初のU-15選手権
夏の振り返りシリーズ・最終回
「初のU-15選手権」
①〜⑤ はこちら ①・②・③・④・⑤
8月26日(土)
第28回全日本U-15女子サッカー選手権 神奈川県予選
「LINDA SMILES − 横浜ウィンズ」
(常磐公園運動広場)
U-15年代で一番大きな大会であるU-15選手権。こういう「ザ・大会」に出るのはLINDAでは初めてですね。
ただわれわれ大人が勘違いしてはいけないのは、育成年代では公式戦だろうが練習試合だろうがどんな試合でも目的は同じ。試合に優劣はないということ。
優劣がないと言いつつも、公式戦よりも藤枝順心との試合のほうがよっぽどスリル満点じゃないですか。
「日本で行われている全ての公式戦は、日本サッカー協会主催の練習試合や」
僕が尊敬してやまない岩谷さんに、かつてそう言われたことがあります。
また
「公式戦だろうが練習試合だろうが、全てが練習。育成年代はそれで十分」
これは、以前関わった選手の保護者の方が言ってくれた言葉です。今でも忘れることのできない至言でした。こんなお父様だからこそ、息子はその後スーパーな選手になっていきました。必然ですよね。そういうことです。
真剣勝負をしながら、選手が主体的に取り組み、それぞれがレベルアップするために意識を高く持って臨む。大人はそれを後押しし、サポートするのみ。コーチも親も。試合はそういう場所です。試合だけでなく練習もそうですけども。
なので選手たちには、その場限りのアリバイプレーや逃げるプレーは本当にしないでほしい。それやっちゃうと何の意味もない。これは毎回言ってることです。
その意味で、選手権初日であるこの日の試合は残念なシーンが多々ありました。もちろん「3年生最後の公式戦!」と意気込む相手の圧力に、中1が多いLINDAの選手たちが完全に呑み込まれてしまったこともあるのですが。
試合後に彼女たちにはよく話しましたし、それは本人たちが一番噛み締めている(はず)のでここではもう具体的に書きませんが、逃げたり蹴ってしまったりするプレーは何も得をしないし損なことしかないということを、もっともっと強く伝えていかないといけない。それを痛感した試合となりました。
もちろん、それを彼女たちが理解して納得し、心にも深く刺さるように伝えられていないのはこちらの力不足なので、うまくいかない試合をしたときの責任は全てこちらにあることは言うまでもありません。
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8月27日(日)
第28回全日本U-15女子サッカー選手権 神奈川県予選
「LINDA SMILES − 成瀬エンジェルス」
(等々力緑地第1サッカー場)
前日の第1戦は、正直言ってかなりの消化不良。「目の前の勝負というものに対しどう臨むか」という点で、ピッチ上だけではなくピッチ外のことまで、試合後に彼女たちに対してちゃんと話さなければならない時間が必要でした。
そのため、恒例になってる保護者の皆さんとの試合後ハイタッチも行けず。ごめんなさい。
そんな第1戦だったので、彼女たちに話したような準備やマインドのことだけでなく、ピッチ上でもっとストレスなく、配置にも不具合がなく、気持ちよくやってもらうためにはどんな方法があるか。
それぞれの特徴や味方同士の相性も含め、その夜はめちゃくちゃ考えました。
この日の第2戦、思い切って3バックに変更したのはそんな理由からです。
試合前の準備も前日とは雲泥の差。みんな自覚を持ってアップから動いてました。仲良し同士がゆるいロンドをのんびりやる、ゴール前でシュートの順番待ちをしながらダラダラ過ごす。そんな姿とはもうサヨナラ。
自分の本当のコンデションは自分にしかわからない。だからできればセルフの時間を増やしたい。その日自分が試合の中でどんなことをしたいのかも含め、アップはそれを確かめて試合の場でキックオフから100%発揮できるようにするための大事な時間。だからアップって本当に大事。試合はそこからもう始まってます。
その大切さと、それを疎かにすると試合でいいパフォーマンスができずに消化不良となり残念なことになるということも、彼女たちは前日に身をもって体感し、試合後にも僕からも厳しく言われてる。
そんなアップダウンも含めての育成年代。
今思えば、2日連続で試合があって良かった。中途半端に間が空くよりは、前日の失敗がまだリアルに残っていて後悔も残っているうちにそれを挽回したいという思いで試合に臨んでくれたと思うので、連チャン日程で良かったと思えます。
そしてようやく、試合前の良い準備をしっかりとして、心身ともに良い状態で試合に入ることができたのがこの日でした。
もちろん、第1戦は監督である僕自身の反省も失敗も多々あります。それを、彼女たちが試合に臨む姿勢と実際のプレーで、爽快に払拭してくれました。
前半に2失点。ハーフタイムには自身のプレーを悔いて泣いている子もいましたが、全体的にも個人個人も、前日とは大違い。
ボールを放棄せず、相手ボールにも粘り強く喰らいついて、最後までしっかり走っていた。
3バックにしたことで両サイドの2人は攻守に渡りアップダウンを繰り返さないといけないので大変だったはずだけれど、2人ともちゃんと走ってる。
でももっと良いプレーもできるしもっと修正することもできる。味方とタイミングを合わせるために、簡単にボールを失わないためにどう修正するかみたいなことだけを伝えて、あとは彼女たちを信頼してまたピッチへ送り出しました。
後半は内容がさらに良くなって、前半よりもさらに走れてる。
前に出て行く人も増え、決定機を何度もつくった。危ないシーンも数回あったけれど、ゴールを獲りにいこうとする姿勢があんなに見られたのは、間違いなく今までで初めての姿でした。
ボールを放棄しないこと、目の前の勝負に負けないこと、諦めずに最後まで追うこと。
これらはサッカーをする上で当たり前のことですが、様々な要素が入り混じる試合では、それを思うように全て表現し続けることはなかなか難しいです。
でもこの日のゲームでは、これまでに見たことがないくらいに最初から最後まで、LINDAの彼女たちがそれを必死に表現し続けてくれました。
後半はほぼハーフコートマッチでの猛攻となりましたが、結局あと一歩のところでゴールは奪えず、前半の失点が最後まで響き惜しくも敗戦。
しかしこの日選手たちが見せてくれたあの姿はとても爽快で、感動的なもの。最後まで気持ちの入ったプレーと、ボールを放棄せずに持ち出そう、繋ごう、味方へ良いパスを通そう、そしてゴールを奪おう、逆転しよう、とする意思がとても感じられた、素晴らしいナイスゲームだったと思います。クラブを立ち上げてから半年、間違いなくこれまでで最高のゲームでした。
途中から久保田はもう悪い癖で感動に浸っていましたが、、
冒頭でも紹介した岩谷さんに、昔からずっと言われていることがあります。
「俺らが選手たちに教えるんやない。俺らが選手たちから教わっているんや」と。
その言葉通り、この日、僕は彼女たちにたくさんのことを教えてもらいました。
また、観に来て下さった方ならばわかると思いますが、この日の試合を語る上でどうしても書かなくてはならないことがあります。
この選手権は「U-15選手権」なので、高校生は出られません。だからこの日はスタッフとしてベンチでサポートしてくれたある高1の選手が、最初から最後までずっと声を出してくれました。僕の出番がなかったくらい。本当に最高だった。
その声は全て前向きで、背中を押してくれる声。彼女の声がピッチ上の彼女たちを支え、本当に後押ししてくれました。
僕には、あんな前向きでポジティブで素晴らしいコーチングを試合を通してやり通す自信がありません。本当に素晴らしかった。
彼女のことは小さい頃から知っていますしこれまでも紆余曲折いろいろありましたが、それが今こうしてベンチで一緒に戦ってくれている姿を見ているだけでとても感慨深く、それはとても幸せな時間でもありました。
彼女のおかげで、あそこまで爽快なゲームになったのだと思ってます。本当に感謝です。
彼女だけでなく
うちには、LINDAに通いながら学校のサッカー部にも所属している中学生の選手が数名いて、彼女たちはLINDAの公式戦には出られません。初日(26日)は、その彼女たちがスタッフとしてベンチ入りしてくれて、選手たちをサポートしてくれました。
一丸。一体。みんなの居場所
サッカーがうまくなるためだけの場所じゃなく、それぞれにとっての大切な居場所であってほしい。クラブのこの理念を彼女たちが自ら見せてくれたようで、何よりもその姿が、本当に嬉しかったです。
そしてこんな仲間の姿を意気に感じていつも以上に頑張る。スポーツをやるならば、そういう熱さを絶対に持ってほしいですよね。
試合後、選手たちは疲れきってベンチ前でぶっ倒れてる子もいましたが、皆が「楽しかった」と言っていた。これが全てだと思います。
本気でやるからこそ、楽しい。本気で楽しかったからこそ、本気で悔しい。
本当の楽しさってこういうこと。それを身をもって知れたことが、この選手権シリーズの何よりの収穫だったのだと思います。
長いようで短かった夏も、もう終わり。
合宿や藤枝遠征、その他にもいろいろてんこ盛りな夏でしたが、この夏でみんな明らかに成長してくれました。
秋以降も、きっとさらに変わっていってくれると思います。
これからもよろしくお願いします!
みんな、本当にお疲れさま。そしてありがとう。