派遣先を変えずに派遣会社を変えることはできるの?!他の派遣会社の方が時給が高い。。。具体的な方法、手順、注意ポイントを徹底解説!!
「派遣先を変えずに派遣会社を変えたいんですけどできますか?!」という質問が寄せられます
その理由は、他の派遣会社の方が時給が良い、福利厚生が充実している、今の派遣担当者の対応が適当で信用できない、など
この記事では、派遣会社を乗り換えることができるのか?!他のサイトでは説明されない具体的な実例を元にその方法、手順を実践形式で丁寧に解説していきます
この記事で分かること
・派遣先を変えずに派遣会社を乗り換えることはできるのか?!
・派遣会社を乗り換える条件、方法、手順(実例をもとに)
・派遣会社を乗り換える際の注意点
この記事では、派遣会社をただ変えるのではなく、同じ派遣先(職場)に務めながら派遣会社を乗り換えることについて、解説しています
派遣先を変えずに派遣会社を変えることはできるのか?!
まず、初めにお伝えしますが、派遣会社を乗り換えることは非常にデリケートな事案になります
3者(派遣先、派遣会社、移籍する派遣会社)が関係するので、簡単にでき得るものではありません
それを踏まえた上で、労働者派遣法によるところから、実際の現場での実例について見ていきましょう
労働者派遣法の規定について
※特定目的行為の禁止について(厚労省資料)
労働者派遣法においては、派遣社員を特定して派遣することはできない、ことになっています
つまり、派遣先が派遣元に「○○さんを派遣してください」と指定することはできないのです
今回の事案で例えると、派遣会社A社から派遣会社B社に乗り換える時に、派遣先は派遣会社B社に「○○さんを継続して派遣してもらいたい」とは言えないわけであります
※紹介予定派遣は例外
労働者派遣法においては、上記のような規定が存在しています
実情として派遣会社の乗り換えはできている?!
派遣法においては、派遣社員を特定し派遣することができないことは分かりましたが、実際には派遣会社の乗り換えは行われていないのでしょうか?!
答えは、「実際は様々な派遣先で行われている」です
実際、【職場見学、顔合わせ】においても、派遣先からは「○○さんを受け入れます」という特定目的行為を行っている状況がありますので、それを行ったからといってお咎めはないのが実情です
つまり、労働者派遣法においては禁止されているけど、実際は行われているということですね
派遣会社を乗り換えたくなる4つの理由
それでは、派遣社員の方が派遣会社を乗り換えたくなる時、どのような理由が発生しているのでしょう
他の派遣会社の方が時給、福利厚生が良い
1番多くある乗り換え理由の一つは、「他の派遣会社の方が時給、待遇が良いから」です
同じ職場、同じ仕事をしていて、複数の派遣会社が混在していることは良くあるケースです
大手製造メーカーでは、20社以上の派遣会社を活用していて、同じ職場、同じ業務を行っているケースがあります。
各会社毎に、時給、待遇(交通費、食事支給等)、福利厚生に違いがあります
どうせ同じ業務を行っているのであれば、より高い時給、良い待遇で働きたいと思うのが普通です
また福利厚生についても、昨今、派遣法の改定により、派遣元に課される義務が増えてきています
それは派遣社員の待遇をサポートする内容です
派遣会社によって、大きな違いが出てきています
派遣会社も昨今の人手不足から、登録数を増やす為に自社の福利厚生で差別化を試みようと力を入れている状況です
※キャリア形成支援制度、キャリアコンサルティング(厚生労働省資料)
派遣会社、派遣担当者が信用できない
派遣会社、派遣担当者の対応が適当で信用できない
この理由も派遣会社を乗り換えたい大きな理由の一つとして挙げられます
派遣担当者と連絡がつきにくい
電話しても出なく折り返しがない
頼んだ仕事をしてくれない
いい加減なやり方(書類の不備)をされる
全く職場に顔を出さない
フォローが全然ない
派遣先の言いなりでこちらの主張を聞いてくれない、等
※派遣担当者を変更したいはこちらから詳細を確認できます
派遣社員として業務の内容以外での不満理由は上記のような事象が挙げられます
派遣先にとっても、派遣社員と派遣会社との信頼関係は良いものでいて欲しいところです
派遣先は派遣社員に「できる限り仕事に集中して気持ちよく働いてもらいたい」と思っています
しばしば、派遣先社員が派遣社員の愚痴(自身の派遣会社の悪口)を聞いているケースを見かけます
実際、私が担当していた派遣先においても、ある派遣会社の対応が不満でその派遣会社から私の派遣会社へ移籍してきた派遣社員の方も大勢いらっしゃいました
その多くは、派遣担当者の対応の悪さ、信用ができない、という理由でありました
派遣先で同じ派遣会社は1人しかいない、ハブにされる
実際あった例として、同じ派遣先に派遣会社が3社入っていて、A社20人、B社15人、C社1人という構成がありました
その際、C社の1人が職場で孤立してしまって、さみしい思いをしているケースがありました
具体的には、休憩時間は1人で過ごしていて、お昼ご飯も1人で食べていました。。。
そのC社の1人がA社への移籍を希望しました
C社の1人は仕事の評価、勤怠と共に良く、派遣先としては継続して働いてもらいたいという希望でした
派遣先もその理由を真摯に受け止め、派遣元に相談し、C社の1人はA社へ移籍する運びとなりました
上記事象は実際にあった例ですが、派遣業界では同じ派遣会社同士で徒党を組み、派閥が形成されることは良くあるケースです
その派閥から逸脱してしまう派遣社員は孤立してしまい、孤独でさみしい思いをしている状況があります
※いじめに発展するケースもあります
派遣会社のシステムが煩わしい、自身の都合に合わない
派遣会社によっては、業務報告、出勤簿の打刻の仕方、に違いがあります
毎日、仕事を終えるたびに細かな業務報告を求められる会社も存在します
派遣会社によって、派遣社員の管理の仕方に違いがあり、派遣社員がそのシステムに対し、煩わしく感じていることがあります
また給料の締日、支払日も派遣会社によって様々です
自身の公共料金の引き落としやお金の工面の関係で、都合が悪い日程もあります
また細かいところで、住民税の特別徴収(派遣会社から天引きされる)を実施できる会社、できない会社があります
自身の都合に合う派遣会社を選択したい、というのも理由の一つになります
派遣会社を乗り換える際のメリット、デメリット
派遣会社を乗り換える際のメリット、デメリットについて見ていきましょう
派遣会社を乗り換える際のメリット
■時給、待遇改善される
派遣会社を乗り換えたく理由で1番多いのが「時給を改善させたい!」です
派遣社員の同一労働同一賃金制度がありますが、各々の派遣会社によって時給額は調整されます
※【無料の時給診断アンケート】はこちら
派遣会社Aと派遣会社Bでは、同じ職場、同じ業務において時給が違うことは良くあります
実際見てきたケースとしては同じ仕事なのにも関わらず、派遣会社によって300円以上違うケースもありました
派遣時給に関しては、派遣社員同士、あまり公表をしたがらないことではありますが、仲の良い関係や、求人募集内容を見て、その金額が明確になるケースがあります
時給、待遇が良い派遣会社に乗り換えたい、と思うことはごくごく一般的なことです
■担当者のフォローアップが充実される
派遣会社が変わることは派遣担当者が変わることです
派遣担当者に不満があり、信用できないことが理由で派遣会社を乗り換えた場合、その派遣社員の満足度は上がります
乗り換えた先の派遣担当者もその理由で移籍してきているので、より親切丁寧な対応を心がけることでしょう
派遣先としても、「派遣社員には仕事に集中して精一杯業務に邁進してもらいたい」と考えていますので、派遣担当者への不満解消がその一役となり、安心することでしょう
派遣社員としてもそのストレスから解放されるので、より業務に集中できる環境で仕事ができます
※【派遣担当者を変更したい】についてはこちらで詳しく解説しています
派遣会社を乗り換える際のデメリット
■有給の起算日がリセットされる
派遣会社が変更されることは、在籍期間がリセットされるということです
ここで大きな問題の一つが「有給の起算日がリセットされる」ということです
長く在籍していれば、一回の付与日数で18日付与される、ケースもあります
また、有給残数が多くある場合、その派遣会社で有給が消化できなければ、その有給は消滅します
原則、その有給残数を乗り換えた派遣会社で引き継いでくれることはありません
※例外として、特別事情の場合は有給残数を引き継いでくれることもあります
有給残数が多くある場合は注意が必要です
■保険加入に手間、時間がかかる
所属会社が変更になれば、保険については保険者が変更になります
雇用保険、社会保険、労災保険は全て新しい乗り換えた派遣会社の対応となります
ここでの懸念点は「健康保険証が手元にない期間が発生する」ということです
元の派遣会社の保険証を返却してから新しい乗り換えた派遣会社の保険証が手元に来るまでの期間、保険証が手元にない期間が発生します
派遣会社によっては、保険証が手元に届くまでの間、保険加入証明書(健康保険被保険者整理番号、付き)を出してくれる会社もありますが、それは派遣会社の証明であって、公的機関(総合病院など)で効力を発揮できるものではありません
保険証が手元になく、診療を受ける場合は一旦10割負担をしなければならないケースがあります
※かかりつけ医などでは、柔軟に対応してくれるケースもあります
令和4年4月1日~
育休取得要件
・子どもが1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない場合
令和4年4月からの育児介護休業法の改正によって、今まで在籍1年以上の要件が削除されました ※無期雇用者と同じ条件となります
今までは、長期に渡って雇用を継続する見込みがある契約が対象となっていました
ただ、労使協定により以下の条件が締結されている場合は育休が取得できません
「入社1年未満の労働者を育休の対象から除外する内容の労使協定が締結されている場合」(育児介護休業法第6条1項)
今回の事例によって、派遣会社を乗り換えた際は、雇用期間がリセットされるので、乗り換え先の派遣会社で労使協定を締結している場合は注意が必要です
上記内容に該当するか否かは、前もって派遣会社、派遣担当者に聞いておきましょう
■他、派遣先への異動可能性
派遣会社に乗り換えた時点は同じ派遣先での就業が可能となりますが、その後は派遣会社の都合で他の派遣先への就業を打診される可能性があります
例えば、1回目の更新については同じ派遣先の就業になりますが、2回目以降の派遣先については別の派遣先を打診され、そちらの企業での就業をして欲しい、との声がかかるケースです
派遣先もその派遣社員には継続して働いてもらいたい意思はありますが、派遣会社の都合によって、別の派遣先の就業を打診され、その企業へ異動せざるを得ないケースもあります
派遣先は変えずに派遣会社を乗り換える条件、方法、手順
それでは、実践を想定し具体的に乗り換える条件、方法、手順を解説していきます
派遣会社を乗り換える条件
3者(派遣先、派遣元、移籍派遣先)の承諾を得る
まず、派遣会社を乗り換えるには、3者の承諾が絶対条件です
その内、いずれか1者の承諾が得られない場合は成立しません
その上で一番重要なのが、派遣先の承諾を得ることです
派遣先が「あなたに継続して働いてもらいたい!」という強い希望がないと移籍は成立しません
何故、派遣先の絶対的な協力が必要だからです
派遣先には「あなたでないとダメ!」という確約が必要です
よって、派遣先とあなたとの信頼関係が強く結ばれていないとこの事案は成立しません
派遣会社を乗り換える方法、手順
次に方法、手順の解説ですが、ここの段取りが一番重要なポイントです
この方法、手順をきっちり、手順通りに進めないとお互いの信頼関係にヒビが入ってしまいます
慎重に行いましょう
ここでは、派遣社員が派遣元Aから派遣元Bへ乗り換える、ことを前提とします
【手順1】
派遣先へ派遣会社Bに乗り換えたい旨、理由(他の派遣会社の方が時給が高い、派遣会社が信用できない、等)を添えて相談をします
派遣先においては、その相談が派遣社員の自分勝手な我儘でなく、真っ当な相談であるかどうか、またその派遣社員の評価(継続して働いてもらいたいか否か)が重要なポイントとなります
【手順2】
派遣先から派遣元Bへ移籍希望の派遣社員がいる旨、相談が行われます
派遣元Bにとっては、1人増員するわけですから特別な事情のない限り、拒む理由はありません、喜んで受け入れるでしょう
派遣先は派遣元Bの承諾をもって、派遣元Aに相談していく順序となります
【手順3】
派遣先は派遣元Bの承諾が取った後、派遣元Aへ「当社で勤務頂いている派遣社員の○○さんから・・・のような相談があり、別の派遣会社への移籍を希望してますが、現状の派遣契約期間をもって終了させて頂き、別の派遣会社から派遣をお願いする手続きを進めてよろしいでしょうか?!」このような主旨の相談をします
派遣元Aとしては、派遣社員が1人採られてしまう(売上が1人分減る)わけですので、穏やかでありません
しかし、派遣元Aの不手際(過失等)により致し方ない状況であれば、納得せざるを得ない状況もあります
【手順4】
派遣元Aから派遣社員に対して状況確認が行われます
「派遣先から聞いたんだけど、派遣元Bに移籍したいの?!」という旨の確認です
移籍したい理由によって、確認内容が変わってきます
例えば、時給のことであれば、「それじゃあ、時給を同じ金額に上げるから在籍を継続してください」などと相談があるケースもあるかもしれません
また、派遣担当者の不手際においては、「派遣担当者を変更するから在籍を継続してもらいたい」、との相談があるかもしれません
いずれにおいても、引き留め相談がある可能性がありますのでご承知おきを
最終的に派遣元Aが納得し、移籍を承諾します
【手順5】
派遣社員への確認が終わり、派遣元Aの承諾が取れれば、派遣先から派遣元Bへ「派遣元Aの承諾が取れた旨」の報告がなされます
そこで、派遣先は「派遣元A社の移籍承諾が取れましたので、派遣元Aの○○さんと面談してください」と派遣元Bに告げられます
【手順6】
派遣元Bから派遣社員へ連絡があり、派遣元Bと対象派遣社員との話し合いが行われます
派遣元Bの派遣担当者との面談で、派遣元Bの会社案内、条件明示など今後の手続きについての説明があります
いつから雇用契約が締結されるのか、現雇用契約期間、待遇(時給、交通費、手当等)などの確認が行われます
【手順7】
現契約期間の終了日までに各手続き(入社書類の提出、就業条件明示書の交付、等)を済ませ、雇用の切り替え日を迎えれば、無事に移籍という運びになります
上記手順の順番が前後してはいけません!!
非常にデリケートな事案になりますので、手順を間違えてはいけません
派遣社員が気をつけるべき手順は、一番先に「派遣先」に相談することです
間違えて、派遣元A、派遣元Bに先に相談してはいけません
派遣先Aの協力を得たいので、先ず先に派遣先Aに相談するのです
派遣会社を乗り換える際の5つの注意点
派遣会社を乗り換える際に注意すべき5つのポイントを解説します
雇用契約規約の確認
就業条件明示書(雇用契約書)の内容の確認が必要です
確認する項目は、書面内に、「同じ派遣先に別の派遣元から派遣されることを禁止している文言が記載されているか否か」を確認してください
派遣会社によっては、「雇用契約満了後、○○日以内は、他の派遣会社との契約し同じ派遣先企業で働いてはならない」との主旨が規定されているケースがあります
これを守らなかったからといって損害賠償請求されることはまずありませんので、ご安心ください
憲法22条において「職業選択の自由」が認められているからです
しかし、派遣元からクレームが来る可能性があるので、一応確認をしておいてください
手順、契約期間を確認すること
条項でも解説したとおり、手順はとてもデリケートで重要なポイントになります
その手順が前後することで、3者の信頼関係にヒビが入る可能性が高いです
必ず手順通りに進めましょう
また契約更新期間の確認も注意ポイントです
原則、現雇用契約期間が終了するタイミングで移籍するという流れになります
雇用期間中に行わないよう、現派遣会社との雇用期間はしっかり守るようにしましょう
雇用契約の中途解除については原則できない、ことになっています
※ただし、やむを得ない事由がある場合は可能
無期転換5年ルールのリセット
有期雇用契約が継続され通算5年を迎えると、無期雇用に転換できるルールがあります
派遣会社を乗り換えることで、その通算期間はリセットされます
有期雇用契約から無期雇用契約を希望する方は、その点も注意が必要です
あくまでも、就業先(派遣先)が期間の基準となるわけではなく、同じ雇用先が条件となるので、注意が必要です
同僚にはできる限り広めない
今回の乗り換え事案は、非常にデリケートなものです
対象派遣社員(特定される)であるからこそ、乗り換えが成立する内容になります
派遣社員だれでも乗り換えができる、という訳ではないです
派遣先との信頼関係があってこそ、成立するのです
信頼できない派遣社員(人手がなくしょうがなく使っている派遣社員、等)に対して、派遣先が協力するわけがないからです
移籍した情報は職場に自然と広がってしまうことは仕方ないことですが、自らアピールすることはしないよう、注意しましょう
派遣会社を乗り換えたことを良く思わない派遣社員の方もいる可能性があります
※「なんであなただけが!!(怒)」
今の派遣会社への感謝の気持ち
乗り換え理由がどんな理由であろうと、在籍していた派遣会社、給料をもらっていた派遣会社に対して感謝の気持ちはしっかり持っておきましょう
最終の手続きに至るまで、現派遣会社には色々と手間(退職手続き)をかけます
マイナスイメージを持っているからこそ乗り換えすることは理解できますが、お世話になった派遣会社です
最後は気持ちよくお別れができるよう、感謝の気持ちを持って手続きを行いましょう
まとめ
派遣先を変えずに派遣会社を乗り換えることは、派遣業界では希にあることです
そこには、何らかの派遣社員の方の不満があり、別の派遣会社に乗り換えたいという希望が出てきます
派遣社員の方は、常日頃、派遣会社を比較して、できる限り自身の都合に良い派遣会社を選択したいのです
派遣会社の対応も派遣会社によって様々です
また派遣担当者の対応も様々です
大手、有名な派遣会社だからと言って、派遣担当者が優秀である、とは限らないのです
小規模派遣会社でもとてもマメに親切丁寧に対応してくれる優秀な派遣担当者は山ほどいます
派遣社員の方が良い条件、良い環境で気持ちよく働くことが派遣先、派遣会社にとってもベストなことであることは間違いありません
本来、派遣会社を乗り換えることは、派遣社員も派遣先もしたくないことであるので、そうならないように派遣社員の働く環境を整えていきたいものですね