夜中のかけ声、スープとパンの朝|イスタンブール
初めてのイスタンブール。
夜風に懐かしい東京を感じ、やっと着いたホテルのチャイに癒やされ、ほっと眠りにつく……
と、昨日の記事はいい感じに締めくくった。
ところが。その安寧は長くは続かなかった。
真夜中をとうに過ぎている時間、ホテルの近くが何やら騒がしい。
「ドドドドドドド」「カーン、カーン」
なんと、道路工事をしている。
窓を閉めていれば耳をふさぐほどうるさくはない。実際、夫も息子(一緒に来た)もすーすー寝息をたてていたし、私も夢うつつで音を聴いているといった感じではあった。
ただ、時折、作業員が「へっへーい」だの「あーーーう」みたいな声をかけ合う。これがけっこう気になって何度か目が覚めた。
朝7時過ぎに目が覚めたときには静かになっていたから、明け方には終わっていたのだろう。(幸い工事はその晩だけで助かった)
*
ホテルには朝食がついていなかった。
散歩がてら外に出てみる。歴史地区とも呼ばれる旧市街は、食べるところには困らない。
ホテルの通りから少し広い通りに出るとすぐ、気になる店が目に入った。
と同時に息子が「オレはここで食べようと思うけどどうする?」と言う。さすがわが息子。笑
カフェのようなものではなく、そこは食堂だった。地元の人たちで賑わう店だが、ちらほら観光客らしい人もいる。ドイツやイタリアではあまり見ることのない白色蛍光灯が光る。
カフェテリア形式といったらいいか、トレイを持って並ぶ。ガラスケースの向こうにはスープが数種類、肉や野菜を使ったお惣菜がいくつか並んでいて、欲しいものを指し示すとサーブしてくれる。
その先にはセルフサービスのサラダやヨーグルト、甘いお菓子、飲みものが並び、最後にカットされたパンが積んである。これがまたいい香りなのだ。
最後のお会計には電卓を持ったおじさんが座っていて、カタカタと計算してくれる。
普段のわが家の朝食はイタリア流に甘いもの系が中心だが、ここでは現地の方たちにならってスープとパンにした。
スープは少し塩気が強め。でも日中は夏の気温だ。これから働く人にはこのぐらいでちょうどいいのかもしれない。シンプルだがなんとも滋味深く、どこか懐かしい味だった。
そしてとにかくパンがおいしい。
特に手が込んでいるとかではなく、むしろただただシンプルな材料を最大限に活かすように焼き上げているといった感じで、とにかく小麦の香ばしさが際立っている。
ドイツのどっしりしたパンも、フランスのバゲットも大好きだし、イタリアのやはり小麦の香りのゆかしい素朴なパンも捨てがたいのだが、このパンにはぎゅっと心を掴まれた。
現地でいただく土地のものはだいたいおいしい。
しかしトルコのパンにはどこか特別な、遠くやさしい記憶のような魅力がある。
食べ終わるころに、店の人がニコニコとこんなものを持ってきてくれた。
どうもお手拭きのようだ。その場では使わなかったが、ありがたくいただいてきた。
このお手拭きが、あとで役立つことになる。