【キャリア情報】アジア経済研究所開発スクール:国際開発・開発経済に関心がある方向けの短期研修プログラム
本稿では、アジア経済研究所開発スクール(Institute of Developing Economies Advanced School:IDEAS)について紹介します。
はじめにアジア経済研究所とIDEASについて簡単に記していますが、研修内容の詳細については目次以降で説明しています。
アジア経済研究所(アジ研)とは、経済産業省が所管する日本貿易振興機構(Japan External Trade Organization:JETRO)の研究所です。1998年にJETROと統合されて以降は千葉県千葉市幕張新都心(1999年12月1日に移転)にあります。本研究所の活動はアジア、アフリカ、ラテンアメリカ、中東、東欧にある開発途上国の経済、貿易、開発援助について調査することで、「開発途上国研究の拠点」です。
IDEASとは、本研究所が提供する短期集中型研修プログラムとなります。プログラムの目的は経済・開発分野の専門的人材の育成にあり、長年、開発途上国の中堅・若手行政官も招聘してきました。カリキュラムは修士レベルで設計されており、講義および指導は英語によるものです。
そのため、本プログラムのポイントは1)開発途上国の官僚と2)英語で学び、3)修士レベルの専門的な学習が行えることでしょう。また、日本人受講生については、1つの例として、開発分野で海外大学院へ進学される方が想定されています。もちろん、すでに同様の分野で働かれている方々がキャリア形成の一部として研修しにきている例も多くあるので、さまざまな人々に開かれたプログラムでしょう。
最後に、過去のデータでは多くの修了生がその後国際機関や政府機関、コンサル、NGOへの就職を果たしています。詳しくは「修了生の進路」を参照ください。
なお、アジ研は本プログラムの他に、オンライン講座や対面ワークショップも定期的に実施しているので、関心のある方はご確認ください。
*リンク:
1、https://www.ide.go.jp/Japanese/Info.html
2、https://www.ide.go.jp/Japanese/Ideas.html
研修概要
応募資格
修士以上の学歴もしくは同等の経験を持つ方(専攻分野不問)(*事前説明会によれば、修士号を取得していなくても、英語で論文やレポートを執筆した経験が学部等であり、現在もその能力を有する方も受講できるようです。→応募資格3に関連)
研修カリキュラムの分野に高い学習意欲があり、プログラムに積極的に参加する意思がある方
英語での授業に参加する十分な英語力を持つ方(TOEFL iBTスコア88以上が望ましい)
研修期間
例年9月から1月までの約5ヶ月間(要確認)
研修コース・コマ数・募集人数
研修コースは4つあり、海外の修士課程でみられるResearch(講義と論文執筆)かCoursework(講義のみ)の種類に分けられます。ResearchはAコースのみです。
1、Aコース:全科(講義+論文)/45コマ/10名
2、Bコース:全科(講義)/45コマ/5名
3、Cコース:選科(貿易投資関連科目の講義のみ)/15コマ/10名
4、Dコース:選科(社会経済開発関連科目の講義のみ)/15コマ/10名
研修内容
下記の研修内容は、上記の受講するコースにより、それらの組み合わせが異なりますのでご注意ください。(e.g 下記すべての内容に取り組むのはAコースのみです。)
・2つの講義群
1、貿易投資関連科目(15コマあるいは20コマ)
2、社会経済開発関連科目(15コマあるいは20コマ)
・グループワーク(5コマ)
・ゼミナール(10コマ)
・論文執筆(1本/英語4000-6000ワード)
・レポート執筆(1本あるいは3本/1本あたり英語2000ワード)
研修内容の組み合わせ
Aコース:全科(講義+論文)(計45コマ)
・貿易投資関連科目(15コマ)
・社会経済開発関連科目(15コマ)
・グループワーク(5コマ)
・ゼミナール(10コマ)
・論文執筆(1本)
・レポート執筆(1本)
Bコース:全科(講義)(計45コマ)
・貿易投資関連科目(20コマ)
・社会経済開発関連科目(20コマ)
・グループワーク(5コマ)
・ゼミナール(なし)
・論文執筆(なし)
・レポート執筆(3本)
Cコース:選科(貿易投資関連科目の講義のみ)(計15コマ)
・貿易投資関連科目(15コマ)
・社会経済開発関連科目(なし)
・グループワーク(なし)
・ゼミナール(なし)
・論文執筆(なし)
・レポート執筆(1本)
Dコース:選科(社会経済開発関連科目の講義のみ)(計15コマ)
・貿易投資関連科目(なし)
・社会経済開発関連科目(15コマ)
・グループワーク(なし)
・ゼミナール(なし)
・論文執筆(なし)
・レポート執筆(1本)
受講方法
・原則オンラインで開催
・対面講義も実施される場合があり、その場合は対面での出席が推奨
・講義の他に対面プログラムも開催(ネットワーキングの機会として実施)
研修費用
・全科(Aコース、Bコース):各97,000円
・選科(Cコース、Dコース):各32,000円
公募時期および選考
公募は例年6月に始まり、7月上旬の締め切りのようです。(要確認)
選考は次のとおりです。
・全科コース:書類選考と英語によるオンライン面接
・選科コース:書類選考(応募者が多数の場合は、事務局において抽選を行い、受講者を決定)
修了生の進路(1990年〜2018年の過去のデータ)
国際機関:
• アジア開発銀行(ADB)5名 • 欧州復興開発銀行(EBRD)1名 • 世界銀行グループ9名 • 米州開発銀行(IDB)1名 • 国際労働機関(ILO)1名 • 国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)1名 • 国連開発計画(UNDP)1名 • 国連環境計画(UNEP)1名 • 国連児童基金(UNICEF)2名 • 国連人口基金(UNFPA)1名 • 国連世界食糧機関(WFP)5名 • 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)3名 • 国連西アジア経済社会委員会(UNESCWA)1名 • 国連本部 1名 • UN Women 1名 • アセアン事務局1名 • 国際移住機関(IOM)1名 • 日本アセアンセンター1名
政府機関:
• 外務省(職員または在外公館勤務)8名 • 国土交通省 1名 • 衆議院決算行政監視委員会 1名 • 文部科学省 1名 • 国際協力機構(JICA:職員、専門家等)36名 • 国際協力銀行 2名 • トルコ共和国大使館 1名 • 日本国際問題研究所 1名 • 日本スポーツ振興センター 1名 • 日本政策投資銀行 1名 • 日本貿易振興機構(JETRO)9名(うちアジア経済研究所(6名)) • 日本貿易保険 1名 • 地方自治体 3名
コンサル等:
• アイ・シー・ネット 2名 • アクセンチュア 2名 • アジア航測 1名 • アルメックVPI 2名 • インテージ 1名 • A. T. Kearney 1名 • エルミ・ツアー・エチオピア 1名 • OPMAC 4名 • オリエンタルコンサルタンツ 1名 • 環境機器 1名 • クラウンエージェンツ 1名 • グローバルリンクマネージメント(GLM) 2名 • コーエイ総合研究所(KRI)7名 • 国際開発機構(FASID)1名 • 国際開発センター(IDCJ)6名 • 国際航業 2名 • システム科学コンサルタンツ 1名 • 住友グローバルリサーチ 1名 • タックインターナショナル 1名 • デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム 1名 • 日本国際協力システム 1名 • 日本総合研究所 1名 • VSOC 1名 • 平成会計社(ベトナム)1名 • 三井物産 1名 • 毛利建築設計事務所 1名
NGO:
• RCF復興支援チーム 1名 • アライアンス・フォーラム財団 1名 • SRI International 1名 • 沖縄環境クラブ 1名 • オリナス・パートナーズ 1名 • 海外農業開発協会 1名 • クロスフィールズ 1名 • 国境なき子どもたち 2名 • 国際連合世界食糧計画WFP協会 1名 • シャンティ国際ボランティア会(SVA)1名 • ジョイセフ 1名 • スーダン障害者教育支援の会 1名 • セーブ・ザ・チルドレン 2名 • チャイルド・ファンド・ジャパン 1名 • MEFA Management 1名 • 日本ユニセフ協会 3名 • パレスチナ子どものキャンペーン 1名 • ホサナファミリークリニック 1名 • ユリーカ・ジャポン 1名 • ワールドビジョン・ジャパン 1名
大学院在学中:
24名
その他参考資料
2019年度と2022年度の実施報告書が見つかったので、掲載します。
担当講師の詳細、参加者の内訳、講義内容、過去の受入実績等が示されています。
2019年度:https://www.ide.go.jp/library/Japanese/Info/Profile/Nenpo/pdf/31_6.pdf
2022年度:https://www.ide.go.jp/library/Japanese/Info/Profile/Nenpo/pdf/4_6.pdf
Note
本プログラムの講師陣は多くがアジ研の研究者なので、ほとんど大学院のような印象を受けます。その点、やはりポイントは5ヶ月ほどの短期間で知識を深めて論文まで書くという点でしょうか。すでに修士号を取得しており、新しく開発経済や開発援助の知識を学術的に得たい方々には優れているようにみえます。その後のキャリアの発展にもつながるインパクトもありそうです。また、半年以内でオンラインで修了できるのであれば、離職をせずに受講できる可能性もありますから、大学院よりも気軽に挑戦できる点もありそうです。
一つ不明な点は、コマ数=単位数になるのかということでしょうか。この点は、機会があれば問い合わせてみたいと思います。
ちなみに、個人的にアジ研と聞くと、図書館を真っ先に思いつきます。私は学部時代にこの図書館へ文献収集のためによく通っていましたが、保有する図書の数はずば抜けており、途上国研究をされている方には最適な環境が整っています。
本稿で紹介した内容の最新情報は常時ご自身でご確認ください。