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(小説)俺のFIRE漂流記・ウラ話

自分の小説のあとがきのようなものを、これまで書いたことがありません。
(Kindle本のよろず富川呉服店は別として)

照れくさいというのもあります。
でもそれ以上に感じるもの。
物語を書き終わった時点で、自分の中で彼らの世界が別次元の彼方へ行ってしまい、自分の手から完全に離れてしまったというか。

もう自分の役割は終わったので、彼らについてこれ以上語るものは何もない。そう思ってました。

そのスタンスが、最近変化してきています。
なんだか、歳を重ねるにつれてどんどん考え方が変幻自在に変わっていっています。
いいことなんでしょうかね? 不惑の年である人間が、月日を追うごとに考え方や方針を次々と変えていくなんて。

ですが、私は思うのです。
50歳は人生の折り返し地点とよくいわれますが、2回目の誕生日でもあるのだと。そう考えれば、まだ生まれたてホヤホヤの赤ん坊である私は、日に日に変化し続けているのも当然だと。

自分を水分だとも思っています。
水のようにありたいと。そう思えば、変幻自在に姿を変えるのも至極当然。自然の流れ。
周りの人たちにはビックリされますが、自分の思うように生きられればいいと思い、それを実行する今日この頃です。

と、私的な前置きがかなり長くなりました。

書きたいのは、「俺のFIRE漂流記」のウラ話です。珍しく。


この物語が生まれた経緯やエピソードを、忘れないうちにと日記代わりに残しておこうと思い立ちました。
それに、いずれ有料記事化にしようかなーとも考えており……。
(時期は未定)

よろしければ、本記事ウラ話をお読みになった後、興味がありましたらポチっとお楽しみください。
(*最後に簡単なあらすじも載せておきます)



・物語が生まれたキッカケ


ちなみに、この作品は2024note創作大賞「お仕事小説部門」への応募作品です。(選考からは漏れましたが)

あれは、今年2024.3月の夜のこと…………。
とあるコミュニティ座談会で、各ブースに分かれた先でご一緒になった著名な方に言われたひとことがキッカケでした。

その初対面の方に、こう言われました。
「FIREの小説とか、書かれたらどうですか?」

は? FIRE? なに言ってんの? このひと。
(注: 私の心の声はガラが悪いです)
そんなのを物語にしてなにがおもしろいんじゃい! 意識高い、一部の人間にしかウケないじゃん。しかも、ナマラ難しそう。(←北海道弁) 
株なんて。
ムリだね。無理無理無理無理。相手見てモノを言ってよ。おい、にいちゃんよお。

一瞬押し黙った1秒間で脳内を駆け巡った、心の声。
簡単に言ってくれるなー、と思いました。

「いやあーFIREを経験してないと、難しいんじゃないでしょうか」

そう返答したけど、その時にチラリと私を見たその方の眼……。
眼の中に表情が浮かぶとよく小説には出てくるけど、まさにそれ。その表情が、その後もずーーーっと私の頭の片隅で残り続けて離れませんでした。

5月になって、過去に(10年以上前)書いた作品をnote創作大賞ファンタジー部門へ応募したあと、本業の勉強に専念する生活に戻り、そこで二重生活からいつもの落ち着いた日常へ戻るはずでした。

そう、はずでした。

なんの衝動なのか。
急に、唐突に、なんの前触れもなく、

「FIREの小説とか、書かれたらどうですか?」 

が、頭の中に響き渡ったのです。
まるで、天の啓示のように。

こうなっては、もう拒絶することも出来ません。今までのパターンからいって、自分の「これが書きたい!」という欲求はたいていこの突然の思い付きからスタートするので。
あれほど、「ないね~」と即却下していたにも関わらず、その日から私の「FIRE小説」作りが始まりました。

と同時に、

あれ? 待てよ? もしかして創作大賞の応募にも間に合うかもしれないんじゃなくって?

と思い立ち、日にちと段取りを計算して、いつか出来上がるだろう小説作成がnote創作大賞応募へとすり替わったのです。
なんて無謀な……。
なんの計画性もない。

自分でも呆れますが、ほんと私はこういう人間です。
火がつかないと創作意欲がわかないのは一番の欠点で、だから若いうちからプロのもの書きとしてやっていこう! という気概と覚悟を持てなかったのでしょう。
普通は、書き上げた作品を時間をかけて何度も何度も推敲し、練り上げて完成させるものなのですが。こんな短期間ではそれもできません。
この反省点は次の作品に絶対……ぜぇーーーったい! 活かそうと決意してます。

というわけで、締め切りまで2か月と2週間余りという条件のもと、FIRE小説の製作が始まったのです。



・ストーリーができあがるまで

 
人物設定も話しの展開もまるでない状態だけど、ざっとわかるのは既定の140000文字ギリギリだろうなと想像しました。


FIREを題材にするのだから、応募部門は「お仕事小説」しかないだろう。
となると、短編では題材的に描ききれない。
腕があればかけるのだろうけど、ショートで納められるほどのFIREの知識や知見が自分にはないから、粋な内容にできない。おもしろくない。
それより、今わたしが書きたいのはどういう物語か?
わたしのテーマってなんだ?

今まで深く考えてこなかった、自分がグッと求め続け、そして持っている「テーマ」なるものをちょっと考えてみました。


何が書きたい?
ひとのドラマ。喜びや悲しみや怒りや恨みや嫉妬や、そういったありふれた、ありのままの姿をドラマティックに表現したい。


これが自分の書きたいテーマなら、起承転結を考えてもやっぱり長編になる。これが主旋律で物語が展開していくので、あとは話のお題をどう見せていくのかロードマップを作成していきました。

FIREする話という王道でいくか、それともFIREに失敗した話か、FIREといっても色々パターンがあるようだし。
FIREを重点にした話もいいけど、それこそ実体験が伴わないとリアルな物語にはならないからおもしろくないよな。
FIRE一本より、生活や仕事を組み合わせた方がリアルだし、より登場人物が生き生きするんじゃなかろうか。
よし、これで行こう!
FIREと本業の仕事の二本立て。
ここまで決まったら、あとはFIRE&株関連の調査・勉強と登場人物の設定だ。


わたしは投資をしているので(ちょこっと…ほんのちょこっとです)、少しは株やFIREの知識はありました。
が、これが物語へとなると全然足りません。
関連図書・資料・動画・ネット記事を調べまくりました。実際の物語には調べた量の半分もあまり反映されてませんが……。
この調査&勉強と同時進行で、物語のロードマップを作り、人物設定もして具体的なストーリー展開も考えました。

人物設定はきちんとやったけど、細かいストーリー展開は書きながら決めていきました。矛盾しないおおまかな展開の枠組みを作っておけば、どうとでもなるものです。それこそ、よく言われるように、キャラたちが話を創っていってくれるのです。
物語を書いていて、この工程が一番わたしには楽しくおもしろいところです。別次元にいる彼らの人生を、わたしが代筆しているような感覚を味わえます。

ただ、難儀することがありました。
場所の設定をどうするか。吾郎の故郷をどこにするか。
最初、なにも頭に浮かんできませんでした。どこの土地も全然ピンとこないから、情景や会話が映像化しないのです。
なのに、時間は過ぎていく……。
どうしよう、今書き上げないとスケジュール的に間に合わないのに。
そうやってジタバタもがいていると、またあのヒラメキがやってきました。

「帯広の待ち合わせ時間は13時になったよ~」

友人からの連絡。
ん? 帯広?

カレンダーを見て、約一週間後。そういえば、その日道産子仲間たちと帯広に集合して遊ぶ約束していたんだった……。
そう思い出した途端(忘れていたわけではない)、脳内に帯広の景色がブワーーーーっと溢れ出たのです。


来た来た来た来た、これだ。
浮かぶわ、浮かぶ。すごいしっくりする。よし、帯広決定。


当初、道南の方、それも函館あたりと設定していたのですが、しっくりこなかったのです。
それが帯広へと切り替えた途端、止まっていた吾郎たちの物語がまた動き出しました。具体的な描写や情景はちょっと後回しにして、どんどん先に進めることができたあの快感。
ほんと、インスピレーションっておもしろいものです。
おかげで、前話に戻って、よりリアルに話を直してまとめることもできました。
帯広へ遊びに行って(実際行ってホントに良かった!!)、体感した光景を描写できたし、家に籠って執筆しすぎてストフルだった気分も大解放できたし、日帰りだったけどサイコーに楽しい帯広でした!



・完結してひと皮むけたかな?


どうでしょう~。
ひとつ言えることは、最後に筆を持ってから11年間文章を書くのをやめた後に書き上げた、久しぶりの長編小説。

ブランクが空きすぎたので、ほとんど初めて書いた小説といっても過言ではないくらいの挑戦。
また物語を書き始めるとは想像もしてなかったのに、今こうしてまた一つの作品を書き上げることができた。
それだけで、すごい達成感を味わってます。
推敲して練り上げる時間をまったく取らなかったので、作品の出来栄えには難があるかもしれませんけど、リハビリ中の創作だけど、できる限り面白いと思えるような物語になるよう考えました。

完結できたので、次の作品に取り掛かろうという意欲もわきます。
頭の中には、もっともっと書きたい物語がたくさんあるので、それをひとつずつこの世に生み出していこうと。
そんな矢先に、思いがけない反応を頂いたのです!

「1話から読み始めてます。とても面白いです」
と……。

中間のお話でコメントを頂きました。
投稿小説で感想をコメントで頂くのは初めてだったので、飛び上がるほど嬉しかったです。
ちゃんと自分の作品を読んでくれている人が存在するんだ! という実感を伴ったあの喜び。うれしいものですねぇ、コメントって(しみじみ)。
そして、最終話まで読んで下さって、またコメントを送ってくれました!

喜びはまだまだ続く。
寝起きでボーッとした頭で家事をし、やれやれ終わったとくたびれた姿でひとり食卓へつくわたし。朝ご飯をゾンビのような動きで取りながら、だらしなくスマホを起動させ、しょぼしょぼした目で眺める。
そして、サンドイッチのレタスやハムを取り落とす。
……………ううっ。サポートしてくれている。わたしの読者ファンがついてくれた。

ゾンビが生者へ復活をした瞬間でした。わたしのリハビリ期間も終わりを告げた瞬間でもあります。
魂が震えるほどの感動とはこういうものをいうのでしょうか。身をもって体験しました。ひとりでも読んでくれる人がいるのなら、書き続けるのは楽しい、と素直に思えました。それこそ、一点の曇りなく。

そこで、この場をお借りして改めてお礼を申し上げます。

これまで、わたしの数々の作品を読んでくださった方々、みなさん、ありがとうございます!
これからも、どんどん新しい物語を発表していきますので、お時間があればどうぞ読んでいってくださいまし。
読んでよかった! おもしろい! という物語になるよう、どんどん日々精進しますので。どうぞご期待ください。



・「俺のFIRE漂流記」はこんなお話し


まずは、どんなストーリーなのかここでご紹介しますね。
(いずれ有料記事化する予定ですが、時期は未定です)

 市内の数ある改築・改装工事会社の中でも、とりわけ小規模少人数なリフォーム工事会社に勤務するわたり吾郎ごろう(バツイチ独身、中学生の息子付き、42歳)
 昭和を代表するような工事部の長『おやっさん』を師匠と仰ぎ、二人三脚で今日まで会社を盛り立ててきたが、敬愛する師匠に失望し、組織の闇を知り、心が折れて、投資の世界へ活路を見出だす。
 が、世の中そんな甘くはない。投資を投機と勘違いして大やけど。別れた妻への未練、息子の反抗、成功者への嫉妬&やっかみ、過去からの亡霊やらが一気に押し寄せ、俺の人生どうなったと天を仰ぐ。
 だが、そこからだ。吾郎の持ち味が生かされるのは。周りの人間を巻き込んでの、吾郎の快進撃が始まった。

大まかな、あらすじです。
創作大賞応募向けなのでざっくりですから、もう少し詳しくご案内します。

とある地方都市の、どこにでもあるような小さなリフォーム専門工事会社に勤める40代中年男性が主人公です。
離婚して、中学生の息子と二人暮らしのシングルファーザー。
会社では、中堅の立場で部下の面倒を見ながら、現場に出て指揮もとるし、自ら作業も行い、営業マンとして仕事も取ってくるという馬車ウマのような生活を長いこと送っている。
日々忙しいけれど、仕事にやりがいも感じて、誇りも抱いていた。何より仕事が好きだった。
なのに、ここにきて吾郎はとある出来事によって、会社と上司に失望する。すると、それまで自分を支えてきたやりがいや誇りさえ色あせてきた。
長年我慢し続てきた不満も噴出してきた。好きな仕事への興味まで薄れてきてしまった。
自分の土台がぐらついた所へ、投資で成功した昔の知り合いが現れる。
金に目が眩んだ吾郎はすぐに飛びつき、いっとき成果も納めるけど大やけどもする。同時に、職場では人間関係で今まで積み上げてきた信用や信頼まで失ってしまう。
息子との意思疎通も疎かになり、息子との絆まで危うくなる寸前。
そして別れた妻からの非難。
加えて、過去の根深いトラウマ。
ふんだりけったりで、いいトコなしの吾郎。

でも、この失敗や挫折、失意の連続を辛抱強く受け止め、吾郎は逃げなかった。
逃げずに素直に受け止め、黙々と毎日の生活を大切に生きた。
そしてやがて得たものは、敵だと思っていた味方、取り戻した信頼と絆、色んな形の愛。そして自分が心からやりたいと思う生き方。
そして、抹消したかったトラウマにやっと向き合えたこと。

そんな、普通の中年男性のストーリーです。
物語は、吾郎からの視点で始まり、終わります。

吾郎たちの物語を描いていて思ったことですけど、この世は、これだ! と確定できるものはひとつもないのでしょう。
だって、生きていれば常にうつろい、変わっていきますから。ひとの心も思いも考えも。それでいいんじゃないかと思います。
だから、吾郎たちもあの物語の後はまたあらぬ方へと変わっていくかもしれませんね。


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