ネット時代をあきらめない。LINEが考える「校閲システム」のつくりかた
こんにちは。LINE校閲チームです。
今回はLINEが独自に開発を進めている校閲システムのつくりかたについて、校閲チームでサービスの企画を担ってきた筆者が、校閲者への負担を減らすプロセスにもふれながら、詳しくご紹介できればと思います。
■1. ニュースプラットフォームの校閲に求められること
まずは校閲システムの概要を簡単にご説明します。
-校閲システムとは-
LINE校閲チームが独自に開発している"校閲補助ツール"。編集側の複数のニュース配信システムと校閲側のシステム連携により、1日あたり約550本(※2020年12月現在)の記事がリアルタイムで入稿される。校閲作業はもちろん、指摘があった際の編集部への連絡や、修正が反映された記事の確認まで、一連の校閲作業はほぼすべて校閲システムを通して行われる。
次に校閲システムのつくりかたを説明する前提として、チームの校閲対象であるサービスをご紹介します。主な校閲対象は「LINE NEWS」「livedoor ニュース」「BLOGOS」といった「ニュースプラットフォーム」です。
-ニュースプラットフォームとは-
参画メディアが作成・配信した記事を、できるだけ早く・広くユーザーに届ける情報発信サービス。ポータルメディアと呼ばれる。
LINE NEWS編集部では、参画メディアに配信いただいた記事の中からユーザーに今すぐ届けたい記事をピックアップします。ニュース配信システムでLINE NEWSの読者に向けたタイトルに編集し、様々な記事フォーマットで掲載をしています。
また、LINE NEWSの校閲作業では編集部がピックアップして編集した箇所すべてに対して校閲者がリアルタイムで校閲をしています。
各サービスにはそれぞれ編集部があり、それぞれ異なるニュース配信システムを利用しています。
つまり、ニュースプラットフォームの校閲をするためには次の2つの要件を校閲システムで解決する必要がありました。
-校閲システムに必要な2つの要件-
・複数のニュース配信システムとリアルタイムで連携すること
・様々なサービスの記事フォーマットに対応可能なこと
■2. 校閲システムでサービス要件をクリア
続いて上に示した2つの要件をどのような仕組みで解決しているかご紹介します。
・2.1.リアルタイムでの連携
複数のニュース配信システムとリアルタイムで連携するために、それぞれの編集部のシステム上での業務内容を調査します。編集部のどのオペレーションの実行タイミングで校閲システムに記事を送信するかを決めるためです。
編集作業を終えたタイミングですぐに校閲を開始するため、基本的にはどのサービスも次の2つのタイミングで校閲システムに送信しています。
-校閲システムに送信するタイミング-
・編集部が記事を新規に編集したタイミング
・編集部が記事を更新したタイミング
・2.2.様々な記事フォーマットへの対応
次に、様々なサービスの記事フォーマットを同じシステムで校閲するために、ニュース配信システムから送信される記事データを受け取る箱を校閲システム側に用意します。
そこで記事データを各要素に分解して校閲システムで設定します。例えば、LINE NEWSの記事が画像、タイトル、本文、動画、リンクという項目で構成されていた場合、校閲の対象となる項目は5つの要素に分解されます。
設定方法は簡単で、分解した各要素の項目名とデータタイプ(文字列、数字、URL、画像、PDF、動画など)を「記事項目設定の登録」画面でひとつずつ定義し、定義した要素を校閲しやすい順序に並びかえるだけです。
例えばタイトルであれば、データタイプは文字列である「テキスト」となります。
各要素の定義を終えると、「サービス設定の登録」画面にデータを受け取る箱の設定が完了します。
このように、どんな記事フォーマットであっても共通の要素で一元的に管理できるため、0からサービスにあわせた開発をすることなく、システム連携が可能となります。
■3.校閲者の負担を軽減するプロセス
しかしながら、サービスとの連携が増えると校閲システムへの入稿数も増え、校閲者の負担は必然的に大きくなります。
もちろん業務量に一定の限度はあります。なるべく校閲者の負担を軽減し、校閲者の校閲作業の質と量を高めるために、余計なオペレーションの解消に取り組んでいます。
・3.1.余計なオペレーションの改善
既存の校閲システムでは、複数のサービスから入稿された記事はすべて「記事の一覧」画面に表示されます。校閲者は「記事の一覧」画面から「校正(以下、校閲開始)」ボタンを押して、校閲作業をする「校閲」画面へと遷移します。
常時5、6人ほどの校閲者が同じ「記事の一覧」画面を閲覧し、記事が入稿されたら皆一斉に「校閲開始」ボタンを押します。ほかの校閲者よりも先に「校閲開始」ボタンを押した人がその記事の校閲者となるためです。
ここで問題となったのが、校閲作業には直接関係のない、校閲作業に"着手"をするための「校閲開始」ボタンの"早押し競争"が発生していることでした。
ただ、「記事の一覧」画面は入稿された記事をサービス別に絞れるフィルター機能や記事の検索機能などカスタマイズ性が重視され、校閲者からの評判も高いものでした。
事実、1週間に約4000件の記事を無理なく校閲し、問題なく業務に対応できています。今回の問題は、校閲者が校閲を開始するスピードが想定以上に速いため起きていたことでした。
下のデータは、LINE NEWSの一部サービスが校閲システムに入稿されてから校閲者が校閲を開始するまでのある1週間における平均開始時間です。
しかしながら、「校閲開始」ボタンの"早押し競争"といった余計なオペレーションは、徐々に校閲者への心理的負担につながり、メディア品質の低下にもつながります。
"最初の読者"と言われる校閲者の業務品質が低下するとサービスのユーザーである読者の利益にはつながりません。
・3.2.校閲者に自動で記事を割り当てる機能へ
そこで「校閲開始」ボタンの"早押し競争"を解消する方法として、校閲者に自動で記事を割り当てる機能の実装を考えました。いわゆるキュー(queue)の概念を応用したキューイング機能の実用を試みています。
-キューイング機能とは-
入稿された記事を自動で校閲者に割り当てる機能。既存の校閲システムでは校閲者が「記事の一覧」画面に入稿された記事の「校閲開始」ボタンを押して校閲を開始しているが、キューイング機能では、「記事の待機」画面の中の待機列に先に並んだ校閲者から自動で記事が割り当てられていく。
キューとは先に入ってきたものを先に処理することですが、改修前は「記事の一覧」画面に入稿された記事から順に校閲を開始していました。記事がキューの対象だったわけです。
キューイング機能では、逆に校閲者をキューの対象と考えました。待機列に先に並んだ校閲者から順に、記事を1対1の関係で自動で割り当てる仕組みです。
実際に記事の割り当てを校閲者が待機する「記事の待機」画面のサンプルです。
記事が入稿されると、待機列の先頭にいる校閲者Aの画面に割り当て通知がきます。
実際にキューイング機能を校閲者に利用してもらい、感想をききました。
・誰よりも先に校閲開始ボタンを押すことに神経を使っていたが、その必要がなくなり気持ちがラクになった
・入稿された記事の校閲開始ボタンを押すまでがどれほどの負担だったのか、「キューイング機能」によって逆に気づかされた
■4.インターネット時代の校閲に向けて
このように校閲システムは、校閲者に寄り添ったバージョンアップを日々続けています。
特に、大量のコンテンツが流通するプラットフォームの校閲を担う我々には、校閲者のパフォーマンスを引き出し、効率よく校閲ができる環境が必要です。
そのため、人である校閲者の感情や特性に目を向けたシステム設計を目指しています。
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