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一瞬のモテ期!?|バスの中で

とある定期検診のため旧市街のクリニックへ行ってきた。
帰りのバスは立っている人はいないがほぼ満席、という状況だ。金曜日のお昼すぎのことである。

通常、この時間は中高生がたくさん乗っていることが多いが、なぜかこの時の車内はご高齢の方がほとんど。
4人がけのボックスシートの通路側の一席が空いていたので座る。
私の前には杖を持った長身で白髪のおばあさま、窓側に向かい合わせで座っているのはご夫妻らしい。髪をきっちりオールバックにしているセントバーナード風の顔立ちのご主人と、ロシアのエリツィン元大統領に似た奥さまで、どちらも私より縦横ふたまわりほど大きくていらっしゃる。ドイツの方としてはまあ普通と言っていい。(スイスとかロシアかもですが)

途中、中央駅の停留所で多くの人が降りる。
窓際のご夫妻も降車の様子だったので、私は立ち上がって通路に出て道をあけた。
空いた窓際に座ろうと戻りかけたとき、コートに何か引っかかりを感じた。
振り向くと、すぐ後ろの二人がけの座席に座るハンチング帽に杖を持ったおじいさまが、私のコートの裾を掴んで引っ張っているのだった。
ここにお座りなさい、とばかりに自分の隣の空いた座席を手のひらでぽんぽんと叩いている。

「いや、結構です」といってボックスシートに戻るのもなんだか感じが悪いような気がしてそちらに座ろうとすると、通路を挟んだ向こうの二人がけシートにいるもうひとりのおじいさまが小さく首を振り、同じように自分の隣の座席をぽんぽんと叩いて「ここどうぞ」と言う。
おふたりは知り合いでふざけ合っているのかも、とも思ったが、そうではないらしい。
はて、何が起こっているのか。私に何らかのおじいさん限定親切誘引トリガーが発動しているのだろうか。

もう座りかけていたこともあって、結局、私はお二方どちらにも会釈したのち、ハンチング帽のおじいさんの隣に座った。その様子を長身で白髪のおばあさまがずっと無表情に見ていらして少しシュールな画となった。

もしかして、この数日の間にテレビのドキュメンタリーでもあったのではないだろうか。アジア人女性についてのいい話、もしくはかわいそうな話とか。
テレビとは無縁な生活でわからないが、けっこうあり得るのではないかと思っている。


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