やはりこちらが私のハイジ
「アルプスの少女ハイジ」
多くの方がご存知だろう。
ここでいうのはスイスの作家ヨハンナ・スピリによる原作ではなく、日本でアニメ化された作品のほうだ。
1974年の制作ということで、私はおそらくそのときのテレビ放送を見ていたのだと思う。
このオープニングが強く心に残っている。まだ世界が今ほど近くなかった時代、遠い遠い、でも実在するアルプスの山々。この曲は未知の世界への扉でもあった。
その後、結婚してイタリアに渡り、そこでも日本発のアニメ「ハイジ」が人気だったことを知る。
当時イタリアでも流行りはじめていたビデオゲームやポータブルゲーム機は、「日本から来た得体の知れないもの」扱いされがちで少々肩身が狭かったが、ハイジに救われた。
90年代の終わりだったか、全話を収録したビデオが何部かに分けて(月に一度だったか)発売されたことがあり、義母が初巻を買っておいてくれた。
「わあ、懐かしいハイジ!」小さいころの記憶が蘇って心が浮き立った。……のだが、見始めてすぐ「これじゃない……」と、なんだか泣きそうに。
間違いなく高畑勲氏が演出を手がけたあの日本のハイジなのだが、オープニングの曲が違ったのだった。
イタリア語版はなんだか「ほんわか平和で牧歌的すぎる」気がしたのだ。
お時間があればこちらで聴いてみてほしい。
ちなみにフランス語版も曲は同じ。
ドイツ語版も同じ。(ロングバージョン)
物語の舞台はドイツ語圏だから、メロディはともかく語感からくる雰囲気はこちらが本家なのかもしれない。
日本のオープニング曲「おしえて」もアルプホルンにヨーデルと山要素満載で、聴くだけで山の景色が広がるようなサウンドだ。でも、どう表現すればいいかわからないが、「ひりっ」とするような空気感、胸がきゅっとするような切なさのようなものがあった。
欧州バージョンには、それがあまり感じられない。文字通り地続きなだけあって、アルプスは日常に紐づいているものだからなのかな、などと思ったりする。
しかし、話の内容を思い返せば、じつは牧歌的ないいエピソードだけが語られるわけではない。
おとなの頑さや身勝手さ、宿命や背負うものなども描かれ、ひとりの人間の中にも清濁さまざまなものが渦巻いているということをそっと見せてくれる作品のように思える。
そう考えると、日本バージョンがしっくりくるような気がするのだ。
私の思い入れや思い込みだけかもしれないですけどね。
ちなみに「おしえて」の歌唱は伊集加代子さんが担当されている。それがすばらしく映像とマッチしていることも大きいかもしれない。
伊集さんが2002年に歌われている映像も見つけた。なんとキーはそのまま!
2番、3番の歌詞も懐かしい。こちらもぜひ。
*ヘッダー写真はしばらく前にイタリアからの帰りに通ったハイジのふるさと「マイエンフェルト」です