20Actions!うちの子戦闘SS11「シャドウリングvsポテサラエルフ」
このSSは、戦闘描写の練習のために書かれたものです。二十行動を一つの流れで描写します。
ZANKZANK! 砂丘を模した仮想空間に、二人の少女が降り立つ。
「へえ、ここがVR空間ゆか」
一方は割烹着を着て、ぽてぽてとしている。彼女の名前はララモイ。種族はポテサラエルフ。ラ行の発音ができない。なんでもぐずぐずにしてしまう魔法を使う。
「ホントすごいよね。うわっ、抓ったらふつーに痛い」
もう一方は中東風の衣装に身を包んだ、スレンダーな娘であった。名前はツィール・ハフィー。種族はシャドウリング。影でできたような昏い肌は、仮想太陽の光を奪っている。
「じゃあ、今日はよろしくおねがいします!」
「うゆ。平和でも戦わなきゃ技が鈍ゆ。よしなに」
彼女たちの間の距離は、10メートル。
ララモイは杖代わりのポテトマッシャー(編注:鈍器の方)を構え、ツィールはホルスターからナイフを抜く。
仮想空間内に響く笛の音とともに、模擬戦が、始まった。
1その瞬間、ツィールは《影化》の能力を行使し、地面に潜る。2そして、ナイフに《エンチャント:パラライズ》を掛け、ララモイの方へ全力でダッシュする。
(ララモイちゃんの魔法は汎用性が高い。だから、そもそも射線を通さないように初手《影化》でごまかす……!)
3「ふっふっふ。開幕武器をぐずぐずにしようと思ってたゆが、方針変更ゆね」
ララモイはそう呟き、「gmound memt」と呪文を唱える。
4変化はすぐに表れた。ララモイの足元を除き、半径15メートルの地面が液状化し始めたのだ。
(地面がぐずぐずになるだけならまだ……!)
5「何節目で気づゆかね。“maye smone mayy”」
6次ぐ三単語で、液状化の外側に砂岩の城壁が立つ。
(内側でなくて外側? ……あっ、嫌な予感してきた! これ潜ってるとヤバい!)
7「次が本命ゆ」
ララモイは、更に呪文を唱える。
8そして「expmumion」という言葉とともに、砂埃が舞うほどの力でポテトマッシャーを地面に叩きつける!
9「ドッッッバァ!」という擬音とともに、液状化した地面が外側に弾け、城壁に叩きつけられる!
10砂の大波は荒れ狂い、しかし魔力が抜けるとすぐに最初の重さを取り戻していく。
11ララモイは満足そうにしている。「ふふ、流石にこんなんじゃアサシンは死なゆね。どう来ゆかな……?」
12 コンマ数秒の後。ララモイは目の色を変え、ポテトマッシャーを背後に振り抜く。すると、「カオン!」という音とともに、飛翔から全体重を載せたツィールのナイフが弾かれる!
13「接近できたらこっちのもの!」
ツィールはガードされた反動をも活かし、両手に持ったナイフでララモイに切り込んでいく!
14右、左。回転してもう一度左。砂塵に舞う花びらめいて連撃を加える。15ララモイはポテトマッシャーで防御するが、ツィールのダンスが加速するとともに数発がガードを抜けていく!
16(ゆゆ、麻痺エンチャかゆ。流石に付き合わゆ)ララモイはタイミングを見てマッシャーを強く押し出し、強引に弾いて隙を作ろうとする!
17「逃さないよ!」上に弾かれたツィールは、そのままキックで畳み掛ける!
18しかし。
「momentum memt」ララモイの呪文でそのキックの勢いは“ぐずぐずに”され、ポテトマッシャーに吸い付いてしまった。
(げっ……!)
19ララモイは、左手でツィールの軽い脚を掴み、振り上げる。
「処刑の時間ゆ」
20そして、振り下ろす。
「よいしょー!」
21叩きつけられるツィール。舞う砂埃。
「よいしょー!」
22持ち上げられ、また反対側に叩きつけられる。
「よいしょー!」「よいしょー!」「よいしょー!」「よいしょー!」「よいしょー!」………………。
◆◆
模擬戦後、カフェにて。
「ねえ、投げハメってありなの!?」
パフェを待ちながら、ツィールが詰問する。
「ユーユ(編注:ルール)読んだらできゆって書いてあったゆ」
一方のララモイは、ポテトサラダをあてにカフェオレを飲んでいる。
「はー! 甘かったのはウチだったかーっ!」
「んまあ、でも実際個人戦で麻痺にかかゆのはヤバかったゆ。あの状況なやカウンターでそのまま仕留めゆしかなかったゆ」
「でも負けは負けだしー!」
じたばたしていると、店員がやってきて“果実たくさんカラフルパフェ”をテーブルに載せていく。
「……付き合ってくえてあいがとゆ。ツーズーのやつは絡め手を使わぬかや、状態異常は久々だったゆ」
「こっちこそだよ! 付与術士的には特殊な魔法ってのは見ときたかったんだ!」
「ウィン・ウィンゆね。そういや、小凪葉に吹き込んだのは――」
少女たちの会話は、続く。