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はじめまして、イスタンブール|どこか懐かしい夜風

出発まではいろいろあったが、飛行機はイスタンブールに向けて順調に進んだ。

あとでフライトログを見てみると、遅延のない日は3時間から3時間半かけて飛んでいるのが、その日は2時間20分とだいぶ急いだようだ。

ドイツを出て南東へ。オーストリア、スロヴェニア、クロアチア上空を飛んでいく。セルビアに入るころから雲が切れてきた。
知らない国の森が見え、切り分けられたような農地が見え、蛇行する川が見える。そしてその両岸には小さな町が点在する。

雲が影を落とす町の人たちには曇り空が見えているだろう。でも、その雲の上側は、夕方の光に照らされて優しい色に染まっている。それを伝えたいという気持ちが浮かんだ。もしかしたら私たちの住む上空を飛ぶ誰かも同じように思っていてくれるんじゃないかな。それは少し心を温めてくれた。

ブルガリアに入ったあたりで急に暗くなった。まるで夜の世界に飛び込んでいくように。これは東に向かって飛んでいるときの特徴だ。

そろそろ到着。飛行機は高度を下げ、イスタンブールの街並みが近くなってくる。

サビハ・ギョクチェン空港に着陸したのは現地時間の20時半。(日本とは6時間の時差)
3つある空港のうちいちばん東、アジア側にある新しい空港だ。

その時間帯は到着便が多いらしく、入国審査の長い列があった。
わりと無愛想で強面の審査官が多いなか、私の並んだ列の担当はアジア顔の穏やかな雰囲気の方でほっとする。


そこから歴史地区(旧市街)までは地下鉄を乗り継いで1時間半。
まずは「M4」に乗る。

この地下鉄がとにかく飛ばす。音が大きいせいもあるかもしれないが「爆走」といった雰囲気で最初はかなり怖く感じた。(すぐ慣れる)

乗り換えの駅は地上にあった。
ホームに降りると、空気の感じがなぜかとても懐かしい。海に近い大都市特有の空気というのだろうか。そう、東京に似ているのだった。
日中の夏の暑さも夜になると和らぎ、少し冷やされた空気の柔らかな湿度に包みこまれる。大きく深呼吸すると鼻の奥がツンとした。
ホテルの最寄りの駅は地下深くにあって、長いエレベーターをいくつか乗り継がなければならない。これも地下鉄永田町駅とよく似ているのだった。


こうして宿に着いたのは23時近く。
家族経営らしいホテルのレセプションには若い青年がいて、こうしてチャイで出迎えてくれた。

思いのほか長旅になったこともあって、その晩は心地よい疲れとともに眠りについた。

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