坂本龍一さんと最後のメリークリスマス
坂本龍一さんの最後のピアノソロコンサート作品『Opus』
教授の音楽をちゃんと聴いて大好きになったのは、20代の初めごろ。
何年も何年も、家でも歩きながらでも毎日ずっと聴いていたし、
憧れだったコンサートにも何度か行った。
ソロコンサートだったり、トリオだったり、海外の配信公演を観たり。
そのいずれにも共通する、1音1音を包み込むようにピアノを弾く教授のあの姿が、いまも記憶に残ってる。
今回リリースされた最後のアルバム『Opus』は、本人もこれが最後かもと意識して演奏したとあって、ものすごく感情を揺さぶる演奏になってる。
生きてきた時間や、
死が間近にあること。
きっといろんなことに想いを馳せながら、感じながら、演奏したんだろうなということを感じさせる、とても、とても深い音だった。
何度となく聴いた、「Merry Christmas Mr.Lawrence」
教授が亡くなるまではごく当たり前に聴いていたこの曲も、今回の演奏が最後なんだと思うと、深い悲しさが込み上げてきた。
自分に影響を与えた人もいつか必ず亡くなっていく。
大好きだったアーティストや、映画監督や。
坂本龍一さんが闘病してることは知っていたし、きっとそう長くないかもしれないとは思ってた。
でも訃報を知ったときは、初めて、自分のなかから一つ何かが抜けてしまった感覚があった。
大きなものが、抜け落ちた。
わたしにとって初めての、影響を受けたアーティストの死だったと思う。
すばらしい作品を遺してくれたこと、
たくさんの名曲でわたしの感受性を養ってくれたこと、
感謝してもしきれない。
教授の音楽が、わたしの文化を築き、拡げてくれました。
本当にありがとうございました。
ーー坂本龍一『Opus』に寄せて