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アルプスを越えると
イタリアからドイツに戻るときは、決まって途中から雲行きが怪しくなる。
アルプスの山々が、それによって隔てられたあちらとこちらの気候を大きく変えるようだ。
今回はそれが笑ってしまうほど華麗に、有無を言わさず、そして頑然と遂行された。
ミラノを出発し北上。スイスに入ってもお天気がよかったことから、長い長いゴッタルドトンネルを通る一般的なコースから少し外れ、サン・ベルナルディーノ峠を越えるルートを選択した。
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峠の付近でイタリア語圏からドイツ語圏に変わる
ることに伴い、地名も変わる。
車は順調に走行。険しい山岳地帯を過ぎても交通量は多くなく、心地よいカーブが続く。
パニーノでお腹が満たされたこともあり、眠くなる。後部座席で目を閉じた。エンジン音を聞きながら、深く呼吸する。吸って……はいて...…
何度目かに目を開けてみて驚いた。
外がまったくの別世界に変わっていた。
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目を瞑っていたのはほんの短い時間のつもりだったが、実際は眠り込んでいたのだろうか。
いや、そんなことはなかったのだ。
私が上の写真を撮った3分前に次女が撮った写真をご覧いただきたい。
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青空、そして頂上に少しだけ雪をいただいた山々が見え、その手前に低い雲のかたまりのようなものが立ち込めている。
これがまさに壁のようになっていて、そこに向かって飛び込んでいくような感じだったらしい。
霧の濃いときには、こういった壁のようなかたまりが出現することも多いが、だいたいは局地的なものだ。それがこのときはその後ずっと家に着くまでほぼこの状態だった。
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ドイツに戻って2日。いまだ青空は一片も見ていないし、気温はひと時たりともプラスになっていない。
きょう日曜日の予報はこんなだ。
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そして以降は…
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年の暮れとお正月に若干気温が上がるものの、予報が当たれば、久々の寒さとなる。
マイナス15℃は10年ぶりぐらいではないだろうか。
「もぉぉ…」と言いながら、こんな天気にもどことなく落ち着きを感じる自分もいる。
ドイツもまた自分の「ホーム」となっていることを実感する年末だ。