アート街プロジェクト〜大嶋玄という学生〜その②
前回に引き続き、「大嶋 玄(おおしま げん)」(以降玄)の「アート街プロジェクト」を特集する。
(前回の記事:https://note.com/lit4hiphop/n/nfaba4ddfc62b)
玄は、2017年よりネパールの貧困村をアートを用いて活性化させる「アート街プロジェクト」に着手し、約1年かけそのプロジェクトを完成させた。
<玄>
<ネパールアート街プロジェクト>
若干22歳にして世界を股にかけ活動する玄だが、彼のその原動力や、この活動を通して見据える世界像はどのようなものなのだろうか。以下はそのインタビュー記録をまとめたものである。
玄は大阪の某大学に通う大学4年生で、一見どこにでもいそうな爽やかな青年である。玄は幼少期より絵画を得意としており、高校時代は文化祭や体育祭の看板作成や、自作のTシャツを販売するなど、自身の芸術力を様々な機会に活かしていた。
しかし、高校卒業後の進路は美術大学を目指すわけではなく、現在通う一般私大に進学し、安定した生活を望む将来設計を立てていた。そんな彼の生活、将来設計はある団体との出会いから180度変わることとなる。
その団体とは、ネパールの貧困の子どもたちを支援する非営利団体「ネパールこどもクラブ」(以降NCC)である。この団体の代表と知り合って以降、台湾やインドネシアでのアートを用いて貧困村や廃村を活性化させた事例や、このような事例をネパールでもやってみたいという話をNCC代表と話し合ううちに、事はトントン拍子に進んでいった。
(NCC:https://www.facebook.com/nepalkodomoclub/)
しかし、実現までの道のりは決して易しいものではなかった。
NCCの支援を受けながら、2017年末からネパール視察を開始し、プロジェクトの対象となるタルー村の村長からもプロジェクト実行の許可を得たのだが、問題はその資金である。
インドネシアの虹の村「カンポンペランギ」にペイントを施した際、250万を要したように、ペンキ代だけでも100万円以上の予算が必要だったのだ。大学4年生にとって100万円という金額は大金である。
玄を筆頭としたプロジェクト・チームは、この資金問題をクラウド・ファンディングを通して解決した。
<資金調達達成時>
こうして資金調達に成功した玄たちプロジェクト・チームは、プロジェクトの開始から約1年をかけネパールで最貧困とされるタルー村のアート街化に成功した。
<村のビフォー・アフター>
このタルー村は首都のカトマンズから陸路で12時間も離れており、決してアクセスの良い場所ではないが、玄たちの活動がSNSで話題を呼び、少しずつではあるが観光客も村に足を運んでいるようである。
<観光客 / 地元新聞に取り上げられた際の記事>
ネパールでのアート街化を成功させた玄の活動はその後も絶え間なく続いている。2019年8月にはフィリピンのバジャウ族の村でも同様のプロジェクトを実施した。そして玄の活動が話題となり、玄のもとには世界の同様の村からペイントの依頼が入ってきている。
<セブアート街プロジェクト / バジャウ族>
そんなアート街プロジェクトを世界各地で展開し始めている玄だが、確固たる理念に基づきプロジェクトに取り組んでいる。その理念とは、以下2つである。
①アート街(プロジェクト)で世界の貧困問題の解決
②概念の浸透
まず、一つ目の「アート街(プロジェクト)で世界の貧困問題の解決」は字のごとく、ネパールの貧困村をはじめ、アートを用いてこのような貧困に苦しむ村の貧困問題を解決し、村民たちの暮らしの水準を向上させることである。
前回の事例で取り上げた台湾の虹の村でも、観光地として大成した同村には、観光客が訪れることにより新たな仕事及び雇用が生まれ、村の人々に恩恵がもたらされている。この事例からも想像がつくように、玄の活動によりネパールの貧困村に経済的発展に繋がる「きっかけ」が醸成されているのである。
二つ目の理念である「概念の浸透」とは、玄のような活動が世界に広まることにより、「ペンキ一つで様々な問題の解決が可能」という考えが浸透し得るという意味である。
「自分たちのような活動が世界に広まり、アートで世界各地の様々な問題が解決され、最終的に自分たちがアート街プロジェクトの活動をしなくてもよくなることがゴール(同様の活動を他者が世界各地で行うことで問題が解決される)」と若干22歳の若者は語る。
以上玄の活動に焦点を当て、2回に渡りアート街プロジェクトについて特集してきた。
本ブログはHip Hopと教育に特化したものであり、アート街プロジェクトとHip Hopの関連性に疑問を持つ者もいるかもしれない。
しかし、過去にも述べている通り、「Hip Hopは決して音楽の一ジャンルではない」。Hip Hopは、MC(ラップ)、DJ、ブレイクダンス、グラフィティの4大要素から構成される「文化・芸術的要素の総称」である。
そして、Hip Hopのグラフィティを含め、芸術性の高い壁画が景観保護、地域活性化を促進し、地域社会を「環境的調和」へと動かしている点は過去にも述べてきた。
玄の活動は、Hip Hopの4大要素に通底するものがあり、Hip Hop(グラフィティ)の持つ力・潜在性を見事に証明しているのである。そして、このような活動を通して成長している若者の姿に、筆者はHip Hopの教育的可能性を感じるのである。
今後も玄の活動から目が話せない。
(玄instagram @ https://www.instagram.com/0040gen/)
【同記事はアメブロに投稿した記事の再投稿である】
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