わいわい食べるお弁当|冬のアルバイトの思い出
まだ世間がバブル景気に湧いていたころ、私は大学生だった。
東京の祖父母宅に居候していたこともあり、贅沢をせず地味に学生生活を送る分にはそれほど困ることはなかった。
それでも部活動の合宿の費用や、家族へのちょっとしたプレゼント代は自分で調達したいという思いもあって、いわゆる単発アルバイトをいくつかしたことがある。
12月のこの時期に部活動の仲間たちと連れ立って数日通ったのは、晴海埠頭。
某宅配会社の物流センターでの仕分けの仕事だ。お歳暮や離れた家族への小包などで流通量が大幅に増えることを見越しての採用だったと思われる。
朝は少し早めの8時から。途中、昼と午前午後1回ずつの休憩が入って、17時までだった。お弁当がついて日給は1万円。
事前に「一応建物の中ではあるものの、外気の通る場所なので、防寒をしっかりしてきてください」とお知らせがあり、なんだかイベント的に盛り上がってあれこれ着込んで行った記憶がある。
重い荷物を持ち上げて運ぶ、というものではなく、コンベアに流れてくるものを行き先ごとに分けたり、伝票をまとめたりと、ときどき場所を交代しながら進めていく。
別の大学のグループとも仲良くなったりしてワイワイやっているところに若い社員も混じって盛り上がる。いま振り返ると「時代の勢い」のようなものだったのかもしれない。
お昼にはまだほんのり温かいお弁当に熱いお茶。至福の時間だ。
仲間の誰かが持ってきたポッキーが、ことのほかおいしく感じられた。
いつものnoteの流れだと、このあたりでなにやら事件が起こりそうだが、特にない。笑
みんなで都バスに乗り、華やいだ街に戻ると、心地よい疲れと充実感があった。
今でも鼻がツーンとするような寒い朝には、あの冬の匂いがする。