路線バス3番のミステリー
ドイツ鉄道、近郊交通ともに、遅延や運休はもちろん「翌朝まで運休」「座席を予約したがその車両がない」など、あっと驚くあれこれが仕込まれていて、なかなか先が読めないアドベンチャーになることが多いのはこれまでもいろいろ書いてきた。
さあ、今回はバス編だ。
週末に所用で旧市街まで行った夫。帰りの道中で起こったできごとがこちら。
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旧市街の大きな教会前のバス停から自宅の最寄りのバス停までは乗り換えなしで約20分。
バスはほぼ時刻通りに来た。この路線を仮に「3番」とする。
ところがそのバス、ドアが開くと乗客全員が降ろされた。そこから回送になるらしい。
と、続いて同じく「3番」と表示されたバスがやってくる。めずらしく連携がちゃんとしてるな、と思ったという夫。
双方のバスの運転手は手短かに挨拶を交わし、前の3番は走り去った。
ところが、夫が乗った3番バスが走り出すと、途中で運転手がどこかとやりとりしている声が聞こえ、その後アナウンスが。
「えー、このバスはやっぱり『2番』になります」 ……そうきたか。
幸い、3番も2番も途中の中央駅までは同じルートを走る。
もちろん夫は中央駅で降りた。
週末は平日より運行本数が少ない。次のバスはいつ来るのかわからないが、まあそこで待つしかない。
と、それほど長くは待つことなく3番がやってきた。おお。
基本的にラッキーなことなのだが、これがまさかのミステリー!
やってきたバスの運転手に見覚えが。
なんと先ほど見送った回送バスの運転手だったのだという。駅に着いたときにはすでにかなりの人数が乗っていたそうだ。
「あのとき降ろされた人たちだった」としたらホラーだが、その人たちの顔や出で立ちは覚えていなかったらしい。
それにしても、いったい何だったのだろう。
バスの運行の乱れはよくあることだが、こうなるともはや不思議体験である。
不敵な笑みを浮かべ「トリック・オア・トリート」とつぶやく運転手の姿が思い浮かんだが、ハロウィンはもうその3日前に終わっていた。