一度会って、きっぱり答えを出したほうがいいかもしれない。

そう思い、私はダメ押しで3回目のデートに進むことにした。

■すれ違う優先順位


最後の1回を無駄にしないためにも、彼の人となりをもっと知れるようなデートをしよう。

そう考えて、私は鎌倉デートを提案するメールを送ってみた。寺巡りでもして歴史や文化に触れることで、彼の考え方や価値観が見えてくるかもしれない。

彼はすぐに「いいですね、そこに行きましょう」と快諾してくれた。

だが、その後に続いた一文に、私は内心「またか……」と思ってしまった。

「来週は毎年観戦しているモータースポーツの大会があって、泊まりで出かけるので、再来週でもいいですか?」

そう言えば、過去にも冬になると毎週のようにスノーボードや山登りに出かけ、デートを後回しにする男性に出会ったことがあった。しかも、山奥だから通信状況も悪く、帰ってくるまで次の約束ができなかったことを思い出した。

「趣味が充実している男性は魅力的」と言う人もいるが、それが度を超すと、どうしてもモヤモヤする。仕事が忙しいならまだしも、趣味が優先されると「私は二の次なのか」と思ってしまうからだ。このまま進んでも、私は趣味の隙間に組み込まれるだけになるかもしれない。

正直なところ、彼のことはなるべく早く決着をつけたかった。ここまで来て「この人と結婚を考えられるか」という確信が持てないまま引き延ばすのは、もどかしくて落ち着かない。

結婚相談所では、3回目のデートで本交際(真剣交際)に進むかどうかを決めるものだと言われている。それは、お互いの価値観やフィーリングが合うかどうか、十分に判断できる回数だからだ。

とはいえ、ここで食い下がるのも大人げない。彼にとってその大会とやらは、毎年恒例の大事なイベントなのだろう。それを邪魔するほどの関係でもない。

「分かりました。では、再来週にしましょう」と返信し、デートは再来週へと持ち越しになった。

だが、もし彼が私との関係を大切に思っていたなら、このタイミングで、『じゃあ、平日に一度会いましょうか』と言ってくれたかもしれない。
それがない時点で、答えはもう出ている気がする。

そして、この3回目のデートが、私に決定的な気づきをもたらすとは、この時の私はまだ知らなかった——。


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ライター稲村渚|婚活リアル体験記📖毎日更新
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