マスオくんの話

自閉症の青年が出てくるドラマを観た。
普段ドラマはほとんど観ない。
だが、たまたまそのドラマの第１話を見た時、一気に、完全に引き込まれてしまった。

ドラマを観ながら、ある少年を思い出していた。
当時小学3年生の男の子。
名前をマスオくん、とする。
マスオくんとは視線が合うことはなく、時折彼は彼だけの世界に入り込んでいることがあったが、会話はできた。
純粋でかわいらしい少年だった。

ある時、彼は浦島太郎の世界にいた。
ブツブツとお話を声に出して、その世界をたのしんでいた。
そしてふと、
「玉手箱を開けておじいさんになったマスオは、どうしたら元に戻れるの？」
と、聞いた。
わたしは不意にされたその質問がとてもかわいくて、ちょっとしたイタズラ心でこう答えた。
「さぁ？もう戻らへんのちゃう？」
するとマスオくんは驚いた顔で
「えええええ！？」
と言った。（そうです。あの感じです。想像できましたね？）
わたしはその反応がとてもかわいく感じたのだが、マスオくんはすごく困った顔をしていた。

今頃マスオくんはどんな青年になっているだろう。
ドラマの中のあの青年の姿にまだ少年だったマスオくんの姿を重ねて、観た。