高齢者の疾患と生活習慣・環境
うつ病
6月になると気がかりになる利用者さんがいます。
老人性のうつではないかと感じていた方ですが、季節性のうつ病でもあったのかもしれません。
毎年6~9月になると、顔つきが変わり、声の張りがなくなるなどの抑うつ傾向がみられました。
何年も担当させて頂くと、季節ごとの変化にも気づきやすくなります。2~3年経つ頃には、決まった時期に調子が悪くなっていることが分かりました。うつ病には冬季うつ病と夏季うつ病と呼ばれる、決まった季節にだけ発症する季節性のうつ病が存在すると言われています。
夏季うつ病
老人性うつ病
この方は社交的でお世話好き。通っていたデイケアでは、初めてきた利用者さんには気さくに声をかけ、何くれとなくお世話してくださる方でした。
しかし、この時期になると「(職員が)自分の席の横にばかり新しく来た人を座らせる。しんどい。」と話すようになりました。そのような経緯から、スタッフに配慮を依頼すると、スタッフからはご本人と新しく来た方を離れた場所に配置しても、ご自身でそばに行き、お世話を焼いているとのことでした。
ご本人は担当した当初から「自分は何かおかしい。」と話されることがあり、年相応の物忘れはありました。内科や整形外科の医師にも訴え、大学病院で精密検査を受ける段取りまでご自身でされました。診断名は、アルツハイマー型認知症でした。
老人性うつ病
高齢者のうつ症状は「老人性うつ病」と言われ、心の不調よりも身体の不調を訴えるのが特徴と言われています。うつ症状と認知症の見極めはとても難しいと言われていますが、高齢者との関わりの中で「もしかしたら、老人性うつかな?」と感じることはありました。
・体の不調等の不安感の訴え
・死にたい気持ちをほのめかす
・周りに迷惑をかけていると思い込む
担当した利用者さんに共通していたのは、かかりつけ医等に物忘れなどの不安の訴えを繰り返しておられたことです。高齢なので認知症と診断され、アリセプト等を処方されます。繰り返し訴えられるためか、少量からではない場合もありました。また、認知症とは違う、独特な違和感なようなものも感じます。たとえば、デイケアに来所した時に服薬確認を行うと、「飲んでいない。」「飲むのを忘れた。」と言われるのですが、話を続けていると薬はポケットにあると話されます。ケアマネとして自宅で話を聴いていると、身内や知人が亡くなられた話や、お店の手伝いができなくなったことなど「出来事」を話題にされます。淋しさや悲しさの表出は誰もが難しいものですが、高齢期は喪失の機会が多く、自己喪失感を抱えてしまう方もおられます。
環境面では、うつ症状がみられる方には、昔ながらの長屋や店舗兼住居などの日当たりの悪い部屋に住まわれている場合が多いように感じていました。
お元気な時は外出の機会もあり、日中室内で過ごす時間は短かったと思います。高齢になり、室内で過ごす時間が増えたことも影響しているのかもしれません。