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申請書、苦難の先に|オンラインでのやりとり

今朝、イタリア方面家族で構成されるグループチャットに夫がこんな記事を載せた。

ざっくり言うと、コンピューターを乗っ取ろうと高齢者に電話して指示を出す詐欺師を「AIおばあさん」が要領を得ないのらりくらりとしたやりとりでイライラさせ、撃退するといった内容だ。
例えば詐欺師はアプリをダウンロードさせようと試みるが、目が見えづらいとかアイコンがわからないなどひとつひとつに時間がかかり至難の業となる。

「私もITまわりのことには詳しいわけではなく、他人事ではない」と最初に申し添えておいての話なのだが、じつは最近、日本の実家の父と「息子+私チーム」の間で似たような壮大なやりとりがあった。きょうはそのお話を。

もちろん、自分の親に対して詐欺をはたらくつもりはない。
息子が日本で新生活を始めるにあたり戸籍謄本が必要になり、本籍地のある市役所への郵送申請をしてもらうよう父にお願いしたことに端を発する。

あらかじめ申請書はこちらでダウンロードして息子が必要事項を記入。それをスキャンして父のメールアドレス宛に送った。あちらで印刷をお願いしようというわけだ。
一連の手続き(申請書と定額小為替、切手を貼った返信用封筒を同封して送付)は何度かお願いしたこともあり、毎回、問題なくできている。

今回の難題は「メールを開くこと」だった。
SNSの普及により、父とのやりとりにメールは久しく使っていない。
そもそもキャリアが変わるたびに謎のメールアドレスが増えていて、本人も把握しきれていない様子だ。
それでも、一番最初に取得して以来、メインで使っていたhotmail(outlook)のアドレスはなんとかなるのではないかと、LINEのビデオ通話でつないでの挑戦が始まった。

通信状態が不安定なのか、ビデオ通話がうまくいかない。画像が止まったり、音が途切れたり。
というか、父、ビデオ通話とはわかっていなかったようで、スマホはキーボードのそばに上向きに置かれたまま。
顔を真下から撮っている形になり、こちらの画面には父の首から顎にかけての筋と、その先に弓形の唇と鼻の穴が二つ見えるだけ。人も真下から見ると宇宙人っぽい。

それでは意味がないので、音声通話に切り替える。

まずはラップトップが生きているのかの確認から。
「最近は天気予報ぐらいしか見ないな」と言う。話を聞くと、どうもブラウザは使えているようだ。
「ネットの会社(プロバイダー)を替えたからメールが使えなくなったんだ」とか言っている父に危うくキレそうになる私とは対照的に、息子は冷静に話を聞き、ひとつひとつ丁寧に説明していく。
かくかくしかじかあり、やっとhotmail(outlook)のログインページまで辿り着いた。

メールアドレス(父の)を一文字ずつスペルアウトして入力してもらう。
次なる問題はパスワードだ。これは以前、その再取得を手伝ったときに息子が控えていたものに賭ける。
なんと!当たっていたようだ。
ところが、2段階認証が必要、ということになっていた。その確認アドレスは息子のもの。なぜかヤツはほとんど使っていないメールアドレスにしていたらしい。

「あれ……?」  
もちろん息子はパスワードを覚えていない。
「うおおおお」と、ふたりで床に転がってしまった。
絶望的と思われたが、なんとか思い出して認証ができたのは幸いだった。
こうして父は久しぶりに自身のメールに入れた。

「やっっったー!」と、ロケット打ち上げ成功の時の管制室のように盛り上がったのだが、喜びも束の間、さらなる問題が。(もうたいして焦らない)
どういうわけか息子の送ったメールは届いていないという。
しばらくあーでもないこーでもないとやっていたが、なんと、受信トレイの並び順が「新着順」ではなく「アルファベット順」になっていたのが判明。そんな人いる?

ここまで電話開始から約1時間。
ともあれ、メールに添付されていた申請書は無事に印刷され、めでたく本籍地の市役所に手数料の定額小為替や切手を貼った返信用封筒とともに送付された。


すでに戸籍謄本も手元に届き、おそらく各種手続きも済んでいる(んだろうな)と思われ、晴々とした心持ちでいたが、一昨日、偶然こんなお知らせを見つけた。
どうも昨年から、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍の証明書の請求ができるようになっていたようだ。(疲れ)


まあ、なかなかスリルと達成感のある時間だったし、普段は反応に乏しく情緒が極めて低め安定な息子も盛り上がったということで、今回はよしとしよう。



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