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アウフタクトを科学する

「アウフタクト」の曲は、なぜ、多くの日本人にとって難しいのか

ピアノのレッスンをしていて、「アウフタクトが得意!」、という人は割と少ないと感じています。西洋音楽は「舞曲」をルーツにしたものが多いこともあり、そもそも、その流れの中での身体の動きや呼吸、時間の使い方という大前提が、多くの場合共有されていないことがその原因に挙げられるのでは、と思います。

「アウフタクト」とは小節の頭ではなく、小節の途中から最初の音がスタートすることを言います。例えば4拍子の1拍目からではなく、4拍目から入るような場合のことで、上の写真のような始まり方をします。


難しさを例えてみると……

大縄跳びの輪の中に入っていくには、その回転の大きなリズムを身体で感じて、タイミングよくスッと入っていけばいいわけです。しかし音楽の場合、曲の冒頭にアウフタクトがあれば「すでにあるグルーブ」に入るのではなく、「自分がいきなりグルーブを作りながら始める」ことが要求されるため、一人で大縄跳びを始めるのは大変だ!……という感じでしょうか。


アウフタクトの目的

アウフタクトとはいかにして1拍目を大切に際立たせ、そこに意味を持たせるか、という作曲上の仕掛けの一つでもあります。これまで多くの方にレッスンをしてきて、その肝心の音が「1拍目」として上手く機能していない演奏が多い、と感じるのです。

正しく数えられているからと言ってアウフタクトになるわけではありません。時間の経過だけではなく、そこに音楽的なエネルギーが必要です。アウフタクトとしての役割を果たすには、一体何が足りないのか? 名手の演奏との違いは、具体的にどういうところにあるのか?

まずは様々な観点から観察して、小さな違いに目と耳を向けることから始めてみませんか?

そんなわけで、様々な楽曲のアウフタクトを例に、皆さんの演奏も聴き合いながら、素敵なアウフタクトの感じ方、乗り方、教え方にたどり着けるよう研究する時間を持ちたいと考えました。


樹原涼子のマスタークラスⅡ 始めます!

マスタークラスⅡの第1回 9/6(金)は「アウフタクトを科学する」と題して講義やミニレッスンをしていきます。アウフタクトは第何音から第何音に行くことが多いのか? 曲の途中に出てくるアウフタクトは? 関係する要素としてテンポ、音量、和声との関係なども考察してみたいと思います。
このクラス は、ピアノ音楽を考える上での問題提起として、私自身の考えを整理しながら皆さんと共有していく場になればと考えてスタートします。


すでに参加が決まっている方は、身近なピアノランドやブルクミュラーのアウフタクトの曲、ショパン、シューマンなどの曲でミニレッスンを希望されています。ミニレッスンは、曲全体を仕上げるのではなく、アウフタクトに特化したポイントレッスンです。


音楽の理論上はよく知っていることでも、
美しく演奏できない、
意味が伝わらない、
何か違う気がする、
そこをなんとかしたい、
ということがままあります。
演奏が垢抜けない原因はどこにあるのか?

それを追求しないで指を動かす練習だけしていても、
センスのよい演奏にある日偶然辿り着く、という奇跡は起こりません。


マスタークラスの中にミニレッスンを入れる理由

私のレッスンを受ける方からよく言われるのが、
「そういうことは考えたこともありませんでした」とか、
「なぜ、そうした方がいいのか、初めて理由がわかりました」
「どうしてそんなこと思いつくんですか?」笑、とか、
他のピアノの先生から指摘されたことがないことが多いのだそうです。

自分では比較できないのでわかりませんが、おそらく、それは私がピアノを教えているのではなく、作曲家として音楽を教える姿勢でピアノ曲を教えているからではないか、と思うのです。


他には、どんなテーマを取り上げるのか?


第2回は、「長いフレーズを歌う、とはどういうことか」というテーマを選びました。これも、アウフタクトと同じで、ピアノの先生方にとってわかってはいるけれど上手くできないことの上位に入ります。わかっていても息が続かない、音楽が細切れになる、魅力的に歌えない、という密かな悩み。

11月は休みますが、第3回 12月のテーマは「樹原涼子 大人のピアノクラス」の根本的考え方とは、と題して、今年2月から開催してきた大人ピアノクラスについてのノウハウを公開していきます。遠方にお住まいの方、様々な事情で当日おいでになれない方のために配信でご覧いただくこともできます。

その後のテーマは、こちらをどうぞ。


興味のある人、意欲のある人と一緒に勉強できたら幸いです!


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